「君、不妊治療をしているでしょ」。100万円近くかけた妊活の行方と悲しいリストラ
日本では5組に1組が不妊に悩み、50万人近くが不妊治療を受けていると言われています。イラストレーターのオヨネさんもかつて、その1人でした。 今回は、不妊治療を理由にリストラに遭うったお話です。
100万円近くかけた不妊治療の行方は<オヨネの妊活いばら道34>
1人目を人工授精で授かり、2人目も自然妊娠は難しかった私たち夫婦。
幾度となく痛みを伴う検査や副反応だらけの投薬、治療を行い、ついに体外受精に到達! 当時保険適用ではなかった不妊治療。ここまでで軽く100万円近くは飛んで行ったでしょうか。
全身麻酔で卵子を採取した後、受精卵をつくって凍結するところまできました。私の場合、子宮を休ませるため採取後すぐには受精卵をおなかには戻さないようでした。
着床に成功するかはさておき、やっとここまでこれた〜! という気持ちでいっぱいでした。
女性の多い職場。産休・育休だらけのメンバーに
当時私は時短で働きながら一人目の育児と家事、そして不妊治療と目まぐるしく過ごしていました。
そしてメガネ(夫)はというと、ブラック企業勤めで家に帰ってこぬ人。今考えたらよく生活できていたなぁという気持ちです。
私が勤めていた会社はベビー用品を扱う中小企業でした。女性の社員も多く、みな代わる代わる結婚や出産,育休,産休などを取っている状態でした。
私が治療を行なっていたとき、なんと育休、産休で休んでいる社員が4〜5人もいるという事態に!
私も来月受精卵をおなかに戻して、もしも成功したら妊娠するかもしれない。失敗したらまたお金を払って再チャレンジだけれど。そんなそわそわしている時期。
リストラの理由は、まさかの「不妊治療」
時を同じくして大型のリストラがあるとの発表がありました。
ある日社長室に呼ばれた私は「嫌な予感」と思いつつ入室。着席。社長は単刀直入に「会社を辞めて欲しい」と言いました。
しかし驚いたのはその理由です。あ〜やっぱ私は仕事ができなかったからかなぁ、上司と仲よくなかったからかなぁ。あの人は残るのに私が辞めるのは私が劣っていたからだよなぁ〜と思っていたところ、「理由は君が不妊治療をしているから」と言われたのです。
ショックでした。二人目をつくろうとしているからクビと言われとても悲しかったです。
会社の立場からすると当たり前の事なのかもしれません。しかし14年同じ会社で働いてこれか〜と、とてつもなくショックでした。
育休メンバーの中には二人目を妊娠している人もいるのに(数か月仕事に戻ってきてまた産休に入るそう)、「妊娠出産を理由に会社をやめさせられない」という法律で守られて、私は受精卵がおなかの中にないだけで法律も守ってくれないし。なんというタイミング。OH〜〜…。
いっそ「君は仕事できないから」と言ってもらった方が納得できたかもしれません。
行動力のない夫が、妻のリストラを機に動いた!
社長や上司は「二人目はいつ? 考えてるの?」と今でこそ「なにハラ」かになる質問を平気でしてくる会社だったので、いちいち面倒くさいなと思い不妊治療をしていることを伝えてあったのでした。当たり前だけど、言うんじゃなかったなぁと後悔。
さて、その一連の出来事を帰ってすぐメガネ(夫)に報告。感情をあらわにしないメガネ(夫)も流石に「あらまぁ、まじか〜」とうっすら驚いていました。
しかしその後の彼の動きは凄かった。過去一凄かったのです。
ブラック企業の社長に「辞めます。妻がリストラに遭いこのお給料ではやっていけません」と伝えすぐ転職。ありがたいことにいろんなタイミングも重なり、なんと! 家にちゃんと帰ってくるホワイト企業の社員に生まれ変わったのです! このときばかりはメガネ(夫)の行動力にとても感謝しました。
いつもは行動力のこの字も動かない人だなぁと思っていましたが…。本当に驚きました。
かくして私は体外受精の途中でリストラされ、この後どうしよう? と途方にくれる期間に突入したのでした。