『喜楽』のワンタン麺

●今も昔も行列が絶えない老舗町中華『喜楽』(渋谷)のワンタン麺の魅力とは?

 渋谷駅といえば、ここ数年、大規模な駅周辺再開発の影響で、どこもかしこも工事中。しかも複合施設の建設ラッシュで、渋谷スクランブルスクエア、ミヤシタパークあたりまでは覚えていても、正直、もう名前も知らない新施設がたくさんある、という人も多いでしょう。

 ドラスティックに変化する渋谷の街にあって、コンスタントに行列ができる飲食店はやはり古くからあるお店が多い印象があります。今回ご紹介するのは、1952(昭和27)年に創業、今年で72年目を迎える『中華麺店 喜楽(きらく)』です。

今年で創業72年を迎える『喜楽』

 渋谷に詳しい人にとっては説明不要かもしれませんが、案外、都内に住んでいても『喜楽』の名前は聞いたことがあっても、実際に行ったことがない人も多いはず。かくいう筆者もそのひとり。渋谷の隣町・神泉に住む友人から「渋谷でラーメンといえば、やっぱり喜楽でしょ」と言われ、そういえば行ったことがないなぁ、と改めて思ったのです。

 どんなラーメンかと聞くと、「いつ行っても行列していて、とにかくクセになる美味しさ。生きてる間に一度は食べといたほうがいいよ」とのこと。具体的なことは一切わかりませんが、そう言われるとソソられますよね。

 というわけで、向かったのは渋谷駅から5分ほど歩き、道玄坂を少し上った百軒店(ひゃっけんだな)エリア。「午後4時ごろに行けばさすがに並んでないだろう」と思って行ってみたところ、考えが甘かった……!

パワフルなのにマイルド。『喜楽』のワンタン麺に舌鼓

渋谷駅から徒歩5分ほど。道玄坂にほど近い『喜楽』

 店頭に到着すると、ご覧の通りの大行列。数えてみると12~13人ほど並んでいます。ニューオープンならまだしも、創業72年の町中華で、こんな行列ができるなんて……びっくりしました。気を取り直して最後尾につき、食べるメニューを考えることに。

『喜楽』のメニュー。書体だけでも美味しそうに感じるから不思議

 こういう時はネットの口コミを確認するに限る……と思ってスマホで検索してみると、老舗だけあって、口コミがこれまた途方もないほどの数あります。麺類にすることだけは決めていましたが、人によってオススメがまったく違うので少し悩みました。

 中華麺、タンメン、チャシューメン、はたまたチャーハンや餃子、中華丼。肉ニラ、肉もやし、ピータンなどの一品料理などなど。どれもこれも美味しそうだなぁ、と迷っているうちに、あっという間に行列の最前列に到達。結局、15分ほど待っただけで入店できました。

 最終的にオーダーしたのは、「ワンタンメン」(950円)。ざっと見た限り、口コミの数がもっとも多かったのがこのメニューだったからです。

外並び中にメニューを聞かれたので、着丼までの時間もスピーディー

 着席して5分もたたないうちに丼が到着。思わず「多っ」と声が出てしまうくらいボリューミーです。大きな肉ワンタンが6個、その下には大量のモヤシ。

 さらに厚めのチャーシュー1枚と味玉半個。周りには香油の浮かんだスープ。そして何よりも麺の存在感に圧倒されます。具材をかき分けて麺を引っ張り出すと、どっしりした中太麺がお目見え。とにかくゴツいです。

しっかりとしたコシのある中太麺

 これは相当お腹いっぱいになるぞ、と覚悟を決めて、実食にかかります。

 まずはスープ。醤油スープに焦がし玉葱がたっぷり浮かんでいます。ガツンとしたスープに負けない中太麺をワシワシワシとすすります。パワフルなスープですが、ギトギト感はなく、かといって醤油や塩の尖った感じもなく、実にマイルド。優しいのに力持ち、と言いますか、ちょっと不思議な感覚のラーメンです。

まとめ

焦がし玉葱がたっぷりと浮かぶスープ

 大きなワンタンは、皮が厚めで、肉もどっしりしています。最初にスープ沈めておくと、汁を吸ってほどよくやわやわな食感に。このワンタンと焦がし玉葱のスープとの相性がバツグンなのです。

 大量のもやしも、太い麺も、でっかいワンタンもあれよあれよという間になくなりました。お腹はパンパン。でも胃がもたれる感じはゼロ。とくに焦がし玉葱のスープが美味しいので、満足感があって、翌日にはまた食べたくなる……。

 この中毒性が“喜楽の味”であり、行列が絶えない理由なのだと思います。というわけで、友人の言っていた“渋谷でラーメンといえば喜楽”という意味がよくわかりました。まだ食べたことがない人は、行列にひるまず(回転は早いので)『喜楽』に行ってみてください。

(撮影・文◎如雨露)

●SHOP INFO

店名:中華麺店 喜楽

住:東京都渋谷区道玄坂2丁目17-6
営:11:30~20:30
休:水曜