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教え子だった女児12人に対する性的姿態撮影処罰法違反(撮影)などの罪に問われている学習塾大手「四谷大塚」元講師の森崇翔被告人(25)の公判が3月11日、東京地裁で開かれた。検察側は懲役2年を求刑して結審した。判決は3月26日に言い渡される。

この日の公判では被告人質問がおこなわれ、高校生の頃から自身を小児性愛者であると自覚していたという森被告人は、なぜ教え子を盗撮し、SNSのグループチャットに投稿したか、自らの言葉で語った。

エスカレートしていった犯行の背景に浮かんだのは、「歪んだ認知」だった。

⚫︎騒ぐ低学年の女の子に「仕返しするため」盗撮

保釈中の森被告人は現在、ハローワークを通じて得た編集などの仕事をしながら、小児性愛障害による衝動を抑えるためのカウンセリングに通っているという。

被告人質問によると、森被告人が小児性愛者だと自覚したのは、高校生のときだった。やがて、児童ポルノの画像や映像を収集したり、ネットで知り合った仲間と交換したりするようになり、今回の犯罪へとつながっていったという。

森被告人は就職活動中、食品業界への就職を希望していたが、40社以上受けても内定が得られず、唯一内定が取れたのが「四谷大塚」だったという。

「定年まで40年以上、自分が子どもに手を出さないという自信がなかった」と語り、5年以上働いて業績が認められたら、テキストなどの編集をおこなう出版部門に異動したいと思っていたと述べた。

「手を出さない自信がなかったと言っているが、転職は考えなかったのか」と弁護人に問われた森被告人は、「内定を四谷大塚1社しかもらえなかったので、もう就活をしたくなかった。自分にとって就活は悪夢だった」と答えた。

そして、就職してから2年目、低学年の女の子の盗撮に及んだことについて、弁護人からその動機を問われ、森被告人は次のように述べた。

「授業中、女の子の下着が見えていたのがきっかけでした。低学年は落ち着きがなくて騒がしいのが当然なのですが、当時はそんなふうに考えられなかった。その女の子も騒いでいたので、仕返しがしたくて、盗撮に手を出してしまった」

検察側は、なぜ盗撮が「仕返し」になるのかを森被告人に質問した。

「仕返しの方法はたくさんあるが、小児性愛者なので盗撮画像で性欲を満たすことで仕返しをしたかった」

裁判官からも、女の子への「仕返し」について質問があった。

「仕返しといっても、直接生徒を傷つけることができず、でもイライラがたまっていたので、心の中で仕返しをしたかった」

これに対して、裁判官はさらに「仕返しは相手がわからなければ仕返しにならないのでは」と問い、森被告人は「相手に気づかれなければいいという認知の歪みがあった」と答えた。

⚫︎投稿のためのメンバーを自ら「基準」設けて厳選

被告人質問では、盗撮に加えて、SNSのカカオトークのグループで画像を共有していたことについて問われた。弁護人がその理由を聞くと、森被告人はこう述べた。

「最初はほんの出来心だった。(低学年の女の子は)マスクをしていたし、下着も写っていないので、私の中で(違法ではないと)言い逃れができると都合よく解釈していた」

「周りの人を楽しませたかった。投稿したら卑猥な感想がきて、興奮してしまった。それで繰り返すようになっていった」

森被告人は、小児性愛者約80人が情報交換などをしていたカカオトークのグループを半年以上「観察」し、20人程度のメンバーを厳選して新たなグループをつくっていた。その基準について、3つあったと森被告人は説明した。

「音信不通にならない、(小児性愛の)願望は持ちながらも実際の行動には移さない、忠誠心とまでは言わないまでも、私に敬意を持ってくれていることです」

3つ目の基準については、「私に対して反抗的だと、通報されたり、(投稿画像を)悪用されたりするからです」と述べた。

検察側からは、グループの基準について、「実際の行動には移さない」としながらも、自分の親族の子どもの画像を投稿しているメンバーがいたことについて問われ、森被告人はこう説明した。

「当時の私の認識では、自分の子どもに性加害をしている人は、他の子どもに性加害しないと思っていた。言い方は悪いが、せっかく自分に娘がいてもみ消せるのに、他の子どもにも加害するリスクは高いと思い、安心してしまっていた」

検察側からは、生徒の個人情報も投稿した理由を問われ、森被告人はこう答えた。

「グループのメンバーは、性器が写っているような児童ポルノも見慣れていた。下着(の映像)では見向きもされないが、個人情報が付与されることで、実在する女児ということで、『実際にこうやりたい』という妄想が(メンバーの間で)増えていった。それを見て、興奮したかったことが、事件のきっかけの一つです」

⚫︎検察側は「実刑が相当」として求刑

森被告人は、教え子だった女児やその保護者ら、そして四谷大塚に対して、謝罪を述べた。

「事件後、命と家族以外はすべて失いました。自分については自業自得だと思っていますが、被害者の方々は生活が一変してしまったと思います。この場を借りて、お詫び申し上げたいです。本当に申し訳ありませんでした」

この日、森被告人のカウンセリングを担当している精神保健福祉士・社会福祉士で、大船榎本クリニック精神保健福祉部長の斉藤章佳氏も出廷した。

斉藤氏は森被告人が週2回通院しながら、再発防止プログラムに取り組んでいると証言した。そのうえで「(森被告人)本人が治療に主体的に取り組んでおり、モチベーションも維持されています。再犯の可能性はかなり低いと考えています」と述べた。

一方で、森被告人が盗撮を「誰にも気づかれなければいい」と考えていたことについて「認知の歪みは、長く治療を受けてた人でも、出てきてしまうことがある」と指摘。「そうしたときに対処する能力を高めるのが治療になります」と説明した。

検察側は最後に、「塾の講師という立場を悪用し、子どもの信頼につけこんだ犯行」で、「悪質であり、実刑が相当」だとして、懲役2年を求刑した。森被告人の弁護人は、執行猶予付きの判決を求めた。