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退職前に残っている有給休暇をすべて使いたいと申し出たら「有給消化は認められない」と返されたーー。弁護士ドットコムに、このような相談が寄せられている。

相談者は退職までに約2カ月あり、40日の有給が残っているという。会社側は「後任が決まらないので、休まれると困る。ここで休むと業界での印象が悪くなり、二度と転職できなくなる」などと言っているそうだ。

気にせずに有給を取得してもよいのだろうか。波多野進弁護士に聞いた。

●労働者はまとめて取得できる

ーーそもそも、有給消化を認めない会社の言い分は正当といえるのでしょうか。

正当とはいえません。したがって、相談者は年次有給休暇を取得できます。

使用者である会社側には、有休の時期を別の時期に変更できる権利(時季変更権)があります。労働基準法には、次のように規定されています。

【労働基準法39条5項】 使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

使用者がこの権利を行使するには、前提として、労働者が違う時期に有給を取得できることが必要になります。しかし、退職者が有給休暇を取得できる時期は限られており、他の時期に変更することはできません。そのため、このような場合、一般的には、使用者は時季変更権を行使できないと解釈されています。

「後任者がいない」という言い分も使用者の一方的な都合に過ぎません。労働者を引き留める正当な理由にはならないと考えます。

ーー会社の言い分を無視して取得してもよいのでしょうか。

有給休暇をまとめて取得することはできますが、その前に引き継ぎ等はきちんとおこなっておきましょう。引き継ぎしないまま退職すると、後日、使用者から損害賠償請求されるなど、無用な紛争を引き起こしかねません。そのような主張を許さないためにも、やるべきことはしっかりおこなったうえで取得するようにしましょう。

【取材協力弁護士】
波多野 進(はたの・すすむ)弁護士
弁護士登録以来、10年以上の間、過労死・過労自殺(自死)・労災事故事件(労災・労災民事賠償)や解雇、残業代にまつわる労働事件に数多く取り組んでいる。
事務所名:同心法律事務所
事務所URL:http://doshin-law.com