VWが中国の新工場で生産を始めた小型EV「クプラ・タバスカン」は、ヨーロッパ市場に輸出される(写真はクプラのウェブサイトより)

ドイツ自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)グループが、中国の安徽省合肥市に建設した新工場が稼働し、EV(電気自動車)の生産を開始した。2023年12月30日、合肥市政府がSNSの公式アカウントを通じて明らかにした。

新工場の建設主体である大衆汽車安徽(VW安徽)は、VWにとって中国で3社目の完成車の合弁会社だ。安徽省政府系の国有自動車メーカー、江淮汽車との対等出資で2017年に設立された後、中国政府の外資規制の緩和を受けて、2020年にVWが出資比率を75%に引き上げた。

合弁会社の経営権確保

今回生産を始めたのは、VW傘下のスペインのセアトが展開するサブブランド「クプラ」の小型EV「タバスカン」だ。VWは合肥工場製のタバスカンをヨーロッパ市場に輸出するほか、2024年には中国市場向けの新型EVの生産も開始する計画だ。

VW安徽でのEV生産計画は、VWが出資比率を引き上げて経営権を確保した後に発表された。VWはこのほか、国有自動車大手の上海汽車との合弁会社である上海VW、同じく第一汽車集団との合弁会社である一汽VWの工場でも、それぞれEVを生産している。

VWは長年にわたって、上海VWと一汽VWを中心に中国事業を展開してきた。しかし近年の動きを見ると、中国市場での新たなトライアルをVW安徽から着手するケースが目立つ。


VWは中国での研究開発能力を大幅に強化し、グローバル事業に活かそうとしている。写真は安徽VWのテストコースの完成予想図(同社ウェブサイトより)

タバスカンの輸出もその1つだ。中国はEV製造に必要なサプライチェーンが世界で最も充実しており、生産コストが安く、新技術の導入も早い。VWがタバスカンの生産地として中国を選んだのは、数あるメリットなかでもコスト競争力を重視したためとみられている。

上海VW・一汽VWとの関係が課題

VWはここにきて中国での研究開発能力の強化を急いでいる。中国の強みを取り込み、グローバル事業に活かすためだ。合肥市はその投資の中心地でもある。研究開発子会社、部品子会社、デジタル販売サービス子会社などを続々と設立しており、それらの総投資額は計画ベースで231億元(約4609億円)に上る。


本記事は「財新」の提供記事です

自動車市場のEVシフトが急速に進む中国で、VWは変化に積極的に対応しようとしている。財新記者の取材に応じたある関係者は、同社の姿勢を肯定的に評価する一方、上海VWおよび一汽VWとの協力関係といかにバランスを取るかが課題になっていると指摘した。

財新記者の取材によれば、上海VWおよび一汽VWはそれぞれ独自の研究開発能力を強化し、市場の変化に対応する意向だ。

(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は2023年12月31日

(財新 Biz&Tech)