人は直感的に「AIが生成した絵画」より人間の絵を好むことが判明、AI作品は「不気味の谷現象」に陥っている可能性
画像生成AIが出力した絵画を人間が描いた絵と見比べてもらう実験を行ったところ、どちらが描いた絵なのかわからなくても人間の絵の方が高く評価され、親しみやすく感じられることが確かめられました。
Artificial intelligence and art: Identifying the aesthetic judgment factors that distinguish human- and machine-generated artwork.
Research finds people struggle to identify AI from human art, but prefer human-made works
https://techxplore.com/news/2023-12-people-struggle-ai-human-art.html
今回の研究が行われたきっかけは、「生成AIモデルの改良が進んでいる中、果たして人はAIが生成した絵と人間が描いた絵を見分けられるのだろうか?」と、アメリカのボーリング・グリーン州立大学の博士課程候補者であるアンドリュー・サモ氏とスコット・ハイハウス教授が疑問に思ったことです。
過去の研究では、人はAIの作品に偏見を抱くことがわかっていますが、人とAIの作品を見分けられなくなった時、先入観なしで両者の作品を見比べたらどうなるのかは不明でした。
この疑問の答えを見つけるべく、サモ氏らは参加者にAIが生成した画像が含まれていることを隠したまま一連の絵画を見せて、芸術的な感情や経験を定量化するために開発された心理測定で評価してもらう実験を行いました。
その結果、参加者が作品の出典を言い当てられた確率は半分ちょっと、つまりコイントスで決めるのとほとんど同じ精度だったにもかかわらず、一貫して人間が生み出した作品の方を肯定的に感じることがわかりました。
心理測定の元となる美的判断要素は30〜50項目ありましたが、そのうち人とAIの作品で大きな違いが出たのは主に4つでした。具体的には、人間が制作したアート作品は「内省」「魅力」「懐かしさ」「楽しさ」で高いスコアをつけられており、これは参加者が人間の芸術作品により強いつながり感じていたことを示しているとのこと。
興味深いことに、参加者になぜそう感じたのかを尋ねても答えられませんでした。これはおそらく、脳がAIと人の作品の間にある微妙な違いを見つけたからではないかと、サモ氏らは考えています。
この結果についてサモ氏は「考えられる説明のひとつは、人間らしく見せようとするものの微妙にずれているという不気味の谷効果です。全体的にはいいように見えても、AIが作った視覚的な作品や創造的な物語には、人の潜在意識だけが認識できる小さな違和感があるのでしょう」と説明しました。
この論文の著者であるサモ氏とハイハウス氏の研究分野は、生成AIの可能性の追究です。サモ氏らが実験をしてから、その結果を論文にまとめて発表するまでの間にもどんどん生成AIが進歩しているため、サモ氏は「新しいAIモデルの中には、実世界に忠実で高品質な画像を生成できるものも出てきました。そうしたAIを使ってこの実験をやり直したら面白いでしょうね」と話しました。