2023年のグルメトレンドは、小売り商品なら「超有名人監修フード」、外食なら「もんじゃ焼き」、お酒なら「ジャパニーズウイスキー100周年」などが盛り上がりました。詳細は前回の記事で触れましたが、2024年はどんなアイテムが話題となるのでしょうか。5つのトピックスでフードアナリストが解説します。

↑2024年を賑わせるであろうグルメの数々。年始の雑談にご活用ください!

 

1:うなぎのパラダイムシフト

2023年のグルメトレンド記事では「謎うなぎ」で軽く触れた程度でしたが、実はうなぎの大衆化が現在進行形で拡大中。最も勢いづいているのが、本格的なうな重をリーズナブルに提供するチェーン「鰻の成瀬」です。

↑2023年10月7日に開業した、「鰻の成瀬 吉祥寺店」

 

同チェーンは2022年9月に「鰻の成瀬 横浜店」からスタートするやいなや、まさに“うなぎのぼり”で急成長。2023年には73店舗まで増え、2024年も現時点で8店舗の新規開業が予定されています。

↑「鰻の成瀬 吉祥寺店」の「うな重 梅」1600円

 

そして、2匹目のどじょうならぬ“2匹目のうなぎ”を狙う動きも活発に。「清流うなぎ 月島」「うなぎ 梁川」「うなぎ亭 智」「大衆うなぎ もとやま」「うなぎ屋 江戸名代亜門」などの競合が、都内を中心に続々開業されています。もちろん地方もアツく、特に元気なのは、ひつまぶしで知られる愛知・岐阜などの東海エリア。

↑2023年11月開業「ひるどきうなぎ 鰻しろ」の「ひつまぶし 上」1900円。東海では数年前から「大衆鰻料理店 うなぎ家」や「うなぎの与助」といったチェーンが勢力を伸ばしており、このエリアも見逃せません

 

高級食のうなぎが、昨今の物価高にありながら低価格化も起こるという、いわばうなぎのパラダイムシフト。背景には、調理システムの簡素化によるオペレーション向上があります。また、個人的な見解では、ハイテクうなぎ調理機器でデリバリー専門店などを100拠点以上展開している、utechnologies社(うなたんグループ)の暗躍が大きいのではと予想しています。

↑utechnologies社のプレスリリースより。コンセプトは“うまい鰻を腹一杯!”で、上記で挙げた格安うなぎ店のなかには、同じ文言を掲げているところもちらほら

 

2023年は、夏の土用丑の日に向けて日清食品が開発したプラントベースうなぎ「謎うなぎ」が1000セット即完売して話題になりましたが、2024年はさらなる拡大販売をするでしょう。そして他方、「おかやま理大うなぎ」や「近大うなぎ」などではうなぎの完全養殖に成功しており、うなぎの未来は明るいといえるのです。

↑「おかやま理大うなぎ」を外食チェーンで初めて採用したのは、くら寿司。2023年の春に1万2000食限定で発売されました。なお、完全養殖は飼料や管理にコストがかかり、安価での量産はまだ時間がかかるとのこと

 

これまで、低価格うなぎチェーンは「名代宇奈とと」の一強でしたが、2024年はさらなる激戦が繰り広げられるはず。注目です!

 

 

2:コーヒーカクテル

コーヒーは定番のドリンクであり、昨今はバーテンダーの活躍やグローバル化などによってカクテルも人気に。そんななか、トレンド発信地である渋谷を中心に増えているのがコーヒーカクテルを提供する飲食店です。

↑「アッシュ zero-waste cafe & bar」のコーヒーカクテル。同店は、世界的に有名なバーグループであり、世界一のバーテンダー・後閑信吾さん率いるグループが2022年の春に開業

 

エリア以外の共通点は、カジュアルな雰囲気で入りやすいことや、アルコール度数が高すぎないこと。特に新しい例は、2022年6月開業の「スマドリバー渋谷」がある建物5階に2023年9月オープンした「ザ フィフス バイ スマドリバー」の「飲むティラミス」です。

↑ダルゴナコーヒーをヒントにした「飲むティラミス」1500円。同店にはほかに、ラズベリーや黒胡椒などを使った「クリムゾンスター」(1500円)というコーヒーカクテルも

 

また、渋谷ストリーム1階に昨秋オープンしたステーキビストロ「オーシャングッドテーブル 渋谷」の名物ドリンクはエスプレッソカクテル。同店は料理をメインにサーブするレストランですが、一流バーテンダー迎えて本格カクテルも提供しています。

↑「オーシャングッドテーブル 渋谷」のバーテンダー。エスプレッソカクテルは「カフェ・コレット」(800円)をはじめ3種が用意されています

 

読者のなかには、「初めて飲んだお酒はカルーアミルク」という方もいるのでは? それが、これからは進化版のコーヒーカクテルに変わっていくかもしれません。コーヒーの新しい可能性を発信していくカルチャーとしても、見逃せないトレンドです。

 

 

3:ニッカウヰスキー90周年

2023年はジャパニーズウイスキー100周年のアニバーサリーでしたが、2024年はニッカウヰスキー90周年。同社は2014年に80周年記念ウイスキーを発売した過去があり、今年も期待せずにはいられないのです。

↑こちらは、創業90周年に向けた「NIKKA DISCOVERYシリーズ」の第1弾商品。2021年の秋に限定発売された「シングルモルト余市 ノンピーテッド」と「シングルモルト宮城峡 ピーテッド」

 

なお、ジャパニーズウイスキー100周年は山崎蒸溜所の建設着手が1923年であることに起因しますが、その初代工場長はニッカウヰスキー創業者の竹鶴政孝氏。そして、竹鶴氏と妻のリタ氏をモデルにした連続テレビ小説「マッサン」は、2024年で放映10周年を迎えるアニバーサリーでもあるのです。

↑左が竹鶴氏で、右がリタ氏。2024年で竣工55周年を迎える宮城峡蒸溜所にて

 

また、2023年はアニバーサリーの山崎蒸溜所、白州蒸溜所(竣工50周年)から記念のハイボール缶が発売されましたが、2024年は「シングルモルトウイスキー 山崎」が発売40周年、「シングルモルトウイスキー 白州」が発売30周年でもあります。年々人気が高まるジャパニーズウイスキートレンドとともに、2024年も激アツ間違いありません。

 

 

4:フルオープンの缶チューハイ

2021年に大ヒットしたお酒のひとつが、同年4月に発売されるや否や社会現象を巻き起こした「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」です。それから数年経ちましたが、2023年は派生商品が発売されていたことをご存知でしょうか。

↑左が「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」。中央は2023年7月にコンビニ限定発売された「アサヒ食彩」で、右は同年12月に限定発売した「アサヒドライゼロ 泡ジョッキ缶」

 

この、天面がカパッと全開するフルオープンエンド仕様の缶ですが、なかでも度肝を抜いたのが、初のチューハイタイプである「未来のレモンサワー」。こちらはアサヒビールのEC「ASAHI Happy Project」で2023年5月に登場し、1700セットがすぐに売り切れました。

↑「未来のレモンサワー」。開封するとレモンスライスが浮かび上がる仕様が斬新でした

 

おそらく1700セット限定だったのは、テスト販売の意味合いがあったのでしょう。こんなに真新しい缶チューハイですから、通年発売される日もそう遠くないはずです。ということで、2024年はアサヒのジョッキ缶新製品にいっそうの注目を!

 

 

5:シルクロード〜中東料理

ラストは外食トレンドを交えたトピックを。それが、シルクロードや中東をテーマにしたレストランと料理です。隆盛の背景には、2022年のユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされた「ガチ中華」があります。

 

「ガチ中華」がブレイクした理由のひとつは、現地そのままの料理で異国情緒を楽しめるガチな味にあります。それが今後は、作り手の増加と食べ手の探求心の強化によってフォーカスされる地域は西へ南へと広がり、中東やシルクロード料理も注目されていくでしょう。ひとつは、2023年の大ヒットドラマ「VIVANT」の舞台となったモンゴルです。

↑2022年末、神楽坂に開業して一気に人気店となった「草原の料理 スヨリト」。写真は「チャンスンマハ」という、モンゴル定番の塩ゆで羊肉です

 

また、中東に関してはイスラエル料理を中心にアッパーな業態でフォーカスされていて、有名シェフの奥野義幸さんと米澤文雄さんがタッグを組み、“中東イタリアン”がテーマの「トラットリア タブレ」を2023年10月にオープン。

↑横浜のみなとみらいエリアにオープンした、「トラットリア タブレ」の定番「シグネチャータブレ ヨーグルトのソース」950円

 

個人的には、ヨーグルトを料理に使う地中海〜中東のレシピにも注目。なぜなら、先日開催された「『明治ブルガリアヨーグルト』発売50周年記念発表会」のなかで2024年の新商品発表があり、登壇者が「朝昼晩、どのタイミングにもピッタリ」と話したから。昼や夜にヨーグルト、というのは食事のことを指しているのではないかと予想が立てられるのです。

↑「明治ブルガリアヨーグルト」は、今春新たなプレーンヨーグルトの発売を告知。明治は公式サイトなどでヨーグルト料理レシピの積極発信もしており、期待が高まります

 

「明治ブルガリアヨーグルト」は、1970年に開催された日本万国博覧会(大阪万博)の「ブルガリア館」で、明治のスタッフが本場のプレーンヨーグルトを試食したことが開発の契機。そしてご存知、2025年には通称「大阪・関西万博」が予定されていますよね。加えて、トルコ北西にあるブルガリアもまた、シルクロードの一国。これはワンチャンあるかもしれません。

 

 

中期的なトレンドとしてはビールがアツい!

本稿では5つのトピックスで2024年のグルメトレンドを予想しましたが、もうひとつ挙げるとしたら、「スタンダードビールの新ブランド」があります。というのも、2023年は10月の酒税法改正でビールに追い風が吹きましたが、2026年10月にはさらなる改正でいっそうお得になるからです。

↑キリンビールの資料より。価格差があったビール、発泡酒、新ジャンル(第3のビール)は2026年10月に税額が統一され、ビールが実質安くなります

 

この特需に向け、大手メーカーは新ブランドの開発を進めているはず。早ければ2024年に新商品の発売と、それに伴う販売促進の動きがあるでしょう。何はともあれ、ビールは継続して盛り上がるカテゴリーなので要チェック。そして今年も、GetNavi webのフード記事をよろしくお願いします!