性器に水ぶくれ、赤いブツブツ、痛み…性器ヘルペスは一度かかると再発を繰り返すやっかいな病気…風邪や多忙で免疫機能が下がったときは要注意!

一度感染すると、症状がおさまっても体内に棲みつき、何らかの原因で免疫が落ちると再発する「性器ヘルペス」。性行為によって感染するため、誰もがなり得る病気だ。性器ヘルペスの症状、予防、治療についての注意点について、ウチカラクリニックの院長森勇磨先生が解説する。

性器に水ぶくれができる性器ヘルペス

性器ヘルペスとは、男女ともなり得る病気で、性器にヘルペスのウイルスが感染すると起こる病気です。性感染症の中では減少傾向にある性器ヘルペスですが、一度感染すると再発を繰り返すのがやっかいな特徴です。

ヘルペスには8種類あり、その中のⅠ型とⅡ型が性器ヘルペスになります。

以前、Ⅰ型は口周りにできるため口唇ヘルペス、Ⅱ型は性器の周りに感染する性器ヘルペスと分類されていたのですが、オーラルセックスなど性行為の多様化の影響もあり、Ⅰ型が性器に感染することも珍しくなくなってきたため、Ⅰ型とⅡ型が性器ヘルペスといわれるようになりました。

性器ヘルペスは、主に性行為によって感染します。男性よりも女性のほうが性器ヘルペスになりやすいです。これは体の構造によるものです。

症状の多くは、男性は性器や肛門に、女性は膣、太もも、膀胱に水疱ができます。太もものリンパ節まで腫れてしまうこともあります。また、症状が重いと発熱する場合も。初めて感染したときが特に症状が重い傾向にあります。

水疱がただれて潰瘍の状態になると、さらに痛みが増します。人によっては尿道の周りがただれると排尿するたびに激痛が走ったり、歩けないほどの痛みを伴ったりして、非常にやっかいな病気です。

また、性器ヘルペスは人にうつしてしまう可能性があります。性行為だけでなく、ウイルスが付着したタオルや便座から接触感染することもあるため、性器ヘルペスになった場合は慎重に行動しないといけません。

女性の場合、妊娠中に性器ヘルペスに感染、あるいは再発しても、お腹の赤ちゃんに感染することはありません。しかし、分娩の際に、赤ちゃんの通り道である産道にヘルペスがあると、赤ちゃんに感染してしまい、ときに赤ちゃんに重篤な症状を引き起こすことがあります。

妊娠後期や分娩時に性器ヘルペスの症状があるときは、帝王切開を選択する場合があるので、性器ヘルペスにかかったことがある人は、必ず医師に伝えるようにしましょう。

一度感染すると免疫力が低下したときに再発する

ヘルペスはいったん症状が治まっても、人間の神経節に潜伏し、風邪や忙しい日々で免疫力が落ちたタイミングを見計らって、症状に現れるというやっかいな特徴があります。

ヘルペスのⅢ型にあたる水ぼうそうは子どものころにかかると、それで症状が治まりますが、大人になって免疫機能が落ちると帯状疱疹となって現れるのと同じように、性器ヘルペスのウイルスも腰にある腰仙骨神経節を棲みかにし、免疫機能が落ちたときや、女性の場合は生理のタイミングにピリピリした痛みや皮膚の症状となって現れます。

体調が悪いのに輪をかけて、私たちを苦しめるのです。

なかには月に1度の頻度の割合で出現する人もいて、まるで性器ヘルペスと共存しているような感覚に陥る場合もあります。

ちなみにI型とⅡ型だと、Ⅱ型のほうが再発しやすいといわれています。

また、性器ヘルペスは初めて感染すると2~10日の潜伏期間後、症状が出る場合が多いですが、症状が全く出ないままウイルスが神経節に潜伏してしばらくたってから症状が出る場合があるので、注意が必要です。

性器ヘルペスは一度でも感染すると、神経節に潜伏し、少しでも体調のバランスが崩れてしまうと性器の周辺に再び現れる可能性があるということを覚えておいてください。

性器ヘルペスを完全に死滅させる薬はない

性器ヘルペスの診断は、視診、ウイルス検査、血液検査です。性病科、泌尿器科、婦人科で受診できます。

治療法は性器ヘルペスのウイルスが増殖を抑え込む飲み薬があります。ですが、ウイルスを外に追い出せる薬ではなく、あくまでもウイルスの勢いを抑えて、神経節に戻すためのものです。

例えば、症状が治まったからと薬をやめてしまうと、再び性器に水疱症状や痛みが出る場合も。

そのため、再発に悩まされる人にはPIT療法があります。

症状が出る前に医師が患者に薬を出しておき、陰部がムズムズする、熱くなるなど前兆があるときに自分の判断で薬を飲み、本格的な症状が出る前に抑え込む方法です。

保険適用されるので、性器ヘルペスに悩む人は医師に相談しましょう。

性器ヘルペスの予防は、性行為時にコンドームをつけることです。ですが、コンドームに覆われていない、肛門や太ももにも感染することから、ちょっとでも性器ヘルペスの症状が疑われるようなら、性行為をしないようにしましょう。

現在の医療では、性器ヘルペスを死滅させる治療法は確立されていないため、自分の体を性器ヘルペスの棲みかにされないように、正しい知識を持って事前に対策することが大切です。

取材・文/百田なつき