みずほは楽天、三井住友はSBI、三菱UFJはauカブコムと提携するも、それぞれに「課題と悩み」
「ネット、デジタルの世界に人がどんどん流れていっている」─みずほフィナンシャルグループ社長の木原正裕氏は、こう危機感を示す。みずほは楽天証券に追加出資、持ち株比率を19.99%から49%にまで高めた。ネット証券の持つ集客力を、自らの力とするためだ。そしてここに来て、3メガバンクのネット証券戦略は色が分かれつつある。「資産形成」の時代を迎える今、その成否は─。
「新NISA」の開始が1つのきっかけに…
「メガバンクの中で、ネット証券に一定のフックをかけられたのは、みずほだけ。ここを進化させていく」と話すのは、みずほフィナンシャルグループ社長の木原正裕氏。
2023年9月、みずほフィナンシャルグループは、グループのみずほ証券を通じて、楽天証券に対して約870億円を出資、持ち株比率を49%まで高めることを打ち出した。
みずほは、22年10月に約800億円を投じて19.99%を取得しており、追加出資となる。この時は「高値掴み」を指摘する声も強かったが、ある市場関係者は「今回は割安に取得したと言えるのではないか」と指摘。
今、岸田政権は「資産運用立国」を掲げ、24年からは「新NISA」がスタートするなど、国民の間でこれまでにないくらい「資産形成」への関心が高まっている。
この動きの中で、各金融機関が口座を獲得すべく動く。木原氏によると、みずほ証券は昨年月間5000口座の獲得だったところ、足元では月8000~9000というペースで口座数が増えているのに対し、SBI証券や楽天証券は60000~70000という桁違いのペースで増加中。
「稼働している口座数も、ネット証券は圧倒的。ネット、デジタルの世界に流れていっているのが今の状況。それを我々として掴んでいきたい」と木原氏。
楽天証券の顧客の一部富裕層の中には、対面による資産形成アドバイスへのニーズも出てきており、そこに対して、みずほのプラットフォームでサービスを提供することで「WIN・WINの関係をつくることができるのではないか」(木原氏)
この追加出資の背景には当然、楽天グループ自体の苦境もある。モバイル事業での赤字が続く中、〝虎の子〟の金融事業会社を上場し、資金調達を進める戦略だった。23年4月には楽天銀行が上場し、楽天Gは一部株式の売却で約700億円を調達。
続いて、楽天証券の持ち株会社・楽天証券ホールディングスの上場を23年7月に申請、23年内の上場を見通していたが、そのシナリオはみずほによる追加出資によって、延期となった。みずほによる追加出資額は、上場で調達するはずだった資金額に近い。24年、25年に合計約8000億円の社債償還が迫るだけに、楽天Gとしては背に腹は代えられない状況。
みずほとしては、最初の出資は少々高値でも、他のメガに楽天証券を取られないようにするためのもの、追加出資は関係深化と、将来起き得る様々なシナリオを睨んでのものと言える。
ただ、「みずほと楽天証券では顧客層が全く違う。楽天から入った人が、みずほに向かうかというと疑問」(前出の市場関係者)という声もある。両社を融合させられる一手を見出せるかが、みずほに問われている。
注目されるのは、今後の残る2メガバンクのネット証券戦略。三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)は、モバイルアプリ「Olive」を通じて、銀行口座、カード決済、ファイナンス、オンライン証券、オンライン保険などの機能を顧客に提供している。
このアプリには、SBIホールディングスとの包括提携を生かしてSBI証券が参画。ただ、SMFGが「資産運用のメインサービス」と位置づけているのに対し、SBI証券は「オープンアライアンス」を強調するなど温度差がある。
「新NISA」の開始が1つのきっかけに…
「メガバンクの中で、ネット証券に一定のフックをかけられたのは、みずほだけ。ここを進化させていく」と話すのは、みずほフィナンシャルグループ社長の木原正裕氏。
2023年9月、みずほフィナンシャルグループは、グループのみずほ証券を通じて、楽天証券に対して約870億円を出資、持ち株比率を49%まで高めることを打ち出した。
みずほは、22年10月に約800億円を投じて19.99%を取得しており、追加出資となる。この時は「高値掴み」を指摘する声も強かったが、ある市場関係者は「今回は割安に取得したと言えるのではないか」と指摘。
今、岸田政権は「資産運用立国」を掲げ、24年からは「新NISA」がスタートするなど、国民の間でこれまでにないくらい「資産形成」への関心が高まっている。
この動きの中で、各金融機関が口座を獲得すべく動く。木原氏によると、みずほ証券は昨年月間5000口座の獲得だったところ、足元では月8000~9000というペースで口座数が増えているのに対し、SBI証券や楽天証券は60000~70000という桁違いのペースで増加中。
「稼働している口座数も、ネット証券は圧倒的。ネット、デジタルの世界に流れていっているのが今の状況。それを我々として掴んでいきたい」と木原氏。
楽天証券の顧客の一部富裕層の中には、対面による資産形成アドバイスへのニーズも出てきており、そこに対して、みずほのプラットフォームでサービスを提供することで「WIN・WINの関係をつくることができるのではないか」(木原氏)
この追加出資の背景には当然、楽天グループ自体の苦境もある。モバイル事業での赤字が続く中、〝虎の子〟の金融事業会社を上場し、資金調達を進める戦略だった。23年4月には楽天銀行が上場し、楽天Gは一部株式の売却で約700億円を調達。
続いて、楽天証券の持ち株会社・楽天証券ホールディングスの上場を23年7月に申請、23年内の上場を見通していたが、そのシナリオはみずほによる追加出資によって、延期となった。みずほによる追加出資額は、上場で調達するはずだった資金額に近い。24年、25年に合計約8000億円の社債償還が迫るだけに、楽天Gとしては背に腹は代えられない状況。
みずほとしては、最初の出資は少々高値でも、他のメガに楽天証券を取られないようにするためのもの、追加出資は関係深化と、将来起き得る様々なシナリオを睨んでのものと言える。
ただ、「みずほと楽天証券では顧客層が全く違う。楽天から入った人が、みずほに向かうかというと疑問」(前出の市場関係者)という声もある。両社を融合させられる一手を見出せるかが、みずほに問われている。
注目されるのは、今後の残る2メガバンクのネット証券戦略。三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)は、モバイルアプリ「Olive」を通じて、銀行口座、カード決済、ファイナンス、オンライン証券、オンライン保険などの機能を顧客に提供している。
このアプリには、SBIホールディングスとの包括提携を生かしてSBI証券が参画。ただ、SMFGが「資産運用のメインサービス」と位置づけているのに対し、SBI証券は「オープンアライアンス」を強調するなど温度差がある。