まずはこちらの動画をご覧下さい。オレンジ色の大きな点を中心に様々な速さで回転する小さな7つの点が、円を1周する度に音を鳴らしていきます。リズミカルに鳴らされる音の高さは点ごとに違っていて、タイミングの合った点と点の組み合わせに応じて独特な和音が奏でられます。



【▲ 動画:The Sounds of a New Planetary System (NASA Data Sonification)】
(Credit: Bishop’s University /Jason Rowe)


一種のアートのようにも思えるこの動画は、「はくちょう座(白鳥座)」の方向約4670光年先の恒星「Kepler-385(ケプラー385)」を公転する太陽系外惑星(候補を含む)のデータを元にソニフィケーション(※)の手法で作成されました。ケプラー385は太陽と比べて直径が約10パーセント大きく、表面温度は約5パーセント高いとされる恒星です。


※…非言語音を使って画像などの情報を伝える手法のこと。可聴化とも。


ケプラー385ではこれまでに3つの系外惑星と4つの系外惑星候補が見つかっていて、全部で7つの惑星が存在する可能性があります。このうち2つの惑星は直径が地球よりもやや大きくて薄い大気を持ち、残る5つの惑星は直径が地球の約2倍で厚い大気を持つと予想されています。


【▲ 恒星「ケプラー385」を公転する太陽系外惑星の想像図(Credit: NASA/Daniel Rutter)】


ケプラー385を公転する系外惑星とその候補は、2009年3月に打ち上げられたアメリカ航空宇宙局(NASA)の「Kepler(ケプラー)宇宙望遠鏡」の観測データから発見されました。ケプラー宇宙望遠鏡の主ミッションは機体の姿勢制御に用いるリアクションホイールの一部が故障したため2013年に終了しましたが、その後はスラスターも姿勢制御に用いる延長ミッション「K2」が2018年まで続けられました。


【▲ 恒星「ケプラー385」を公転する7つの太陽系外惑星の軌道を示したイメージ図(Credit: NASA/Daniel Rutter)】


エイムズ研究センターのJack Lissauerさんを筆頭とする研究チームによると、7つの惑星の公転周期は一番外側の惑星でも約86日、一番内側の惑星は約0.6日しかありません。言い換えれば、7つの惑星はケプラー385のすぐ近くを公転していることになります。惑星に入射する単位面積あたりのエネルギーを比較すると、ケプラー385の各惑星は太陽系のどの惑星よりも高いエネルギーを受け取っているといい、NASAはその様子を「地獄のように暑い」と表現しています。ケプラーの観測データを再検討した研究チームの成果をまとめた論文はThe Journal of Planetary Scienceに掲載予定で、arXivでプレプリントが公開されています。


 


Source


NASA - Scorching, Seven-Planet System Revealed by New Kepler Exoplanet ListBishop's University - New Kepler Exoplanet Catalogue Reveals Exoplanet Architectures and Multiplanet SystemLissauer et al. - Updated Catalog of Kepler Planet Candidates: Focus on Accuracy and Orbital Periods (arXiv)

文/sorae編集部