Apple Watchの血中酸素ウェルネス測定機能は医療機器メーカー「Masimo」の特許を侵害しているとの裁定をアメリカ国際貿易委員会が下す
2020年に発売されたApple Watch Series 6以降の一部のApple Watchには、血中に取り込まれた酸素のレベルを測定できる「血中酸素ウェルネスアプリ」が搭載されています。しかし、医療機器メーカーのMasimoはこの機能に対し「自社の特許を侵害している」と訴えてきました。アメリカ国際貿易委員会は2023年10月27日、Masimoの訴えを認め、Appleに対して「この機能を取り除かない限り、アメリカへの輸入を禁止する」との排除命令を下しました。
https://www.reuters.com/technology/us-trade-tribunal-issues-potential-apple-watch-import-ban-masimo-patent-fight-2023-10-26/
Apple Watches violates Masimo patents, ITC rules - Los Angeles Times
https://www.latimes.com/business/technology/story/2023-10-27/apple-watches-violate-patents-held-by-orange-county-tech-company-us-international-trade-commission-finds
Apple Watch Series 6以降の一部のモデルには、4つのLEDクラスターとフォトダイオードを用いることで、自身の血中酸素濃度を手首で測定できる「血中酸素ウェルネスアプリ」が搭載されています。
「Apple Watch Series 6」で血中酸素濃度を測定できる「血中酸素ウェルネスアプリ」の使い方まとめ - GIGAZINE
しかし、医療機器メーカーのMasimoは2021年6月、「2020年に発売されたApple Watch Series 6に搭載された血中酸素ウェルネス機能は、自社が持つ血中酸素飽和度測定機構の特許を侵害している」としてアメリカ国際貿易委員会に提訴しました。Masimoはこれまでに、数多くの血中酸素飽和度測定に関する特許を取得し、他の医療機器メーカーなどから特許使用料を受け取ることでライセンスの提供を行っています。
AppleとMasimoの法廷闘争は数年におよびましたが、2023年1月、アメリカ国際貿易委員会はMasimoの訴えを認め、Appleの敗訴を宣言しました。さらに2023年10月27日には、アメリカ国際貿易委員会が1月の判決を支持し、Apple Watchに対する輸入禁止措置命令を下すこととなっています。
今回の決定を受けてMasinoのジョー・キアニCEOは「この決定は、Appleのような世界最大級の企業でさえも、法律を乗り越えることはできないという強力なメッセージになりました。また、Masinoの特許技術を違法に流用したAppleの責任を追及するという我が社の取り組みに強い裏付けを与えてくれました」と述べ、アメリカ国際貿易委員会による裁定が正当であることを強調しました。
中国やベトナムで製造が行われているApple Watchをめぐっては今後、ジョー・バイデン大統領による輸入禁止措置に対する拒否権を行使するかについての審査が行われるとのこと。しかし、ロイター通信によると、アメリカ大統領がこれまでに拒否権を行使した事例はほとんどないとのこと。
またAppleはアメリカ国際貿易委員会の決定に対して、アメリカ連邦巡回控訴裁判所に不服を申し立てることを明らかにしており、Appleの広報担当者は「Masimoは『Apple Watchは自社の特許をしている』という誤った主張で、Apple Watchという何百万人ものアメリカ人の命を救うことができる製品を危機に追いやっています。今回の決定はApple Watchの販売にただちに影響が出るものではありませんが、私たちは今回の決定を覆すべきだと考えており、控訴に向けた準備を進めています」と述べています。