ユネスコ無形文化遺産のフィンランド国内リストに登録されているデジタルアート文化「デモシーン」について、デモシーンに関するYouTubeチャンネルを運営しているフィリペ・クルス氏へのインタビューがアート情報サイト・On the Artsに掲載されています。

What is the Demoscene? - by Kiefer Kazimir - On the Arts

https://onthearts.com/p/what-is-the-demoscene



根本的な部分である「デモシーンとは何か?」という問いに対して、クルス氏は「デジタルアートのサブカルチャー」であり「マシンが何をできるのかを示すことに重きを置いている人々のコミュニティ」と表現しました。

ルーツとしては、Apple IIやコモドール64、Amigaといった初期PCの普及期におけるゲームのクラッキングにあり、当初は「コピープロテクトを破ったのは誰か」「誰がゲームに手を入れたか」を示すためにイントロ映像として挿入されたりしましたが、やがて、デモそのものの音楽やグラフィックス、質の高さが競われるようになり、インターネットの普及によって国際的に広がっていったとのこと。

特に中央ヨーロッパや北部ヨーロッパで盛り上がりが大きく、ドイツで開催される「Revision」が最大級のデモシーンイベントとして知られています。

一方、クルス氏の出身地であるポルトガルのほか、アルゼンチンやオーストラリア、日本などでも活発な活動が見られるとのこと。

クルス氏が印象的なデモシーンとして名前を挙げたのは以下の2本。これらは1990年代後半の作品で、特にクルス氏の心の中で大事な場所を占めるものだとのこと。

Orange - Deesbab (1996) [60fps] - YouTube

Megablast / Orange (1996) - YouTube

また、2000年代初頭の作品では以下の3本を挙げました。

Incyber [Full HD] Satori (SK) & Aural Planet (PL) [2000] - YouTube

gerbera - Moppi Productions - YouTube

Barn by The Digital Artists (TDA) - YouTube

デモシーンを作成する理由について「純粋に芸術的な理由からなのか、ハードウェアの限界を押し広げようという意図なのか」と問われたクルス氏は、「どちらもあります」と答えています。

一般に知られているデモシーンはサイズ制限がある中で作られているもので、特に人気があるカテゴリは4KBと64KB。ほかに、128KB、256KB、512KBなど、細かいカテゴリごとにコミュニティが形成されているそうです。

わずか4KBで書かれたコードが織りなす驚愕のデモ・ムービー「Final Stage by 0x4015(Revision 2017)」 - GIGAZINE



デモシーンの制作にあたって用いられるツールは制作者やプロジェクトによって異なり、グラフィックアセットや音楽の作成にあたっては市販のツールを用いることも文化的に受け入れられているとのこと。クルス氏によると、制限がある4KBや64KBといったカテゴリで活動している人は、市販のツールでは力不足なため、特殊なツールを自作しているそうです。

なお、デモシーンをこれから作ってみたい人に向けては、GitHubで公開されている「Teach Yourself Demoscene in 14 Days」が最良の教科書だとのことです。

GitHub - psenough/teach_yourself_demoscene_in_14_days: A guide to learn and become active in the demoscene within a couple of weeks

https://github.com/psenough/teach_yourself_demoscene_in_14_days