鎌田大地は勝ってもひとり「輪の外」...ラツィオの雰囲気に馴染むにはまだ時間がかかりそうだ
4人の日本人選手が同時に先発したチャンピオンズリーグ第2節、セルティック対ラツィオ。そのうちのひとり、ラツィオの鎌田大地は今季出場した公式戦7試合で、初めてフル出場を果たした。
皮肉なことに、この日の試合前に発表された日本代表メンバーから、鎌田は『コンディション不良』を理由に落選している。ひざに水が溜まっている状態とも言われているが、9月下旬にはセリエAの2試合では出場がなかったものの、その後、先週末のACミラン戦とこの日のセルティック戦では先発しており、「大事をとってメンバー外となった」と見てもいいかもしれない。
鎌田大地はラツィオで初めてフル出場したが...
ただ、この日のセルティック戦の鎌田は90分出場したものの、どう見てもチームにフィットしているとは言い難かった。
インサイドハーフで先発し、攻守に奔走しているものの、出し手としても、受け手としても味方とのパスは合わない。ゴール前に入り、両手を広げて懸命に味方にアピールするシーンも数度見られたが、ボールは入らない。
象徴的だったのが、後半アディショナルタイムの逆転の場面だった。
敵陣の高い位置で奪ったボールをグスタフ・イサクセンが右に展開し、マテオ・ゲンドゥージが右からクロスを入れると、ファーサイドで飛び込んだのはペドロ。高打点のヘディングで合わせてネットを揺らした。
途中出場の選手たち3人が絡み、劇的勝利を生み出した。チームにとってはアウェーで貴重な勝ち点3を手に入れ、選手たち自身も途中出場の甲斐のある得点だった。
鎌田はこの時、ゴール前に走り込んでおり、ペドロのヘディングのタイミングでちょうどそのうしろに入っていた。だが、当然ながらボールにかすることもなく、虚しくゴールラインを越え走り抜けていった。噛み合っていないことの象徴的なシーンに見えた。
イタリアメディアもこの日の鎌田には手厳しく、たとえば『calciomercato.com』はチームで最低からチームで2番目の5.5点(最高は10点で及第点は6とされる。この日の最低は5点で、最高点は6.5点と全体に辛め)。
『前半終了間際、シュートの代わりに空中へのパスを選択。この試合で唯一よかった自身のプレーを無駄にしてしまった』と、鎌田の寸評を寄せている。
【鎌田大地は低迷するラツィオの起爆剤となれるか】試合後も鎌田は、スタンドのサポーターたちと喜びを分かち合うチームメイトと少々距離をとったところで静かに佇んでいた。フランクフルト時代であれば、輪に入らない鎌田をチームメイトの誰かが誘って輪の中に入れてくれたものだが、ラツィオではそんな感じではないようだ。
つまり、試合中もその後も、鎌田はこのチームにフィットするために少し時間を要するのだろうということが見てとれる。そんな試合であった。
鎌田がラツィオに合流したのは8月に入ってのことで、それまでは所属がなくなり個人で調整を行なっていたのだから、キャンプから積み上げてきた選手たちとは違って当然。そこに負傷が重なったので、今回は代表戦で日本に行かず、ラツィオに残ることが必要ということだ。
そもそも前回のドイツ戦やその前の活躍で、日本代表での力量は監督もチームメイトも知るところ。焦らずに日常を整える期間にするほかはなさそうだ。
「すばらしい前半を過ごし、後半の初めには勝ち越す大きなチャンスを迎えた。その後、苦しい時間帯が続いたが、最後には個性が発揮され、そこまでが報われた。今日の試合が私たちを勇気づけ、調子を取り戻す後押しをしてくれることを願う」
マウリツィオ・サッリ監督は試合後、こう振り返った。
今季のセリエAでラツィオは不調の日々が続き、CL出場チームながら16位に沈んでいる。チームは苦戦しているが、ポジションを奪わなくてはならない鎌田にとって、これはチャンスにほかならない。
何かしらここまでの流れを壊さなくてはいけない状況のなか、鎌田がチームにとって「新たな起爆剤」となることができるか──。この日の今季初のフル出場は、せめてそのきっかけにしたいところだ。