長寿をサポートする食べ物は？血管の専門医が教える「老けない食事法」

2023年9月29日 14時45分

「細胞から考える」をコンセプトに掲げ、最先端の研究をベースにスキンケアアイテムやサプリメントなどを展開する「fracora（フラコラ）」。同ブランドが運営するYouTube番組「生命科学アカデミー」では、最先端の生命科学の知識を紹介しています。

高齢化が進むいま、「老化」は現代医学の大きな課題の一つであり、「老いなき体」を目指して世界中で様々な研究が進められています。

「生命科学アカデミー」では今回、愛媛大学大学院抗加齢医学（新田ゼラチン）講座の伊賀瀬道也（いがせ・みちや）教授をゲストに迎え、最新の老化研究や、実践したい対策法について直撃。第3回目のテーマは「老けない食事法」。聞き手は生命科学アカデミーのHIROCO学長です。

理想のバランスは善玉：悪玉＝1:2

--先生は、著書の中で「老けない食事法」について紹介されていますよね。今回は、そこから、私が特に気になった5つをお聞きしたいと思っています。1つ目は「コレステロール」。善玉コレステロールと悪玉コレステロールには、見分け方があるのでしょうか。

伊賀瀬道也教授（以下、伊賀瀬）：ひと昔前は、総コレステロールが高いと、血管が傷むと言われていた時代がありました。ところが、総コレステロールだけを見ても、動脈硬化など血管の老化との関連が出てこないことがわかってきたんです。

そこで、最近言われるようになってきたのが、コレステロールにも善玉と悪玉があるということ。血液検査をすれば数値を測れますが、特に悪玉コレステロールが高い方は、血管が傷みやすいことがわかっていますね。

--血液検査のどの数値を見ればわかるのでしょうか？

伊賀瀬：LDLコレステロールという項目が、悪玉コレステロールです。もう一つは、HDLコレステロールという項目が、善玉コレステロールに分類されます。

--善玉コレステロールの数値がいい分には、問題ないということですね。

伊賀瀬：そうですね。基本的に、女性は善玉が高い方が多いです。それも、女性のほうが長生きする原因なのかもしれません。善玉と悪玉のバランスも大事で、具体的にいうと、善玉：悪玉＝1：2。善玉が1、悪玉が2、これを超えてくると、やはり血管が傷みやすいことがわかっています。

オメガ3不飽和脂肪酸で血液をサラサラに

--2つ目は「中性脂肪」です。コレステロールと同じように、中性脂肪にも良い・悪いがあるそうですね。

伊賀瀬：中性脂肪というのは、いわば、どのくらい栄養を摂ったかの総和です。中性脂肪もやはり、数値が高いと、血管が傷みやすいことがわかってきています。中性脂肪が150を超えると高中性脂肪と診断され、血管が傷みやすくなりますよ、と注意を促されますね。

--中性脂肪を抑えるためにも、食事からの油に気をつけたいですね。どのような油を摂ればいいのでしょうか？

伊賀瀬：現代人にとっては「不飽和脂肪酸」、特に「オメガ3不飽和脂肪酸」が体に良いと言われています。オメガ3不飽和脂肪酸には、血液をサラサラにする効果がありますね。

オメガ3の不飽和脂肪酸が含まれているのは「EPA（エイコサペンタエン酸）」や「DHA（ドコサヘキサエン酸）」といった油です。これらは、青魚に含まれる成分として知られていますね。

--それらの油は、調理に使ってもいいのでしょうか？

伊賀瀬：オメガ3不飽和脂肪酸は、熱を加えると効果が少し落ちます。なので、サラダにそのまま低温でかけるほうが、効果が高いと思われます。調理で熱を加える場合は、EPAやDHAではなく、別の油を選んだほうがいいかもしれません。

--先ほど「現代人にとっては」とおっしゃっていましたが、昔の人は摂る油の種類が違ったのでしょうか？

伊賀瀬：昔といっても、屋外で服もなくて生活している時代の話ですが、その時代の人たちは、血液がサラサラでないほうが長生きしていたと言われています。

いつケガをするかわからない、野性の動物に食われるかもしれないというときに、出血がサッと止まらなければ、死んでしまいますよね。なので、血液サラサラだと、長生きできなかったはずなんです。

いまは、動物に食われる心配もありませんし、出血すればすぐに止血処置が行われます。その一方で、年を重ねるにつれて、血管にだんだんゴミが溜まり、動脈硬化が進むようになりました。そういった理由から、血液をサラサラにして血流を促したほうが、元気に長生きできると考えられています。

「体のコゲ」を防ぐコツは揚げ物や炒め物を減らすこと

--3つ目は「体のコゲ」ですね。

伊賀瀬：ここ最近出てきた言葉で、AGEs（終末糖化産物）というものがあります。この糖化というのが、いわゆるコゲであり、病気や生活習慣によって、体の中にコゲが溜まってくることがわかってきています。

コゲが特に溜まりやすいのは、血糖値が高い方や、糖尿病の方などですね。毛細血管にまでコゲが溜まってくると、血流が悪くなり、ゴースト血管という状態になってきます。そうすると、肌の血流も悪くなり、シミやシワの原因になるんです。

--女性にとって気になるシワやシミ、それから見た目の老化を防ぐポイントが、体のコゲを作る調理法にあるということですが……。

伊賀瀬：同じ食材でも、調理法によって、AGEsの含有量は変化します。簡単に言えば、高温で調理された食品ほど、AGEsが多くなります。特に、揚げ物や炒め物など、高温で短時間調理すると、AGEsが一気に増えることに。AGEsの蓄積を防ぐためにも、油料理を少なくしたり、コゲた部分は取り除いたりする工夫をしましょう。

--4つ目は「筋肉量」のアップですが、そのために欠かせない成分について教えてください。

伊賀瀬：元気な筋肉を作るためには、もちろん運動することが大事です。それと同じくらい、良い栄養素を摂ることも大事なんですね。

筋肉を作る良質なアミノ酸の代表が「ロイシン」であり、これを摂取することによって、体が筋肉量を増やす方向に向かっていくことがわかっています。「HMB」はロイシンの分解産物であり、そういうものをサプリメントで摂っても、ある程度の効果が得られると言われていますね。