テスラは2023年8月14日に、モデルSとXに航続距離が短く価格が1万ドル(約146万円)安い「標準レンジ(SR)」モデルを追加することを発表しました。これらの車種には、通常モデルと同じバッテリーが搭載されているにもかかわらず、航続距離が短くなるようソフトウェアロックがかけられていると、EV専門メディアのElectrekが報じました。

Tesla's new Models S and X have the same battery pack but with software-locked capacity | Electrek

https://electrek.co/2023/08/15/teslas-new-model-s-x-same-battery-pack-but-with-software-locked-capacity/



Tesla's New Range-Limited Model S, X Carry a Big Discount | The Drive

https://www.thedrive.com/news/teslas-10000-cheaper-model-s-x-software-locked-for-less-range-report



テスラが今回発表したSRモデルは、価格の引き下げと引き換えに航続距離が通常モデルに比べて短くなっており、具体的にはモデルSの航続距離は405マイル(約652km)から85マイル(約137km)短縮されてモデルS SRでは320マイル(約515km)になり、モデルXの航続距離は348マイル(約560km)から79マイル(約127km)短縮されてモデルX SRでは269マイル(約433km)になっています。

伝えられるところによると、各車種の通常モデルとSRモデルは総容量が同じバッテリーパックを使っているとのこと。言い換えれば、SRモデルは車両の性能が低いわけではなく、単に価格を引き下げて販売することを正当化するためだけにソフトウェアで容量に制限をかけて航続距離を短くされているということになります。



by Nick Ares

SRモデルの車両重量が通常モデルと同じであることから、Electrekがテスラに問い合わせたところ、テスラのアドバイザーは新しく追加されたモデルS SRとモデルX SRは「ソフトウェアロックされたロングレンジ車両」であると認めたとのこと。ただし、アプリを通じてバッテリー制限を解除するサービスを提供するかどうかに関しては不透明で、あるアドバイザーはきっぱりと「ありません」と答えたのに対し、別のアドバイザーは「はっきりとはわかりません」と答えました。

自動車ニュースを扱うThe Driveは、「バッテリーパックの容量をソフトウェアでロックするのはテスラが前から使っていた古い手法で、初期のモデルSの容量を75kWhから60kWhに制限する時にも使われていました」と述べて、テスラが自動車の性能をソフトウェアで制限するのはこれが初めてではないことを指摘しました。

ソフトウェアによる変更を加えることで、テスラは車両や組み立て方法、搭載部品などに物理的な変更を加えることなく価格調整を行い、車種間の差別化を図ることができます。ただし、すべてで同様の手法が使われているわけではなく、モデル3 SRには通常のモデル3とは異なるバッテリーパックが搭載されているそうです。



今回のSRモデルの追加は、ある意味では同じ車を安く手に入れられるようになったとも考えられますが、同じバッテリーを搭載しているのに使える容量が少ないということは、その分余計な荷重を抱えているということでもあるため、SRモデルの購入を検討しているテスラユーザーにとっては気がかりなポイントです。

The Driveは「バッテリーは電気自動車のパーツの中でも特に重いということを覚えておいて損はないでしょう。利益ではなく全体的な効率を目標とした場合、車両重量を変えずに使えるエネルギーを27%減らすというのは、疑問の残る行為です。物理的なハードウェアには変更がないとされているので、SRモデルは実質的に73%の能力しか発揮できないのに通常モデルと同じ1200ポンド(約544kg)、100kWhのバッテリーを積んでいることになります」とコメントしました。