これってマナー違反?ハンディ扇風機の使い方で、デート中に彼に冷められた瞬間
男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。
出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
-あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?
誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。
さて、今週の質問【Q】は?
▶前回:別れ際、女をそっと抱き寄せた男。「次は僕の家で…」と約束をしていたけれど…

今年はどうしてこんなに暑いのだろうか。年々、暑さが増している気がする。それに伴い、私は深刻な問題を抱えていた。
隣に座る奏多は、同じ気温の空間にいるはずなのに汗ひとつかいていない。
その一方で、私はギリギリに家を出てバタついていたせいか、さっきから汗が止まらない。しかもこんな日に限って色物のワンピースを着てきてしまったので、洋服にじんわりと汗染みが浮立つ。
― 本当に最悪…。頼むから、今の私を見ないで…!!
そう心の中で叫ぶものの、今日は奏多と二度目のデート。奏多は嫌でも私を見てくる。
せっかく素敵なカウンターのお鮨屋さんに連れて行ってもらったのに、私はデートに集中できなかった。
そしてきっとそのせいで、このデート以降、奏多からの連絡が急に減ってしまった。
夏のデートで、一番最悪なパターンを迎えてしまった…。
Q1:初デートで次につながった理由は?
奏多と出会ったのはマッチングアプリだった。爽やかな笑顔の写真を見て、私はすぐに「いいね」を押した。
すると奏多からも「いいね」が来て、見事にマッチング。最初は、軽くお茶をすることになった。
お昼13時からの夏デートは、場所が重要だ。外でのデートなんて最悪で、日にも焼けるし汗もかく。テラス席も危険だ。
奏多は「グランド ハイアット 東京」の『フィオレンティーナ』を指定してくれたので、少し早めに行って呼吸を整え、化粧直しもしっかりしてから挑む余裕まであった。

「裕子さん…ですか?」
「そうです。はじめまして」
待ち合わせ場所へ行くと既に奏多は席に着いていて、にこやかな笑顔で迎えてくれた。そしてその笑顔を見た瞬間に、私は“ぴん”ときた。
― この人、いい…。
マッチングアプリで何人かと実際に会ったけれど、初対面で直感的にいいなと思う人は初めてだった。
「裕子さんは何を飲まれますか?」
「暑いので、アイスラテにしようかな」
「いいですね。最近毎日暑いですよね」
天気の話から始まったけれど、話せば話すほど共通点も多く、すっかり盛り上がる。
「え!奏多さんも慶應ですか?」
「裕子さんも?学年は違うけど、共通の知り合いとか絶対に多そうですね」
「どこのサークルでした?」
大学が一緒というだけで親近感がわくし、心の距離も一気に縮まる。
「裕子さんは、なんでマッチングアプリを使っているんですか?こんなに綺麗だし、話をしていても楽しいから、すごくモテそうなのに…」
「あまり飲み歩かないので、本当に出会いがなくて。そういう奏多さんのほうこそ」
「僕もですよ。仕事ばかりしていたら、完全に婚期を逃しました(笑)」
「なんのお仕事をされているんでしたっけ?」
「僕はコンサルです」
本当は1時間程度の予定だったのに、気がつけば私たちは2時間以上話し込んでいた。

しかも彼は、お会計をいつの間にかスマートに済ましてくれていた。
「いいんですか?ごちそうさまです」
「もちろんですよ。むしろすごく楽しかったです!次は…食事に誘ってもいいですか?」
「…はい!!」
こんなにカッコよくてスマートな奏多に、惚れない女性はいるのだろうか。しかも気も合いそうだ。
ホテルの外のタクシー乗り場まで出ると、むわっとした熱気に包まれる。
「…あっつ」
胸が高鳴っているせいか、暑さのせいか…。思わず髪を後ろからかきあげ、手であおいでしまった。すると、不意に奏多の視線を感じた。
「あ、すみません」
「いえいえ。髪、綺麗ですね」
急に褒められ、思わず頬が赤くなる。
そんな思いを抱えたまま、私はタクシーに乗り込んだ。でもその後もしばらく、胸の鼓動は落ち着いてはくれなかった。
Q2:男は、カウンター席で隣に座った女のどこを見ていた?
そして二度目のデート。奏多は麻布十番にある、カウンターが8席しかない高級鮨店を予約してくれていた。
この日は朝からドキドキしていた。けれども直前になって仕事の電話がかかってきて、かなりギリギリの時間になってしまった。
しかも最悪なことは続き、慌ててタクシーを拾おうと思ってもなかなか空車が来ない。このとき時計の針は18時40分をさしていたが、まだ日が照っている。タクシーを待っている間にどんどん体温が上がっていった。

ようやくタクシーが捕まったのは、結局10分後だった。
タクシーの中で汗拭きシートで汗を拭ったりメイクを直したりしたけれど、化粧はヨレてしまっている。ワンピースには汗染みまでできている。
― 最悪だ…。
でも着替えに帰る時間もないし、約束の時間をもう10分も過ぎているのでとりあえずお鮨屋さんの扉を開けた。
「遅れてすみません!!出る直前に仕事の電話がかかってきて、タクシーが捕まらなくて…」
「ううん、大丈夫だよ。大変だったね」
奏多が優しく微笑みかけてくれるけれど、汗だくの自分を見られたくない。
カウンター席に座り、飲み物が来るまでの間になんとか汗を止めようと思い、ハンディ型のミニ扇風機を使って頑張って体を冷やす。
「あっつい…」
髪の毛をかきあげ、扇風機を首まわりに当ててみるけれど、汗は止まらない。
「そんなに?大丈夫だから、落ち着いて」
ふと隣を見ると、奏多はグレーのポロシャツなのに汗ひとつかいていない。
― なんでこんな涼しい顔をしているんだろう…。本当恥ずかしい。
ファンデもヨレているし、綺麗に引いたはずのアイラインも消えているかもしれない。

とりあえずカウンターに扇風機を置いていたおかげか、汗はなんとか引いてきた。
1杯目のお酒が出てきたら化粧室に行こうと思ったけれどすぐにコースが始まってしまい、完全に行くタイミングを逃してしまった。
「裕子ちゃん、なんか今日雰囲気違う?」
「え?そうかな」
「うん。前より静かというか、なんというか…」
当たり前だ。目を合わせたくなくて、私はとにかく静かに微笑むことに徹していたから。
結局、私が化粧室で自分の顔をチェックできたのは食事の中盤になってからだった。
そこで化粧直しをして、すっかり汗もひいた私はようやく落ち着いてデートに集中できた。
「ごめんごめん…」
「ううん。今日の裕子ちゃん、なんか面白いね」
「そうかな。で、何話していたっけ?」
「今年の夏は何をしたいかって話かな」
「そうだった!私は鎌倉に行きたいな」
「鎌倉いいよね。逗子とか?」
そして何事もなく、お鮨デートが終わった。
でも結局、このデート以降奏多からの連絡はわかりやすく減ってしまった。
― あんな汗っかきな女、そりゃイヤだよね…。
でも夏だし体質だから仕方ない。今後、私はどうすればいいのだろうか…。
奏多のことをかなりいいなと思っていたので、今でもとにかく悔いが残っている。
▶前回:別れ際、女をそっと抱き寄せた男。「次は僕の家で…」と約束をしていたけれど…
▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由
▶NEXT:7月30日 日曜更新予定
男がデート中に見ていた女のとある場所とは…?

