東大生のノートの特徴とは?(写真:筆者提供)

記憶力や論理的思考力・説明力、抽象的な思考能力など、「頭がいい」といわれる人の特徴になるような能力というのは、先天的に決められている部分があり、後天的に獲得している能力は少ないと考える人が多いのではないでしょうか。

その考えを否定するのが、偏差値35から東大合格を果たした西岡壱誠氏です。漫画『ドラゴン桜2』(講談社)編集担当の西岡氏は、小学校、中学校では成績が振るわず、高校入学時に東大に合格するなんて誰も思っていなかったような人が、一念発起して勉強し、偏差値を一気に上げて合格するという「リアルドラゴン桜」な実例を集めて全国いろんな学校に教育実践を行う「チームドラゴン桜」を作っています。

そこで集まった知見を基に、後天的に身につけられる「東大に合格できるくらい頭をよくするテクニック」を伝授するこの連載(毎週火曜日配信。連載を再構成し、加筆修正を加えた新刊『なぜか結果を出す人が勉強以前にやっていること』が好評発売中)。第73回は、東大生のノートに隠された勉強効率を格段に上げる工夫について紹介します。

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東大生のノートは思考が整理しやすい

東大生は、「ノートを書く」のが得意です。


後から見返してもうまく思考の整理ができるような、綺麗で成績の上がるノートを作っていることが多いです。

今回は東大生のノートテクニックの中でもいちばん効果がある、「ノートの書き始めのテクニック」をご紹介します。

東大生は、ノートを書き始める前に、とある工夫をしているから、思考を整理しやすいのです。

まずは実物を見てもらいましょう。こちらをご覧ください。

こちらは実際の東大生のノートです。ぱっと見て、普通のノートのように見えるかもしれませんが、実は東大生らしい工夫が隠されています。

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東大生のノート(写真:筆者提供)

「Q『チャイナプラスワン』とは具体的にどのような動き?」というように、質問からスタートしているのです。

ただ説明を書くのではなく、「この国でキリスト教徒が多い理由は?」と、わざと質問の形式にしています。

もちろんこれは、授業でその指示があったわけではなく、東大生が自分で質問を作っています。

「今日は『チャイナプラスワン』について説明するよ」

「フィリピンでキリスト教徒が多いのはこういう背景があるんだよ」と先生が言ったのを、自分で質問に変換しているのです。

そしてその質問の答えを書く形で、その説明や図式が書いてあるわけです。「ノートを作る」というより、「Q&Aを作る」かのような形で思考を整理している場合が多いのです。

しかも東大生は複数の科目で、このような工夫をしています。

数学では数学の問題と解答を書いていますし、社会や理科の授業でもこのテクニックを使っています。また、どんな科目でも教科書を読みながら、「この部分の記述が答えになる問題はどんなものだろうか?」「この部分の記述が問題になって問われる場合、こういう問題が作られるのではないだろうか」ということを考えて、問題を起点にした整理ノートを作っています。

人の話を聞くときでも「問い」を作る

おまけに、勉強と関係がなくても、人の話を聞くときなどでも「問い」を作って話を聞く傾向があります。

「雨天時の対処法に関してはこのようにしてください」
→Q雨が降ったときにはどのように対処すればいいか?

「この仕事は〇〇日までに××を完成させることを目標にしてください」
→Q1この仕事の納期は? Q2この仕事の内容は?

と、こんなふうに些細なことであっても「問い」から始めるようにしている場合が非常に多く、ノートだけでなくメモにも「Q」が多く登場しているのです。

いったいなぜこれが重要なのか?「問い」について、ドラゴン桜の中で桜木先生はこんなふうに言っています。

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(漫画:©︎三田紀房/コルク)

質問を考え、なぜを問うこと。

これは、自分で思考をスタートするきっかけになるのです。

例えば、「この花の名前は〇〇だよ」と人から教えられても、たいていの場合は「ふーん」で終わってしまいますよね。それでなかなかその名前を覚えられません。

しかし、「この花の名前ってなんだと思う?」と聞かれたらどうでしょうか?

「え、なんだろう?甘い香りのする花だけど」なんて考えたうえで、「スイートピーって言うんだよ。甘い匂いがするからそう名付けられたそうだよ」と言われると、覚えられますよね。

このように、何かをただ教えられるよりも、「問い」が最初にあって、そこから思考をスタートするほうが、「考える」ということをしやすいのです。

復習の精度が圧倒的に高くなる

なぜ東大生のノートが「問い」から始まる場合が多いのかといえば、ノートを後から見直したときに、「問い」を考えながら見直すことで、「この問いの答え、なんだったっけ?」と自分で考えるきっかけができて、復習の精度が圧倒的に高くなるからです。

みなさんも、ただ本を読むよりも、問題を解いているほうが、「勉強している!」「頭を使っている!」という感覚になるのではないですか?

本を読んだり、先生の話を聞いたりするだけでは、それは「インプット」になります。情報をただ頭に入れているだけで、それだけではあまり頭はよくなりません。

その情報を、自分で言葉にしたり、問題を解くときに使う、「アウトプット」をしなければ、頭はよくならないのです。そして、「問い」を作る勉強をすることで、インプットが中心の勉強からアウトプットが中心の勉強へと転換することができるようになるというわけです。

もう1つ、このノートテクニックには効果があります。

それは、「テストで点が取りやすくなる」という効果です。

当たり前の話ですが、試験というのは質問が出て、その質問に対して答えられたら点数が取れて、その点数が高ければ合格、というものですよね。ということは、テスト勉強におけるゴールは「質問に答えられるようになること」にほかならないのです。

であれば、教科書を読んだり授業を聞いているときに重要なのは、その情報をただ覚えることではなく、「これ、テストでどうやって聞かれるんだろう?」「この部分、質問されたときにちゃんと答えられるかなぁ」と、質問を想定して勉強することなのです。

どう問われるかを考えると、成績もアップ

だからこそ、ノートに「どう質問されるか」を想定して情報を整理しておくようにすると、成績が上がりやすいのです。勉強すると同時に、試験でどう問われるか、試験で聞かれたときに答えられるかをチェックする模擬テストとその解答を作っているほうが、頭はよくなりますよね。

いかがでしょうか?ノートは頭のよさの源泉だと僕は思っています。みなさんもぜひ、このノートを書くときの工夫を参考にしてみてください。

(西岡 壱誠 : 現役東大生・ドラゴン桜2編集担当)