ウィーライドは中東諸国にいち早く進出した。写真はUAEの首都アブダビを走行する同社の自動運転タクシー(ウィーライドのウェブサイトより)

中東諸国で交通インフラへの自動運転技術の導入が進むなか、中国企業が先んじて商機をつかんでいる。

アラブ首長国連邦(UAE)の副大統領兼首相で、ドバイ首長国の首長でもあるムハンマド・ビン・ラーシド氏は7月3日、自動運転車両の路上走行を国家レベルで認める初のライセンスを、中国の自動運転スタートアップの文遠知行(ウィーライド)に与えると発表した。

「今回のライセンス発給は、UAEの未来に向けたモビリティー変革(への意思)を反映したものだ」。ラシード氏はそう述べ、ウィーライドに対する強い期待を示した。

開発企業を積極的に誘致

ラシード氏が首長を務めるドバイは、「2030年までに市内交通の25%を自動運転車両に移行させる」という目標を2016年に掲げ、自動運転技術の開発企業の誘致を積極的に進めてきた。

ウィーライドは国家レベルのライセンス取得により、UAEの国内各地で自動走行車両のテスト走行や営業運転が可能になる。同社が開発した自動運転タクシー、自動運転バス、自動運転トラックなどの車両とサービスを、順次展開していく計画だ。

自動運転技術の開発を手がける中国企業のなかで、ウィーライドはいち早く中東諸国に進出した1社だ。2021年11月にUAE政府と提携し、首都アブダビで同国初の自動運転タクシーの試験サービスをスタートさせた。


本記事は「財新」の提供記事です

また、同社は2022年1月に実施したシリーズDの資金調達ラウンドで、中国政府とUAE政府が共同設立した政府系ファンドの「中国-UAE共同投資基金」から出資を獲得。それを後ろ楯に、ウィーライドの企業価値は約44億ドル(約6250億円)に上昇した。

サウジアラビアにもすでに進出

UAEだけではない。ウィーライドはすでにサウジアラビアにも進出。サウジのAI(人工知能)ソリューション開発企業と共同で、2022年9月に同国初の自動運転バスのテスト運行を実施した。


サウジアラビアでテスト運航した自動運転バス(ウィーライドのウェブサイトより)

さらに、2022年12月にサウジの首都リヤドで開催された第1回中国・湾岸協力会議サミットに合わせて、ウィーライド副総裁(副社長に相当)の李璇副氏が現地の有力企業アジラン&ブロス・ホールディングスのアリ・アルハザミCEO(経営最高責任者)と提携の覚書に調印。自動運転技術の導入を共同で推進することに合意した。

(財新記者:余聡)
※原文の配信は7月4日

(財新 Biz&Tech)