BYDのブラジル進出は現地社会の期待を集めている。写真はバイーア州での調印式典(BYDブラジル法人のウェブサイトより)

中国のEV(電気自動車)最大手の比亜迪(BYD)は7月5日、南アメリカのブラジルに3つの工場を建設すると発表した。

1つ目の工場では電動乗用車の組み立て、2つ目ではリン酸鉄系リチウムイオン電池の材料加工、3つ目では電動バスおよび電動トラックの車台の生産を行う。

海外2カ所目の乗用車生産拠点

それらのうち、電動乗用車工場の年間生産能力は15万台、稼働開始は2024年後半を目指している。BYDにとっては、現在建設中のタイ工場に続く海外で2カ所目の乗用車の生産拠点となる。なお、タイ工場の年間生産能力も同じく15万台で、2024年に稼働する予定だ。

ブラジルの3工場はバイーア州の工業団地に建設され、総投資額は30億レアル(約899億円)。この工業団地にはもともとアメリカ自動車大手のフォード・モーターの工場があったが、2021年に閉鎖された。

その後、バイーア州政府は新たな進出企業の誘致に動き、2022年にBYDがフォードの旧工場の買収に向けて交渉していることが明らかになった。だが、交渉の進捗については開示されていなかった。

新たな動きが見えたのは2023年4月、ブラジルのルラ大統領が中国を訪問した時だ。

ルラ大統領はBYD董事長(会長に相当)の王伝福氏と上海で会談し、「中国企業がブラジルに投資し、低炭素化の促進に協力してくれるのを歓迎する」と述べた。それから3カ月弱を経て、BYDのブラジル進出が正式に発表された格好だ。


バイーア州での式典ではBYD製のEVが展示された(同社ブラジル法人のウェブサイトより)

BYDの経営戦略の特徴は、車載電池から完成車までEVを一貫生産する「垂直統合」体制にある。同社はそれを南アメリカでも踏襲しようと目論んでいる。

チリに電池材料工場を建設

リチウム資源が豊富なチリでは、BYDの現地子会社が2023年4月、チリ政府から「リチウム生産企業」の認可を取得した。これに伴い、BYDはチリにリン酸鉄系リチウムイオン電池の正極材料の工場を建設し、2025年末の生産開始を目指している。


本記事は「財新」の提供記事です

BYDは、チリでの工場建設に2億9000万ドル(約419億円)以上を投じる計画だ。その見返りとして、同社はチリのリチウム生産大手のSQMから、電池原料の炭酸リチウムを優遇価格で調達する権利を獲得した。

(財新記者:戚展寧)
※原文の配信は7月5日

(財新 Biz&Tech)