7月28日のコマツなど、いよいよ日本企業の決算も本格化。企業業績など日本株を決定する「4つの要素」で見ると、日経平均株価は今後どうなるのか(写真:ブルームバーグ)

株価は、業績・需給・人気の3要素で決定されるともいわれる。日本株の場合は、これら3つに米国株が加わった4要素で決定されるといえる。もちろん、筆者はその米国株も業績・需給・人気の3要素で決定されると思っている。

さて、日経平均株価は年初から若干の上げ下げを繰り返しながら約30%上昇したあと、それまでタッチさえしなかった25日移動平均線を割り込み、初めての調整局面に入った。

前回の「日経平均株価が将来5万円台になっても驚かない」で述べたような大相場の可能性を考えた場合、この調整局面は登り階段の1つの踊り場と考えられるが、ちょうどいい休憩時間にもなる。そのため、ここであらためて、日本株における「上記の4要素」を冷静に点検してみたい。

米国株の調整局面は完全に終わった

まずは米国株だ。先週末(7月21日)のNY(ニューヨーク)ダウは前日比わずか2.51ドルと小幅高ではあったが、2017年8月以来、約5年11カ月ぶりの10営業日続伸となった。もちろん年初来高値だ。

一方、ナスダック総合指数は同30.50ポイント安、S&P500種指数は同1.47ポイント高とマチマチの引けだった。だが、両者とも年初来の高値圏にあり、明らかに米国株の調整局面は終わったと考えられる。

アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)の利上げも最終段階にさしかかっており、同国経済もほどよい景気指標が多く出ていることを考えると、急激な悪化を招かずに済むソフトランディング(軟着陸)が一段と確かになってきたといえよう。

さらに重要なことだが、6月のCPI(消費者物価指数)は前年同月比+3.0%と、予想以上のペースで5月の同+4.0%から低下し、2021年3月以来約2年ぶりの3%台に戻った。一方で、6月雇用統計における平均時給は同+4.4%となっており、5月の修正値と一致するなど、高止まりしている。

つまり、アメリカではCPIを上回る賃金上昇となり、安定的経済成長の形を回復しつつある。これはかつて何度か見られた「ゴルディロックス(適温)相場」の再来さえ感じる。当然、日本株にとっては大きなプラス材料だ。

日本の企業業績や需給はどうか

さて、次は日本企業の業績だ。6月の日銀短観の大企業・製造業の2023年度の想定為替レートは1ドル=131円55銭、1ユーロ=130円02銭となっている。ということは、現在の為替が1ドル=141円前後、1ユーロ=157円前後であることを考えると、日本の製造業の業績は予想以上のものとなるだろう。

また、日銀短観では大企業・製造業DIも「プラス5」と、7四半期ぶりに上向き、その勢いも確かなものになるだろう。一方、非製造業においても、6月の訪日外国客数は207万3300人(推計)と、5月の189万8900人を大きく上回り、2020年2月以降で初めて200万人を突破した。もちろん、総じて業績も問題なさそうだ。

さらに、日本建設業連合会が5月26日に発表した4月の加盟93社の国内建設受注額は、前年同月比20.1%増の1兆1085億円となった。そのうち、民間受注額は同27.1%増の8399億円である。とくに不動産業からの受注が増えている。

これはインフレ相場の特徴だ。また、電気機械産業からの受注額も過去10年の4月単月で最高となっており、企業の2023年度の設備投資の回復を裏づけているといえそうだ。

3つ目の需給はどうか。日本銀行が公表している6月のマネーストック「M3」(現金と預金などの合計)は、5月から3.7兆円増えて1594.6兆円と過去最高となった。また、前年同月比でも+2.1%と、昨年9月から安定的に2%台の増加が続いている。これは「お金ジャブジャブの状態」だ。

また、東京証券取引所の「株価改革」では、ROE(自己資本利益率)の向上が欠かせない。もちろん、取引相手のあることゆえ簡単ではないが、企業だけの政策変更で簡単に株価を上げることのできるのは「自己株消却」だ。お金が増え、株式が減る。やはり、需給関係も良好な状態が続くといえそうだ。

日銀株が急上昇したワケ

最後の人気はどうか。先週の20日、日経平均が前日比405円安になった中で、20%以上も上げていた「01銘柄」があった。ほかでもない、日本銀行(8301)だ。この日の出来高は4600株だったので、全員1単元ずつ買ったと仮定しても46人、2単元では23人の参加者しかいないことになる。

実は過去においても、相場にインフレの匂いがしてくると日銀は大きく値を飛ばす習性があることで知られる。こうした現象は、賃金上昇を伴う脱デフレ相場の人気の高まりとも読める。

実際、株式人気を高めている政府のNISA(少額投資非課税制度)政策は、2024年から生涯で使える投資額が1800万円に増え、否が応でも株式人気が上昇するだろう。

以上、株価をめぐる4要素を点検したが、この4つを見てもわかるように、踊り場のあとは再び「登りの階段」があると考えられる。

最後に今週の予定を確認しておこう。「中銀ウィーク」と言われるとおり、25〜26日はFOMC(アメリカ連邦公開市場委員会)、27日はECB(欧州中央銀行)理事会、27〜28日は日銀金融政策決定会合と当局の金融政策会合が連続する。筆者はFOMC、ECBの利上げがそれぞれ0.25%と0.5%、日銀は変更なしと思っているが、株価はその先を織り込み始めている。

一方、日米の企業決算も佳境に入る。すでにアメリカでは中国経済の影響を受けて明暗が分かれており、個別企業の株価は激しい動きをしている。金融株やジョンソン&ジョンソンなどが買われる一方、テスラは売られた。

今週はアメリカではGE、GM、3M、マイクロソフト、ボーイング、メタ、コカ・コーラ、AT&T、フォード、マクドナルド、P&Gなど主役級の企業の発表が残っている。

一方、日本でもアドバンテスト、信越化学工業、武田薬品工業、中外製薬、オムロン、キヤノン、ヤクルト、OLC、コマツ、日立、NEC、キーエンス、デンソー、ファナックなどと続く。

また、企業業績だけでなく、アメリカの指標では重要なものが2つある。4〜6月期GDP(国内総生産)と6月の個人消費支出だ。前者は1〜3月期の前期比+2.0%と大きく変わらず、後者は5月の前年同月比3.8%上昇から若干低下するとみている。

重要な週ではあるが、4要素の解説のとおり、日経平均は7月3日の高値3万3753円で相場が終わったとも思えない。「いい買い場が続く」と考えれば、ここでじっくり仕込むこともできる。焦らずゆっくり行こう。この大相場の先は長い。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

(平野 憲一 : ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト)