注文で一目置かれる「クラフトビール7種」覚え方
世界記憶力グランドマスター池田氏による、クラフトビールの覚え方(写真:Nuclear_lily/PIXTA)
耳馴染みのない専門用語、難解な公式、膨大な英単語、数分間のスピーチ原稿やプレゼンの台本、複雑な歌詞やセリフ、何人もの顔と名前……。
大量に覚えなければいけない課題やテキストを前に圧倒され、絶望した経験が皆様にもあるかもしれません。そんな方にオススメしたいのが「A4・1枚記憶法」。
A4・1枚の「魔法のシート」に書くだけで、覚えにくいものも大量に記憶できる画期的なメソッドです。
考案したのは、記憶力日本一を6度獲り、日本人初の「世界記憶力グランドマスター」の称号を得た池田義博氏。
池田氏は、40代半ば「ド素人」の状態からたった1年で記憶力日本一になりました。
その体験から生まれた「超効率的なシート学習法」をまとめたのが新刊『まるごと覚えて 頭も良くなる A4・1枚記憶法』で、同書は発売後たちまち重版がかかるなど、大きな話題を呼んでいます。
以下では、その池田氏が「代表的なクラフトビールの覚え方」について解説します。
記憶法を知ると、教養学習がはかどる
実用的な知識以外にも、人生を彩り、豊かにしてくれる情報があります。
その代表格が、食にまつわる情報です。
誰かに話すことで、その場が盛り上がる。
また一人で知識を集め、脳内でそれを体系化していくことでも楽しめる。
得た食の知識をもとに、地域やレストランで実際に食べて、楽しむ。
学んで、すぐに試すことができる。それが食にまつわる知識の素晴らしい点でしょう。
これといった目的や特別な期限がなくても、知識欲のおもむくままに、情報を仕入れると、プライベートの時間や自分の人生が豊かになります。
それこそが教養であり、人生の醍醐味でもあります。
気軽に「食の教養をつけたいな」と思い立ったビジネスマンにオススメしたいのがお酒の教養です。お酒の話題は友人や同僚とだけでなく、世界中の人と楽しむことができます。
「でも、いったい何から始めればいいの?」という方も多いでしょう。
そういう方は、暑い季節にぴったりな、クラフトビールについて知ってみてはいかがでしょうか。
クラフトビールとは直訳すると「手作りのビール」。様々な小規模醸造所(ブルワリー)で、ブルワーと呼ばれる職人が情熱を込めて造ったビールを指します。造り手の顔が見える、個性的なビールと定義できるでしょう。
今はコンビニや近所のスーパーで、クラフトビールを手軽に買える時代です。毎週1本ずつでも新しい種類を試して、世界を少しずつ広げていきましょう。
「学習」を転移させる
このように、「クラフトビール」という1つのジャンルに絞って知識を広げることには、大きなメリットがあります。
その世界をざっくりと概観することで、違う世界の全体像を把握しやすくなるという点です。
たとえばクラフトビールをざっくりと知ると、「次は日本酒の世界をおおまかに調べてみよう」という気になるかもしれません。またクラフトビールとの違いや類似性を見つけることで、より日本酒を理解できるかもしれません。
さらにはシャンパン、ウイスキーなど様々なジャンルにまで、興味が広がっていくかもしれません。はたまた「お酒は、やはり苦手だ」という場合。ノンアルコール系のお茶やコーヒーなどについて調べたくなるかもしれません。
このように、「前に学習したこと」がその後の学習に影響を及ぼすことを、学習心理学の言葉で「学習の転移」といいます。
たとえば「サッカーを練習したことのある人が、その後フットサルを始めたら、比較的早く上達できた」「トロンボーンを吹いていたので、トランペットを少し練習しただけでうまく吹けるようになった」というような現象のことです。
自身の学習がどのように転移するかは、予想できませんが、まずは入り口として、代表的なクラフトビールを7種類覚えてみましょう。
ここで重要なのは、頑張りすぎないこと。
たとえば、クラフトビールの種類をいきなり何十種類も覚えようとする必要はありません。
それよりも「7種類を覚える」という成功体験を積んで、自信をつけることを推奨します。
7種類知っておくだけでも、飲み会の注文時に同僚や上司から一目置かれるかもしれません。
そこから、クラフトビールをさらに覚えるもよし、全く異なるジャンルの食の知識を身に付けるもよし。
しかしいずれにせよ、最初のハードルは低くしておくべきです。
ちなみにこの7という数字。「マジカルナンバー7」と呼ばれ、短期記憶で覚えられる記憶の容量とも言われています(正確には7±2)。
その点からも、まず7種類覚えるということは、無理のない情報量といえます。
代表的な7種類のクラフトビールとは
いったいどれくらいの情報量を覚えれば、いいのでしょうか。
検定試験などに挑戦するわけではなく、純粋な趣味として、また教養を身に付けるために覚える場合、次の表を「なんとなく」覚えたら、よしとしましょう。
➀ピルスナー (Pilsner)
1842年に現在のチェコで誕生した、黄金色のビール。国内の大手ビールメーカーもお手本にしたので、日本人にとっては馴染みが深い。 ホップの香りが程よく、喉越し爽快で、苦みのキレもいい。他のビールと比較するとやや軽いテイスト。
➁ペールエール (Pale Ale)
イギリスのバートン・オン・トレントという町から生まれた。当時は濃色ビールばかりだったため、ペール(=淡い)エールと名付けられた。ピルスナーより、ホップの香りもモルトのしっかり感も強い。クラフトビールの入門編として飲んでみるのがオススメ
➂IPA(アイピーエー)(India Pale Ale)
IPAとは、India Pale Aleの頭文字を取ったもの。18世紀、インドがイギリスの植民地だった時期、インドに滞在するイギリス人にペールエールを送るために造られた。防腐剤としてホップを大量に投入したため、香りと苦みがとても強くなった。香りは柑橘系のものが多く苦いが、そこが人気。
➃ヴァイツェン (Weizen)
ドイツの伝統的なビール。 小麦麦芽を50%以上使ったバナナのようなフルーティーな香りと、苦みをほとんど感じない柔らかな味わいが特徴。色はやや不透明。小麦本来の旨みが強い。
➄フルーツビール (Fruit Beer)
フルーツを麦汁(ビールができる前の液体)に漬け込んだり、果汁を加えて造るビールのこと(ここでいうフルーツとは、イチゴやフランボワーズ、リンゴ、桃、梨など)。
➅スタウト (Stout)
ロンドンのパブで考案されたビール「ポーター」の改良版。アイルランドのギネスビール創業者、アーサー・ギネス氏が生みの親。 ナッツやチョコレート、コーヒーのような香りが特徴の黒系のビール。しかし、見た目とは裏腹に濃くなく、苦みも少ない。
➆バーレーワイン (Barley Wine)
「ワイン」という名称だが、あくまでビール。バーレー(大麦)を用い、高アルコール(高いものは12%〜13%)で、多くは熟成されてから出荷される。フルーティーな香りで知られる。
もちろん「この表を全て丸暗記しましょう」と提案したいわけではありません。
「1種類のクラフトビールにつき、大きな特徴を1つ言えれば上出来!」という方針で、最初は十分でしょう。
小さく覚えた記憶に紐付くようにして、記憶は雪だるま式に増えていきます。
一番最初の記憶を、小さく、確実に行うことに集中しましょう。
そこで前の表の情報を最大限にまでそぎ落として、次のような表に凝縮させました。「1種類のクラフトビールにつき、1つの大きな特徴」を抽出し、覚え方(語呂合わせなど)も作成した表です。
➀ピルスナー
「昼っすなー(ピルスナー)! 日本のビールは美味いっすなー!」(=「国内大手ビールメーカーも手本にした味」という特徴を暗記)
➁ペールエール
ペール(=淡い)だけれど、ピルスナーよりしっかりした味
➂IPA(アイピーエー)
インド(India)から送られたペールエール(Pale Ale)
➃ヴァイツェン
小麦は売店(ヴァイツェン)で売っている(=「小麦麦芽からできている」という特徴を暗記)
➄フルーツビール
フルーツからできたビール
➅スタウト
スター(=スタ)が黒いビールを飲んで歌うと(=ウト)ギネス記録(=アーサー・ギネス氏)
➆バーレーワイン
ビールだけど高アルコールだとバーレー(大麦)てる。
志は高く、でも自分へのハードルは低く
こちらの語呂合わせ、単に読むだけでなく、イラスト化するのもオススメです。言葉をイメージに置き換えることで、情報が圧縮され、多くの情報を脳に入れることができるようになります。
イラスト描きが「意外に楽にできた」「下手なイラストしか描けなかった」という経験も、自分の感情を揺さぶることになり、長期記憶になりやすくなるのです。
またこのように、1つのジャンルを新たに学ぶときは「暗記の完成度」をうんと低めに設定することが大事です。
そして「少ない数の項目の記憶に挑戦→覚えた!」という成功体験を積み重ね、学習を転移させていきましょう。
そうやって少しずつでも教養の幅を広げていくことが、あなたの人としての深みと魅力を確実に倍増させてくれます。
(池田 義博 : 記憶力日本選手権大会最多優勝者、世界記憶力グランドマスター)