荒川区にあるJR常磐線(以下常磐線)三河島駅は、都内のJR駅としては乗降客数の少ない、知る人ぞ知る穴場駅のひとつ。JR山手線などが利用できる日暮里駅徒歩圏でもあり、2015年に事業が完了した三河島駅前南地区再開発に続き、北側でも公共施設を含む再開発が予定されています。

常磐線三河島駅。高架下にあり、改札は一ヶ所と分かりやすい駅です(筆者撮影)

ターミナル日暮里駅の隣にある三河島駅

東京都荒川区にある日暮里駅から千葉県の北西部、茨城県、福島県の太平洋側のいわゆる浜通りエリアを経由して宮城県岩沼市の岩沼駅に至る長大な常磐線沿線で、始発駅日暮里駅の隣に位置するのが三河島駅(荒川区)です。

日暮里駅北改札前。ここに写っているだけでもJR京浜東北線・山手線、日暮里・舎人ライナーがあり、それ以外に京成本線、常磐線が利用できます(筆者撮影)

日暮里駅は京浜東北線、山手線、常磐線に加え、京成本線、日暮里・舎人ライナーが通るターミナル駅です。三河島駅との間はルートにもよりますが、10数分ほど。徒歩圏と言っても良いほどの距離にあり、実際、地元では歩いて、あるいはバスを利用して日暮里駅まで出る人も多いと聞きました。特に都心部に向かう人、成田空港に行く人であれば日暮里駅利用のほうが便利かもしれません。

乗降客数は少ないが、人通りは多い

日暮里駅徒歩圏と言っても良いせいか、三河島駅自体は23区内にあるJR駅の中でも乗車人員が少なく、JR東日本が公表している各駅の乗車人員でコロナ前の2019年の数字を見ると1日1万1,461人となっています。これは京葉線の越中島駅(5,910人)、京浜東北線の上中里駅(8,041人)、宇都宮線・高崎線の尾久駅(10,360人)に次ぐ数字で、乗車人員だけをみると寂しい駅のように思われます。

駅の改札の前がすぐに尾竹橋通りになっており、交通量があります(筆者撮影)

ですが、現地に行ってみると、駅の改札の前を尾竹橋通りが走り、交通量も人通りも多く、通り沿いにはさまざまな店が並んでおり、その一方でのんびりした雰囲気もある街。寂しいという印象はまったくありません。

右手がすでに開発が終わったエリア。周囲に高い建物が少ないため、非常に目立ちます(筆者撮影)

特に駅の隣、南側では2015年に事業が完了した再開発で生まれた34階建てのタワーマンションが建っており、広々とした空間が誕生しています。駅のホームから見下ろすと、駅との間には緑も多いようです。

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駅前を安全に、にぎやかにと再開発施行

荒川区のホームページによれば、以前の三河島駅前周辺は駅前にふさわしい土地の有効利用、高度利用が十分に図られていなかったそうで、駅前商業地としての活気やにぎわいが不足。

加えて、広場等のゆとりある歩行者空間が少なく、幅員の狭い道路が多いなど防災上の懸念も抱えていたそうです。そこでこれらの課題を解決するため、駅の南側、北側の両側で市街地再開発が計画され、南地区では2004年に三河島駅南地区市街地再開発準備組合が設立され、前述のように事業が行われました。

元小学校跡地を中心に約1.5ヘクタールを開発

これから建設されるのが駅前北地区。南地区よりも広い敷地です(出典:三河島駅前地区再開発施行区域図 荒川区)

今回の三河島駅前北地区でも、南地区と同年に三河島駅北地区市街地再開発準備組合が設立され、2023年2月には組合設立が認可されました。

駅のホームから見た開発予定地。もともとは小学校があった場所が広場となっており、その周辺が開発される計画です(筆者撮影)

南地区とは常磐線を挟んで反対側が開発予定地で、現在その中央には大きな広場があります。ここにはもともと荒川区立真土小学校がありましたが、1989年に第四日暮里小学校と合併、新しくできたひぐらし小学校の新校舎ができるまでは暫定的に使われていましたが、その後に解体。現在は真土小思い出広場として使われています。

開発予定地は駅のホームからもよく見える場所で、南地区同様に本当に駅に近い場所での開発であることが分かります。しかも、開発予定地は南地区よりも広く、約1.5ヘクタールという区域になっています。

開発予定地内。路地というほどではありませんが、幅員のあまり広くない道路が多く、建物も古いようです(筆者撮影)

また、周辺を見ると古い木造のアパートなどがある地域であることもうかがえます。歩いてみると曲がった細い道などもあって、再開発の目的として防災上の理由が挙げられているのも分かります。

駅前に約760戸、幅広い年代が住むまちに

では、どのような計画になっているのでしょう。三河島駅前北地区市街地再開発組合の設立認可を伝える東京都の報道発表資料によると事業効果としては3点挙げられています。

多目的アリーナに住宅も

一つは、駅前にふさわしい複合市街地の形成です。再開発では商業、業務・公益施設(多目的アリーナ)などの集積とともに、良好な都市型住宅を供給するとなっており、さまざまな機能が予定されていることが分かります。

災害時の避難所としの機能も

二つ目の効果は不燃化、狭隘道路の拡幅や浸水対策などによる地域の防災性の向上です。再開発エリアには防災備蓄倉庫が併設され、2階レベルに多目的アリーナを配することで浸水時における避難スペースとして機能させる、となっています。

東京の下町エリアにある荒川区は浸水深には差があるものの、区が示している荒川流域において想定しうる最大規模の降雨があり、荒川の堤防が複数個所決壊した場合のハザードマップを見るとほぼ全域に浸水の可能性があります。今回の再開発ではそれを意識、安全に避難できる場所が作られることになっているのです。

緑、広場の創出も

三つ目の効果は安全で快適な歩行者空間を作ること。建物外周には歩道上空地や広場が整備され、緑化が図られることになっており、これまで以上に豊かな環境が整備されることになるわけです。また、外周道路は無電柱化も図られます。

単身からファミリーまでが対象

右側が尾竹橋通りになっており、通り沿いには高層棟、その奥に公的施設が造られる計画になっています(出典:東京都 報道発表資料「三河島駅前北地区市街地再開発組合の設立を認可します」の計画概要より)

配置図、イメージパースを見ると、尾竹橋通り沿いに地上43階、約160メートルの高層棟が建ち、その奥に公共施設として多目的アリーナが描かれています。駅に近い住宅になるわけで、荒川区ホームページにある三河島駅前北地区第一種市街地再開発事業の事業計画の公表によると、予定されている住宅は全体で約760戸。

イメージパース。建物の周囲には緑地、広場などが作られる計画になっていることが分かります(出典:東京都 報道発表資料「三河島駅前北地区市街地再開発組合の設立を認可します」の計画概要より)

うち約600戸は一般住宅で、全戸数の17%程度は1K、1LDK、同様に39%程度は2LDKが予定されています。条件の良好な角部屋や最上階等に大型住戸を想定、44%程度を3LDK、4LDKとしています。

それ以外の約160戸は高齢者向けのシニア住宅が予定されており、全戸数の30%程度は1K、1LDK、残りは2LDKが想定されています。住宅が配されるのは4階から43階で、11階まではシニア住宅、それ以上が一般住宅となります。

スーパーや子育て支援施設の計画もあり

また、1階から3階、4階、12階と高層階の一部に住宅共用施設が造られるのだとか。多世代が住む、さまざまな共用部のある住宅が想定されているようです。

建物内には地域の生活利便性を向上させるスーパーマーケットなどの一定規模の店舗や生活サービス施設、子育て支援施設等を導入することも考えられています。

着工は2024年12月、竣工は2028年3月(いずれも予定)となっています。

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商店街に銭湯も多いのどかな地域

では、以下、三河島駅周辺がどのような場所なのか、現地をレポートしましょう。

通り沿いの商店街には飲食店が多数

駅の前の横断歩道から南側を見たところ。右側手前の茶色い建物が再開発で生まれたタワーマンションの低層階です(筆者撮影)

駅を降りると目の前には尾竹橋通りが南北に走っており、常磐線から南側の尾竹橋通り沿いは親交睦商店街という商店街になっています。1947年に創設された歴史のある商店街で現在の加盟店数は組合員、協力店合わせて50店舗ほど。

通り沿いには店舗のほかにマンションも多く並んでいます(筆者撮影)

歩いてみるとドラッグストアや飲食店、家電販売店、衣料品店などが並び、おもしろいところでは包丁を研いでくれる工具店も。数としては飲食店、しかもエスニック系の店舗が多いようです。

ものづくりをする人を支援する日暮里繊維街も身近

日暮里繊維街。布を扱う店だけでなく、付属品類も含め、多様な店が並んでいます(筆者撮影)

尾竹橋通りをもっと南へ向かうと日暮里中央通りにぶつかります。ここを右折すると突き当りが日暮里駅。この通り沿いは日暮里繊維街という布や革、ボタン、型紙などファッション、手芸、ものづくりに必要な材料を売る専門店が集まっている一画。

こちらのお店はビーズなどを扱っていました。店頭を見ているだけでもあれが作れる、これも作れると楽しい気分になりました(筆者撮影)

大正から昭和の終わり頃までは卸売店が中心でしたが、時代とともに小売り対応する店も増えています。自分や家族のために何か作りたい、ハンドメイドを趣味にしている人にとっては近くにあると楽しい街と言えそうです。

もちろん、さらにその先の日暮里駅周辺にはさまざまな店舗、飲食店などが集まっていますから、そのときに買いたいもの、食べたいものに合わせて行先を変えるという使い方ができます。

生鮮食料品店がそろう荒川なかまち通り商店街

こちらは細い通りで、個人が営んでいる小規模な店舗が中心でした(筆者撮影)

もう一つ、常磐線を挟んで反対側、尾竹橋通りから斜めに入ったところには荒川なかまち通り商店街があります。親交睦商店街に比べると野菜や肉、魚など生鮮食料品店があるのが特徴で、中ほどにはスーパーもあります。毎週土曜の大売出しのほか、歳末やお中元時期の福引、ハロウィンイベントなども開催されているそうです。

通り沿いではほかにもマンション建設が進行中

再開発エリアを挟んで向かいで進んでいるマンション建設。ちなみにその右側のマンションには魚、肉を扱う店が入っており、意外なところにと驚きました(筆者撮影)

これらの商店街を中心に街を歩いてみて気づいたのは、尾竹橋通り沿いで複数のマンション建設が進んでいること。再開発エリアの向かい側では15階建て、全56戸(販売戸数は53戸)のマンションの建設が進んでおり、完成予定は2024年10月下旬。

日暮里中央通りから尾竹橋通りの、三河島駅方向を見たところ。右手建設中のマンションはすでに完売していました(筆者撮影)

それよりも日暮里駅寄りでは地上12階建て、全44戸のマンションが2024年3月完成を目指して建設中で、こちらは完売したと掲出されていました。

徒歩圏に複数の銭湯が集積、お祭りも多数

荒川なかまち通り商店街にある喜楽湯。駅から歩いても数分とかからない場所にあります(筆者撮影)

もうひとつ、気づいたのは駅から徒歩圏内に銭湯がいくつもあること。前述の荒川なかまち通り商店街沿いにはサウナもある喜楽湯が、親交睦商店街から東側に入ったところには2023年4月に再開した帝国湯、堂々とした富士山のペンキ絵で知られる雲翠泉など。

こちらは1年ほど休業していたものが再開したことで話題になった帝国湯。この周辺にはクラシカルな銭湯がいくつも点在しています(筆者撮影)

日暮里駅近くや日暮里中央通り沿いにもあることを考えると、近場で温泉気分が楽しめる立地と言えそうです。

南千住あたりからだとずいぶん遠い気がしますが、素盞雄神社は荒川区内でもっとも氏子区域が広い神社なのだそうです(筆者撮影)
こちらは元三島神社例大祭のチラシ。歩いて10数分の日暮里駅よりは遠いものの、元三島神社のある鶯谷駅も歩いていけないことはない距離です(筆者撮影)

さらにこの街らしいと思ったのがお祭りの告知。鶯谷駅近くにある元三島神社の例大祭、南千住駅に近い素盞雄神社の天王祭のチラシがあちこちに貼られており、荒川区は意外に祭りの多い地域なのです。地域の人に混じって祭りに参加するのも楽しそうです。

公共施設、公園なども歩ける範囲に点在

荒川区役所。建物の前は公園になっており、彫刻があちこちに配されています(筆者撮影)

郵便局や図書館などの公共施設も三河島駅から徒歩10分ほどに点在しており、荒川区役所も10分ちょっと。区役所近くには荒川区民会館(サンパール荒川)や荒川公園があり、さらに少し北側には三河島公園、荒川自然公園なども。

三河島駅周辺にも真土公園、尾竹橋通りから少し入ったところには日暮里公園もあるものの、大きな公園はそれほど多くない地域なので区役所周辺に広い公園があるのはうれしいところです。

人気の谷根千もお散歩圏

日暮里駅からアプローチする人も多い谷中銀座。休日にぶらぶら行ける範囲に楽しい場所があります(筆者撮影)

日暮里駅までが徒歩圏ということは、その先にあるいわゆる谷根千エリアも十分にお散歩圏。桜の名所である谷中霊園や寺町、さらに谷中銀座などといった買い物にも観光にも楽しい場所が近隣にあるのは、生活を豊かにしてくれそうです。

三河島駅、日暮里駅を使い分ければ都心へも、成田空港などにも便利な立地であることに加え、地元、徒歩圏内に日常生活や休日に彩りを添えてくれる場がある街、三河島。生活を大事にした住まい選びを考える人なら一度訪れて街の様子をチェックしてみてはいかがでしょうか。

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