東大推薦合格者から学ぶ「頭のいい人」の思考法
(漫画:©︎三田紀房/コルク)
記憶力や論理的思考力・説明力、抽象的な思考能力など、「頭がいい」といわれる人の特徴になるような能力というのは、先天的に決められている部分があり、後天的に獲得している能力は少ないと考える人が多いのではないでしょうか。
その考えを否定するのが、偏差値35から東大合格を果たした西岡壱誠氏です。漫画『ドラゴン桜2』(講談社)編集担当の西岡氏は、小学校、中学校では成績が振るわず、高校入学時に東大に合格するなんて誰も思っていなかったような人が、一念発起して勉強し、偏差値を一気に上げて合格するという「リアルドラゴン桜」な実例を集めて全国いろんな学校に教育実践を行う会社「カルペ・ディエム」を作っています。
そこで集まった知見を基に、後天的に身につけられる「東大に合格できるくらい頭をよくするテクニック」を伝授するこの連載(毎週火曜日配信)。第68回は東大の推薦入試で問われる思考力について西岡氏が解説します。
この連載のほかの記事はこちらからご覧ください。
東大には、推薦入試のシステムがあります。
通常は英語や国語・数学などの試験でいい点を取らないと合格できませんが、推薦入試では試験以外の項目が評価されます。
推薦入試では共通テストの成績も評価されますが、それに加えて、高校時代の課外活動や学術的な実績・グループディスカッションやプレゼン、さらに直接東大の先生と面談し、そこでの評価によって合否が決まるのです。
推薦入試ではどんな思考力が求められる?
さて、そんな推薦入試で、東大の先生は受験者にどんな質問をして、どんな能力を測っているのでしょうか? 今回は東大の推薦合格者30人以上に話を聞いて見えてきた、「東大が考える頭のよさ」についてお話ししたいと思います。
結論から言うと、東大の推薦入試では「広い視野で物事を考えられるかどうか」が問われます。一方的ではなく、複数の立場に立って考えられているかどうかが評価されるのです。
まず、「広い視野」についてお話しするために、こちらのドラゴン桜の漫画を読んでみてください。
※外部配信先では漫画を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください
(漫画:©︎三田紀房/コルク)
(漫画:©︎三田紀房/コルク)
(漫画:©︎三田紀房/コルク)
(漫画:©︎三田紀房/コルク)
(漫画:©︎三田紀房/コルク)
桜木先生が、「物事を広い視野で捉えること」について触れていましたね。
この、「宇宙から物事を見るように広い視野を持つこと」は、実は推薦入試でも求められるものなのです。
例えば、法学部の推薦入試の問題では過去にこんな問題が出ていました。
「各種イベントのチケットの転売規制について、あなたは、どのように考えますか。『チケットの転売』を規制することには、誰にとって、どのような意味をもつのか、また、それにはどのような限界や問題点があるかについて、議論してください」
これは非常に意義深い問題です。チケットの転売という、一見すると簡単なテーマを選んでいますが、その内容として「誰にとって、どのような意味を持つのか」と書いています。お客さんの立場から「規制を加えたほうがいいと思う」というだけではいけない問題なのです。
いろんな立場に立って考える
例えば興行主にとってはチケットの転売はプラスだと言えるのか、マイナスな面があるとしたらどんなポイントなのか、国として転売を規制することにはどんな意味があるのか、やむをえない事情でその日コンサートに行けなくなった人にとってはどんな意味があるのか、何としてでもコンサートに行きたい人にとってはどんな意味があるのか、そういう「広くいろんな立場に立って物事を考えること」が求められているわけです。
この問題以外にも、東大の推薦入試では、「いろんな立場に立って考えること」が求められることが多いです。
面接でも「あなたの意見に対して、この立場の人はどう考えると思いますか?」と質問したり、小論文のテーマでもこの問題と同じように複数の立場に立って考えることを求められます。
「いろんな視点・立場に立って物事を考える」というのは、「広い視野を持っている」というのと同義だと思います。賛成の立場からも反対の立場からも物事を捉え、複数の目線で物事を見ることができるということは、視野が広く、思慮が深いことを示しています。
独りよがりでなく、複数の目線に立って物事をとらえるというのは、確かに「頭のいい人」の特徴だと言えるのです。
自分の意見を考えるときにも、「こう考える人もいるかもしれないけれど、それでも自分はこう思う」と譲歩するような言い方をしていると、意見に説得力が出ますよね。
このように、「広い視野」を持てるよう努力することは重要なことだと言えるのではないでしょうか。
読者のみなさんもぜひ、いろんな立場に立って物事を考える癖をつけてみてください。
(西岡 壱誠 : 現役東大生・ドラゴン桜2編集担当)