目黒記念を制したヒートオンビート(撮影:下野雄規)

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【栗山求(血統評論家)=コラム『今日から使える簡単血統塾』】

◆先週の血統ピックアップ
・5/28 目黒記念(GII・東京・芝2500m)

 絶妙のペースで逃げたディアスティマをゴール直前でヒートオンビートがアタマ差とらえました。これまで重賞で2着3回、3着3回となかなか勝てなかったのですが、テン乗りのレーン騎手がうまく導き、6歳にして重賞初制覇を果たしました。父キングカメハメハは先週のグロリアムンディ(平安S)に続いて2週連続重賞制覇。半兄ラストドラフト(父ノヴェリスト)は京成杯を勝ち、半弟シュタールヴィント(父ロードカナロア)は京都2歳Sで4着という成績があります。母マルセリーナは桜花賞とマーメイドSを制した名牝で、繁殖牝馬としても優秀です。

 本馬はラストタイクーン3×4というインブリードを持ちます。ラストタイクーンはダービー馬タスティエーラの3代父で、その父系はダークエンジェルやメーマスなど通じ、ヨーロッパのスプリント~マイル路線で存在感を増しています。

◆今週の血統Tips
 ダービー馬タスティエーラの父系をさかのぼると、20世紀最高の種牡馬といわれるノーザンダンサー(1961年生)に到達します。欧米ではノーザンダンサー系が大繁栄しており、アメリカのケンタッキーダービーは直近10年間で3頭、仏ダービーは6頭、愛ダービーは9頭、英ダービーに至っては10頭の勝ち馬すべてがノーザンダンサー系で占められています。

 しかし、日本においてはかなり希少で、昨年までの直近10年間はゼロ。2006年のメイショウサムソン以来17年ぶりとなります。平成以降の35回に範囲を広げても、他にフサイチコンコルド(1996年)がいるだけです。世界的にみてわが国がいかに独自の血統世界を構築しているかがお分かりいただけると思います。これがわが国の馬産の強みといえるでしょう。