試合内容を考えれば、敗戦は妥当。むしろ1点差での負けは、悪くない結果だったとさえ言えるのかもしれない。

 U−20ワールドカップのグループリーグ第2戦、日本はコロンビアと対戦し、1−2で敗れた。


コロンビアのスピードある攻撃に翻弄された日本

「前回(初戦のセネガル戦)同様、自分たちがボールを持つ時間が少なかったのは課題。その分、守備に追われる部分が多くなってしまい、後半の入りでやられてしまった。自分たちがボールを持つ時間をもっともっと増やしたいなと思う」

 ボランチを務めるMF福井太智がそう振り返ったように、立ち上がりからなかなかボールを前に運べない日本は、守備の時間が長く続く展開を強いられた。セネガル戦同様というより、初戦以上に、日本は落ち着いてボールを保持することができなかった。

 コロンビアのスピードある攻撃を、どうにか自陣で食い止めることはできても、奪ったボールを攻撃につなげることは難しい。そんな時間が続いた。

「セネガルとはまた違った強さの相手に対して、自分たちがよりボールを動かしながら、高い位置でゲームを進めていかないと苦しむかなと思っていた」

 U−20日本代表を率いる冨樫剛一監督は試合後、そんなことを話していたが、指揮官の心配がまさに的中した格好だ。

 ところが、そんな試合展開にもかかわらず、初戦のセネガル戦に続き、ここでもまた日本が先制点を奪ってしまうのだから、サッカーはわからない。

 前半30分、右CKから福井、MF北野颯太が短くパスをつなぎ、最後は福井がゴールライン際までボールを持ち込み、マイナスにクロスを送ると、ゴール正面でフリーになっていたMF山根陸がシュート。これがゴール右隅に決まって、日本は先制に成功した。

 先制ゴールを決めた山根が語る。

「(シュートは)当たり損ねになってしまったが、みんなが(相手選手を)ブロックして自分をフリーにしてくれたので、あとは思いきって(足を)振るだけだった。(ボールが)うまく吸い込まれてくれてよかった」

 初戦に続く先制点。しかも、セットプレーによるワンチャンスを生かしてのゴールとあって、またしても日本は、したたかに悪い流れの試合をものにして、勝ち点3を手にしてしまうかに思われた。

 だが、そうは簡単に物事がうまく進まないのも、サッカーである。

 セネガル以上に技術とスピードに優れるコロンビアは、後半に入ると、さらにギアアップ。1対1の局面ではがされることが多くなった日本は、コロンビアのスピードに乗った攻撃をまともに受けるピンチを増やした。

「やられてはいけない時間帯でやられてしまった。冨樫監督からも(後半の)立ち上がりは集中しようと言われていたが、スキを突かれたというか、気の緩みもあったのかなと思う」

 そんなDF田中隼人の言葉どおり、日本は後半53分に同点ゴールを奪われると、わずか6分後にも2点目を失い、たちまち試合をひっくり返された。

 冨樫監督が振り返る。

「1点目を取られたのは仕方がないとしても、2点目をあの時間帯に取られてしまうというのは、私たちがそこをしっかりと耐えられなかったということ。それが、今日の(敗戦の)一番の要因かなと思う」

 しかし、逆転してもなお、コロンビアの勢いは止まらなかった。

「チームとして間延びする時間もあったし、1対1ではがされる部分も一人ひとり多かったと思う」(福井)

「やっぱりワールドカップは、局面ではがせる選手や強さを持っている選手が出てくる。ここはアジア(の大会)じゃない。デュエルのところは、自分たちはまだまだだと思う」(山根)

 ボランチを務めるふたりがそう話したように、1対1の局面で劣勢となった日本は、さらに3点目、4点目と失点を重ねる危険性もあった。それを思えば、よく最少失点差で終えた試合だったと言えるだろう。

 もちろん、同点に追いつく千載一遇のチャンスを逃したこと、すなわち、MF松木玖生がPKを外したことは痛かった。

 松木自身も「きつい状況に自分が(チームを)追い込んだ」と言い、悔しさをかみ殺すように「今日は個人的にすごくダメな試合だったので、次は結果を残す」と続けたように、敗戦の責任を感じているのは明らかだった。

 だが、試合全体を俯瞰すれば、キャプテンのPK失敗は、強く残る印象ほどに大きな敗因とは言い難い。

 やはり、これだけボールを前に運べず、すぐにボールを失って相手の攻撃を受け続ければ、いずれどこかで失点するのは自然な流れ。セネガル戦に続く、二匹目のドジョウを狙うのは虫がよすぎたということだろう。

 とはいえ、言い方を変えるならば、これだけ自分たちでボールを保持する時間を作れず、攻撃がままならない試合を続けながら、2試合を終えて勝ち点3、得失点差ゼロは、上出来だとも言える。

 次の試合でイスラエルに勝てば、順位はともかく決勝トーナメント進出が決まり、引き分けでもその可能性を残すのだから、決して悪くない状況だ。

 山根が力強い言葉を口にする。

「誰ひとり落ち込んでないし、今日のゲームは本当に悔しいが、自分たちは何も終わっているわけじゃない」

 グループリーグ最終戦で対戦するイスラエルは、球際の強さこそあるものの、セネガルやコロンビアに比べれば選手個々のスピードはなく、落ち着いてパスをつないで攻撃を組み立てようとするオーソドックスなチームである。その意味では、日本にとっては比較的戦いやすい相手のはずだ。

 この2試合、なかなか自分たちのよさを出せずに苦しんでいる日本だが、グループリーグ最後のイスラエル戦では本来の"らしさ"を発揮し、是が非でも決勝トーナメント進出をつかみたい。