明日の株式相場に向けて=円安加速で買われる「低PBR内需株」

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 名実ともに5月相場入りとなった1日の東京株式市場はリスク選好の地合いが継続し、日経平均株価が前営業日比266円高の2万9123円と3日続伸した。5月相場入りとはいっても、4月の新年度相場入りとは言うまでもなく趣きが異なる。今週は大型連休狭間の2営業日ということで市場参加者もまばらだが、特にあすから3日までの日程でFOMCが開催され、パウエルFRB議長の記者会見がある。そして4日はECB理事会が行われ、こちらはラガルドECB総裁の会見に耳目が集まる。おまけに週末5日には4月の米雇用統計発表とあっては、投資する側としてはどうにも身動きがとれないタイミングである。

 ところが、そういう常識的なセオリーが通用しないのが今の相場であり、普通に考えれば手を出しにくく、むしろ売りから入りたい衝動に駆られるような場面で、全体指数は先物主導でスルスルと上値追いが続く。終値での2万9000円台は昨年8月17日以来のことであり、約8カ月半ぶりにボックスゾーンの上限に迫ってきた。騰落レシオを考慮すれば、再びバランスを崩す場面が予想されるが、その場合も押し目を拾われしぶとく這いあがってくるようなイメージがある。

 日経平均上昇の背景にあるのが急速な円安である。植田日銀総裁の初陣となった先の決定会合について、「驚くほどタカ派的な要素が感じられないというのが率直な感想。黒田バズーカのような大胆な政策は出てこないと、投機筋に見切られたのではないか」(国内投資顧問ストラテジスト)という声も聞かれる。黒田路線を踏襲し目の前のレールを走り続ける政策スタンスが、海外ヘッジファンドなどの為替相場での円売り仕掛けを誘発した。「現在は金融引き締め策解除まで最も遠いユーロが一番強く、打ち止めが近いドルが2番目、そして永遠のマイナス金利で凍り付く円が最弱」(ネット証券アナリスト)とする。そして、これは紛れもなく株式市場にとっては目先の株価押し上げ要因として機能している。

 しかし、皮肉にも主役は輸出株ではない。例えば半導体関連の弱さはいかんともしがたく、それは常に断トツの売買代金をこなす象徴株であるレーザーテック<6920.T>の値動きにも暗示されている。同社は前週末28日引け後に好決算を発表し、きょうは一度は好感されカイ気配でスタートしたのだが、結局戻り売りに凌駕されて年初来安値更新となってしまった。前週のアドバンテスト<6857.T>の下げもきつかったが、半導体主力どころは十把一絡げに見切り売りが止まないところに今の実態が映し出されている。

 トヨタ自動車<7203.T>など為替感応度抜群の自動車株はさすがに堅調だが上値が重い。円安恩恵業種である海運や鉄鋼といったセクターには、資金が回ってこない。投資資金が流れ込んでいるのが内需系の食品、不動産、電鉄、小売といった銘柄である。円安はインバウンド需要を刺激する。なぜなら“物価の安い”日本で、対円で自国通貨の価値が高まれば、更に安くモノやサービスを買うことができるから、外国人の財布の紐が緩くなるのは道理である。しかしもっと構造的に考えた場合、それは時にモノやサービスよりも大きな、日本の企業あるいは日本の土地や建物を買い漁るのも同じ理屈となる。

 個別株に目を向けると、ここにきて不動産や建設セクターの一角に強い銘柄が目立っているのが暗示的で、低PBRも考慮して株高修正余地が大きい。既に取り上げたナカノフドー建設<1827.T>や松井建設<1810.T>のほか、佐田建設<1826.T>などにも目を配りたい。更に、外国人に大人気の北海道を地盤とする住宅会社で、土屋ホールディングス<1840.T>も要マーク。同社のPBRは0.4倍台で3%近い配当利回りを有する。このほかでは、インバウンドの視点でコンビニ株の強さが際立っている。ポプラ<7601.T>が上げ足を加速しストップ高に買われたが、きょうはスリーエフ<7544.T>も急動意した。その観点でシー・ヴイ・エス・ベイエリア<2687.T>の目先一服場面は狙えそうだ。

 あすのスケジュールでは、4月のマネタリーベースが朝方取引開始前に発表される。海外では豪中銀の政策金利発表、3月の米JOLTS求人件数、3月の米製造業新規受注など。なお、FOMCが明後日まで2日間の日程で開催される。国内主要企業の決算発表では、三井物産<8031.T>、日本航空<9201.T>などが予定されている。海外主要企業の決算発表ではファイザー<PFE>、スターバックス<SBUX>、フォード・モーター<F>などがある。(銀)

出所:MINKABU PRESS