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声出し応援の光と闇が露出した、スカッとする開幕戦!

球・春・到・来!みなさまプロ野球の春がやってまいりました。すでに新球場での開幕を迎えている日本ハム・楽天の両球団を追って、いよいよ31日からは残り10球団も始動。各地で華々しく開幕戦を戦い、プロ野球シーズンの幕が上がりました。

日本の5番・村上様の開幕弾で一気に勝ち切ったヤクルトと、新井新監督がツライ監督になる予感漂う広島との一戦。球団のレジェンド・バース氏の始球式の余勢をかって完勝をおさめた阪神と、「開幕は弱いから」と既定路線に胸を張るDeNAとの一戦。開幕投手小笠原慎之介さんの145球の熱投と1球で勝利投手になった勝野昌慶さんとでタマの取り合いの様相となった中日と、開幕セレモニーに全力を出し切った巨人との一戦。ふざけた開幕セレモニーからふざけた戦力で圧倒したソフトバンクと、去年出て行かれたオスナさんに最後締められたロッテとの一戦。いずれも見応えがある、物語のような試合でした。

大人気野球漫画「OHTANI」ほどではないにしても、高度な野球技術によって描き出された夢がすべての試合にありました。「こうなったら面白いな」「こうなったらいいのにな」「こうなったらスゴイな」を叶えてくれる試合ぞろいでした。巨人の開幕セレモニーでは読売新聞社パワーを発揮して、侍ジャパンの映像を大々的に使いながら「さぁ、行こう!WHO IS NEXT?」と煽っていましたが、確かに夢のつづきが感じられました。あの夢は、間違いなくここにつながっていました。

↓何かよくわかんない人形のパイロットにさせられたオジサンと、よくわかんない槍を持たされた人による夢のセレモニー!


客:「こんなときどういう反応すればいいんだ…」
ソフバン:「笑えばいいと思うよ」
客:「ウケちゃダメだウケちゃダメだウケちゃダメだ」
選手:「ところで何ですかこの槍…?」
ソフバン:「絶望の槍ロンギヌスと(真顔)」
ソフバン:「希望の槍カシウスだ(真顔)」
ソフバン:「槍があればすべてやり直せる(真顔)」
選手:「ダジャレ…なのか…?」
客:「ウケちゃダメだウケちゃダメだウケちゃダメだ」
監督:「で、ワシは何を…?」
ソフバン:「エヴァに乗れ(真顔)」
監督:「みこしはともかく、コレはちょっと…」
ソフバン:「エヴァに乗らないなら帰れ(真顔)」
監督:「…………?」
ソフバン:「監督、完全に沈黙!」
客:「ウケちゃダメだウケちゃダメだウケちゃダメだ」

やってるほうも笑うしかないだろこんなの!

楽しそうで結構です!



そのような素晴らしい試合群のなかにあっても燦然と輝きつづける2023年ナンバーワンの開幕戦は我が埼玉西武ライオンズの試合でした。松井稼頭央さんを新監督に迎えたミラクル新年の始まりは、「こうなったらいいな」「こうなったら面白いな」「こうなったらスカッとするのにな」のすべてが詰まったパーフェクトドリームゲームでした。その視点がオリックス&残り10球団側から見た場合のものであるということを除けば、自分史上最高の開幕戦だったと思います。

迎えた開幕の日、我が埼玉西武ライオンズは派手目のセレモニーをやることは最初から放棄していました。どうやっても隙間が開いている半ドームでは、日に日に長くなる日差しのもとで光と影のエンターテインメントをやるのは土台無理なのです。照明器具は特にないし、大型ビジョンも小さいし(※つい数年前に大きくしたばかりなのに普通に他球団より小さい/ワンルームで狭さを感じて1LDKに引っ越したけど友だちはみんな3LDKに住んでたみたいな話)。

ならばと割り切って、我々は真昼の健全なセレモニーを展開しました。グラウンドに登場したのは地元・埼玉栄高校マーチングバンド部のみなさん。スペシャル演奏で球場を盛り上げ、ついでに国歌吹奏もやってくれました。決して歌手代をケチったわけではなく、有名歌手よりも地元のマーチングバンドを大事にする地域密着型のセレモニーです。熱烈な西武ファンだというピアニスト・清塚信也さんの始球式まで含めて、地域&ファンとつながろうという意欲があふれています。今日はいい試合になる、そんな予感が盛り上がってきます。

↓特にファンではない話題の美人よりも、ファンのなかの有名な人を呼びたいという心意気やヨシ!


そんな盛り上がりをさらに高めたのは観衆による声でした。声出し応援が本格的に解禁され、スタンドからは歓声や応援歌が聞こえてきます。野球らしい雰囲気です。その声を受けて、埼玉西武ライオンズは躍動します。先発・高橋光成さんは「今年こそ絶対にメジャーに行くんだ」という強い気持ちを胸に秘め、日本の打者くらいはねじ伏せて見せねばならぬと力投。初回を三者三振で仕留めると、4回までゼロを並べます。「このまま9回までゼロが並ぶようならメジャーに行かせてやらねばなるまいな…」とファンも大いにうなずく、納得の開幕投手です。

一方、オリックスが開幕のマウンドに送り込んだのは、これが1軍初登板となる山下舜平大さん。「そうか、ウチの源田も骨折しているが」「オリックスのエースもWBCで疲れているんだな!」「吉田さんもいないし勝つチャンス到来!」とぬか喜びしたものの、初登板とは思えない快投で山下さんは西武打線を抑え込みます。序盤はともにゼロを並べる緊迫の投手戦です。

試合が動いたのは4回裏、3番・外崎修汰⇒4番・山川穂高⇒5番・栗山巧とつづく、ここだけが唯一自慢のクリーンアップが集中打で1点をもぎ取りました。ホームで先制の開幕得点、しかも打ったのがチームの柱・栗山さんであるというのは、ただの1点ではない大きな1点でした。よーし、いいぞ。よーし、勝てるぞ。侍ジャパンで言えば大谷さんが先制タイムリーを放ったような、勝利への手応えが漲ります。すかさず高橋光成さんが1点返してやったので試合は振り出しに戻りましたが(※メジャー行きも振り出しに戻る)、流れは完全に西武のものです。

↓栗山さんの開幕先制タイムリー!よーしいけるぞ!


西武は7回にホームランで1点を勝ち越すと、先発の高橋さんが8回1失点の素晴らしい投球を見せ、順調に9回まで試合を進めます。2-1のリードで迎えた9回表、勝利を締めくくるマウンドにルーキーの青山美夏人さんを送った西武。このあたりは松井新監督の新時代を感じさせる采配でもあります。昨今の強いチームには強力な新人救援投手がいたりするものです。逆に言えば、そういうプラスアルファがある編成でなければ、なかなかシーズンを勝っていくことはできないのです。ここでしっかりとセーブを挙げてくれれば、まさしく「夜明け」といった試合になる…そう思いました。9回二死までは。

そこから始まったTHEドラマティック悪夢は、まさに野球漫画の傑作のようでした。明訓高校や明青学園やOHTANIジャパンといった夢のチームが勝ち上がっていくとき、悪夢のように敗れた対戦相手がいるはずですが、そちら側の視点で僕は再び「漫画のような現実」を見ることになったのです。開幕戦、勝利まであとひとりの場面で打席に立ったのは、昨年オフに西武からオリックスに移籍した森友哉さん。一部のファンは試合の始まりからブーイングなどをしており、不穏な空気の漂うお相手です。

↓声出し応援なんか解禁するからー!輩感が目立ってるー!


【一部】:「我々はすべての相手にブーイングするわけではない(キリッ)」

【大半】:「誰が移籍したとしてもブーイングとかしないよね普通…(ビクッ)」


ザワついた空気のなか、森さんが初球を振り抜くと、いつか見たような弾道で打球はレフトスタンドに飛び込みます。「あー」と小さく声を漏らした松井新監督、沈黙する西武側レフトスタンド、そして「モーリ!」の大コールで万歳三唱するオリックス側ライトスタンド。劇的、劇的、劇的。移籍した選手が、古巣ファンの大ブーイングを浴びながら、9回二死から起死回生の一発を放ち、新天地のファンの心をガッチリとつかんだのです。こんな名場面があるでしょうか。

しかも漫画はつづきます。延長10回表にはオリックス・宗さんが、メジャーを通過して日本に来た西武・ティノコさんの挨拶がわりの初球を、またしてもレフトスタンドに叩き込みました。「ティノコって誰だ…」の「ティ」あたりでガツーンと敗戦を突きつけられた大きな一打。侍ジャパンのような喜びようのオリックス側と、初日から黙り込んでしまった松井新監督。悪夢、悪夢、悪夢。「レジェンド新監督が新戦力を操って開幕勝利を飾る、ついでに森さんに恩返し」というご都合妄想の正反対の漫画が、現実に描き出されていました。

「何という悪夢的展開…」
「悪の組織を倒す漫画を」
「悪の組織側から見た感じ」
「ブーイングする輩集団が」
「正義の鉄槌で一掃されて」
「野球に平和が訪れた」
「そんな名場面ではないか…」
「これは相手方はさぞや気持ちよかろう…」
「他球団もこれは気持ちよかろう…」
「西武ワロタでもう一杯飲めるであろう」
「我らは木っ端みじんに滅びたが…」

↓ヒーローインタビューには森さんが登場!一部が最後のチカラでブーイングしてました!

土壇場の同点弾、納得のヒーローです!

勝ち越し弾よりも断然同点弾の価値が高い!

これが「断末魔の叫び」ってヤツなんですね!



いやー、オリックスさんには最&高で、その他10球団にとっても愉快痛快な一戦だったのではないでしょうか。開幕戦面白試合大賞があったら、今年は西武VSオリックス戦が満場一致でいただけるものと思います。こういう試合で、ヒーローインタビューに推されるほどの活躍を見せた森友哉さんは、やはり漫画の世界の住人だなと思います。改めてすごい選手だなと唸りました。

声出し応援が解禁されていたことで、ブーイングも、それを打ち消すように響く森コールも、わき上がる大歓声も、沈み込むうめき声も、すべてが鮮明でした。この試合をこういう形で勝ち取った森さんの見事さも、声出しによって一層際立ったというものでしょう。「スカッとした」という、一部以外すべての方面からの喝采の声とともに。

出ていった選手がよりにもよって自分たちを相手に大活躍するのは、胸が痛む出来事だろうと思います。ただ、相手は無法によって出ていったわけでもなければ、何かを奪い取っていったわけでもありません。堂々と正門から出ていっただけです。まぁ、そういう相手にブーイングなどすれば、野球の神様もヘソを曲げるでしょう。侍ジャパンに敗れた相手が、清々しく去っていったあの感じ、あの感じを出せと野球の神様は常に望んでいるのですから。

どんな胸の痛みを抱えていても「元気にしているか?」「頑張れよ、俺も頑張る」「お互い、幸せになろうな」と優しく微笑むことができてこそ、相手からも愛されるのではないかと僕は思います。たとえば協議離婚が成立した相手と街ですれ違ったとき、「ブー!ブー!」と叫んでやったら、今隣にいる恋人もドン引きしますよね。そこで追い打ちのように「アイツは俺からフッたからブーイングしないが、コイツは俺をフッたからブーイングする(キリッ)」みたいなこと言い出したら「うわー、やっべぇ」と震えながら、一刻も早く穏便に別れようとしか思わないでしょう。別れが辛くないとは言わないが、辛くても優しくできるのが強さです。強いヤツほど笑顔は優しい、だって強さは愛だもの。巡り巡ってそういう強さがないから別れも加速するのだと僕は思います。お客と球団は別物ですが、選手にとってはどっちも「環境」の一部なのです。

さて、悪夢のドラマで開幕から華麗に露出した我が方の暗部みたいなものを、ぜひ松井新監督のもとで改めながら、未来に向かって進んでいきたいものだなと思います。勝っても負けても、明るく楽しく元気よく野球を楽しむ。そういう光あふれる世界を作る。できること、やるべきことはそれだけです。遠くにいる人にまで「なんだかとっても楽しそうだな」と思われるくらいになったら、身近にいる選手が出て行くことも少なくなるでしょう。居心地のいい世界であれば、その他の現実的な条件は折り合いがつく可能性がありますからね。「生理的に無理!」以外なら意外と何とかなる、それが夫婦関係だったりするものですから…!

↓近い未来を予感させるイイ写真ですね!

「いいなぁ」「いいでしょ」が交錯するこの感じ!

「打てばいいんだな」がシンクロするこの感じ!

近い将来、同じ感じでやられそうな気がします!


3年のコロナ禍くらいでは、こういう感じはなくならないんだなと思いました!