スマホは、紛失時に遠隔からロックをかけることが可能だ。写真のように、メッセージも表示できる(筆者撮影)

春は歓送迎会やお花見など、何かとイベントの多い季節。酔ったまま電車やタクシーに乗り、スマホを使っていたら、そのまま紛失してしまった――そんな経験がある人もいるはずだ。JR四国が2018年に発表した「忘れ物白書」では、2017年度の1年間で携帯電話の置き忘れが2219点もあったという。全国を網羅した統計はないが、その数は軽く1万を超えているだろう。傘やカードケースに比べれば少ないが、それでも忘れ物の定番であることは確かだ。

ただ、スマホをなくしたときの影響は、ほかの何よりも大きい。端末内には、自分はもちろん、他人の個人情報まで満載なうえに、SNSなどの各種サービスにもアクセスできてしまう。さらに、最近ではおサイフケータイやQRコード決済などのキャッシュレス決済が広がったことで、利用者の財産にも直結するようになった。財布を落とす以上に、ダメージが大きいと言えるだろう。

端末の紛失による被害を防ぐためには、端末にきちんとロックをかけておくことが肝心だ。それに加えて、なくしてしまったあと、その端末を探す手段や遠隔でロックをかける方法を覚えておいたほうがいい。Androidの場合、Googleのサービスに加え、大手キャリアも遠隔ロックサービスを提供している。こうした方法を頭に入れておけば、いざというときにあわてずに済むはずだ。

位置検索や遠隔ロックはOS標準機能が便利

Androidは、OSレベルで紛失時に位置情報を検索できる機能が搭載されている。単に場所がわかるだけでなく、リモートでロックをかけたり、端末のデータを消去することも可能だ。特別な設定は必要なく、Googleアカウントでログインして、位置情報がオンになっていればいい。ただし、この機能がオフになっている可能性もあるため、念のため、確認をしておくことをお勧めしたい。

設定の確認方法は次のとおり。Google純正のPixel 7の場合、「設定」メニューで「Google」を開き、「デバイスを探す」を選択する。ここで「『デバイスを探す』を使用」がオンになっていれば、端末を紛失してしまったときなどに、PCやタブレットなど、別の端末で位置を特定することが可能だ。ただし、位置情報はモバイルネットワークやWi-Fiで送信しているため、通信できていることが前提になる。

万が一端末を紛失してしまったときは、2つの方法で端末を探すことができる。1つがアプリ、もう1つがウェブブラウザ―だ。アプリで探すのは、スマホの2台持ちが前提になるため、ここでは後者の手順を紹介する。まず、PCなど、別の端末でブラウザーを開き、「https://google.com/android/find/」にアクセスする。すると、「Googleデバイスを探す」というページが表示される。ここでは、Andoridに設定したのと同じGoogleアカウントでログインしよう。


「デバイスを探す」機能で、端末の位置情報を検索した。ここから、ロックをかけたり、データを消去したりといったことができる(筆者撮影)

端末の位置は、Googleマップ上に表示される。同じ部屋などにあって見当たらないときには、「音を鳴らす」をクリックすると、着信音を鳴らすことが可能だ。離れた場所に置き忘れてしまったときは、「デバイスを保護」をクリックするといい。次の画面で、端末の画面上に表示させるためのメッセージや連絡先の電話番号を入力できる。これらを入力したあと(省略してもいい)、「デバイスを保護」をクリックすると、端末にロックがかかる。

また、見つかる可能性が低そうなときは、端末内のデータをすべて消去してしまうこともできる。この場合は、「デバイスデータを消去」をクリックすればいい。Googleアカウントでログインし、位置情報をオンにしておくだけと利用方法は簡単。もしものときの手段として、覚えておくようにしたい。

おサイフケータイはロック設定も活用

ただし、「デバイスを探す」だけでは、すべての機能をロックすることができない。最も困るのは、おサイフケータイやNFCだろう。Androidの場合、カードエミュレーションモードという、ICカードのようにふるまう仕掛けになっているため、モバイルSuicaやiD、QUICPayといったFeliCaを使ったサービスは、端末のロックを外すことなく利用できる。この点は、FeliCaの利用に認証が必要なiPhoneのApple Payとの大きな違いだ。

端末をかざすだけで決済ができ、普段は非常に手軽だが、端末紛失時にはこの仕様があだになる。紛失した端末を拾った第三者が、簡単に決済機能を使えてしまうからだ。Suicaのようなプリペイド型のサービスは残高を失うだけだが、iDやQUICPayのような後払いサービスを、限度額いっぱいまで使われてしまうのは大きなリスクと言える。FeliCaのサービスの中にはデビットカードもあるため、悪用されると銀行の預金を失ってしまうおそれもある。

このようなときには、「デバイスを探す」ではなく、キャリアの遠隔ロックサービスを利用する必要がある。ドコモ、KDDI、ソフトバンクは、それぞれおサイフケータイの機能を遠隔でロックする機能を提供している。これを利用すれば、電話連絡やWebからの簡単な操作で、おサイフケータイの機能を遠隔で停止することが可能だ。ただし、ドコモ以外は事前に遠隔ロックサービスへの申し込みが必要になる。


遠隔ロックに対応していない場合は、あらかじめ画面ロック解除時のみ有効にしておくようにしたい(筆者撮影)

また、遠隔ロックを用意しているキャリアでも一部端末や料金プランで非対応なことも。楽天モバイルやSIMフリーのスマホをメーカーから購入した場合にも、このようなサービスは利用できない。こうした端末を利用している場合、多少利便性は下がってしまうが、おサイフケータイの機能を画面のロックを解除した際だけ有効になるよう、セキュリティ設定を見直しておいたほうがいいだろう。

Pixel 7の場合、「設定」の「接続設定」で「接続の設定」を選び、「NFC」をタップすると、その設定項目が現われる。ここで、「NFCの仕様にロック解除を要求」をオンにしておくと、FeliCaを使ったおサイフケータイの利用にも、画面のロック解除が必要になる。紛失時に、勝手に使われてしまう心配がなくなるというわけだ。転ばぬ先の杖として、紛失前に準備しておくようにしたい。

回線の休止を忘れずに

スマホの紛失時にもう1つ忘れないでやっておきたいのが、回線の休止だ。いくら端末にロックをかけても、SIMカードは無防備。そのため、端末からSIMカードだけを抜かれ、別の端末に挿すだけで通信ができてしまう。単に料金がかかってしまうだけでなく、SMSが二段階認証で使われていたりすると、不正に決済サービスなどにアクセスされるリスクもある。

ただし、通信機能が使えないと、ここまで紹介してきた遠隔ロックが機能しなくなるおそれがある。そのため、紛失に気づいたら真っ先にSIMカードを無効化するのではなく、まずは端末の位置情報を検索したほうがいい。鉄道事業者の遺失物センターなどに届けられているのが確認できれば、通信を無効化する必要性が薄くなるからだ。逆に、紛失した端末が移動しているにもかかわらず連絡が取れないようなケースでは、通信を無効にしたほうがいい。

SIMカードには契約者の識別情報が格納されているが、実際に通信が成立するには、キャリア側のデータベースとひも付けが行われる必要がある。つまり、キャリア側からSIMカードを無効化できるということだ。また、SIMカードを再発行すれば、別の端末で同じ電話番号を利用できる。紛失したからといって、契約情報まで変更する必要はないというわけだ。

SIMカードにロックをかけておく

また、SIMカードには、一時的にPINコードでロックをかけておくことができる。日本ではあまり使われていない機能だが、海外では標準で設定されているのが一般的。これがかかったSIMカードは、端末に挿した際にPINコードの入力を求められる。海外でプリペイドのSIMカードを購入すると、このPINコードが台紙に記載されていたりする。


SIMカード自体にロックをかけることも可能。ただし、設定方法にはややクセもあるため、やる場合は手順をよくよく確認したい(筆者撮影)

ただし、設定方法が少々難しく、PINコードを3回間違えるとロックがかかってしまう。その解除にはキャリアへの連絡が必要など、手間がかかる。試す際には細心の注意を払っておきたい。

Pixel 7の場合、「設定」で「セキュリティとプライバシー」を開き、「セキュリティの詳細設定」をタップ。次の画面に表示される「SIMカードロック」を選び、「SIMカードをロック」をオンにするとこれが有効になる。

ただし、各社とも、SIMカードには初期値としてPINコードが設定されている。ロックを有効化する際やPINコードを変更する際には、この入力が求められる。

ここで初期値を知らずに適当に打ち、ロックを解除できなくなってしまうトラブルがあるため、注意したい。PINコードの初期値は、ドコモが「0000」、auが「1234」、ソフトバンクが「9999」、楽天モバイルが「0000」だ。また、物理的なSIMカードは抜かれてしまうおそれがある一方で、eSIMならそのような心配がない。現状では大手キャリア4社ともeSIMに対応しているため、セキュリティの観点で物理SIMから変更しておくのも手と言えるだろう。


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(石野 純也 : ケータイジャーナリスト)