雨中のスコアレスドロー。大宮VとN相模原、勝ち切れずとも自分たちのスタイルを体現し、充実ぶりを示す【WEリーグ】
WEリーグは、順延していた第7節のサンフレッチェ広島レジーナ対アルビレックス新潟レディースのゲームが3月21日に行なわれ、全チームが10試合ずつを終えた。
そして25日から、シーズンも折り返しに。そのなかで、第12節で対戦した大宮アルディージャVENTUSとノジマステラ神奈川相模原は、現時点で前者は昨季の9位から4位、後者も11位から7位と大きく順位を上げている。
「自分が目ざすサッカーは攻撃的な部分が多い。選手が高い位置を取って、技術的、判断的なミスがあって、そこで入れられることもあるが、今の選手は平均的なテクニック、スキルは非常に高く、そういうリスクは少なくなってきている。トップ3とは総合力で劣ってしまう部分もあるが、怖がって守りに入って、引いて戦おうという部分は頭の中にない」(菅野将晃監督/N相模原)
失点が増えても、ゴールを目ざす。そんなアグレッシブな戦いを具現化しようとする選手について、指揮官は「(積極策を)実現しようとしてやってくれている。WEリーグカップの時とプレーを比べても、全体が高まっている」と評価する。
「チームとしてやろうとしているサッカーに取り組めているし、全員がチャレンジできているかなと思います」と南野。最後方でゴールを守る久野吹雪は「パスをつないでボールを運び、守備では即時回収というのが浸透している」と認めながらも「自分たちのパスミスからカウンターで失点することが多い」ことを気にしていた。
今節の大宮V戦でも、N相模原はイニシアチブを取りにいく。立ち上がりの4分、クラブ生え抜きの若手、笹井一愛のパスカットからの流れで、南野がシュート。6分にも、サイドバックの平野優花が、左から南野へ鋭い弾道のクロスを入れる。
前節に得点を決めていた松本茉奈加のいる右サイドからの攻撃が前半に少なかったのは、狙いではなく誤算だったようだが、「相手がどこにいて、どこを攻略しようとしているのかが、前半のプレー中には判断できなかった」(有吉佐織・大宮V)。
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アウェーでも打ち合いを挑んできたN相模原の攻勢、そして雨が降りしきるコンディションにも気を遣い、大宮Vはやや受け身に回された。
大宮Vの数字を昨季と比べると、1試合あたりの得点数は対前年比で5割以上増(20試合で17得点→10試合で14得点)、失点数は6割弱(20試合で31失点→10試合で9失点)に抑えられている。
昨季はブロックを敷いた守備からの堅守速攻をベースにしていたが、今季は前目からプレッシャーをかけている。その効用を、なでしこジャパンでも長くプレーした有吉は解き明かす。
「サンフレッチェ広島レジーナ戦(第10節、5−0で勝利)のように、相手陣内でボールを奪って、そのまま攻撃することで得点につながる部分が、本当に多い。そこは意識してやっていますし、それが、そういう数字、結果につながってきている」
N相模原ペースのなかでも、有吉ら最終ラインとGKの望月ありさが踏ん張って得点を許さず、中盤から前の選手も安易な後退はしなかった。「今までなら下がってブロックを作って守備をしていた。最後までチャレンジはできていた」と有吉。前で戦う、今季のスタイルを堅持し、ハーフタイムまで持ちこたえる。
後半開始直後もゴールを脅かされながら、粘り強く対応し、チャンスの数を徐々に増やしていった。そして、83分、自陣で相手のパスをさらった仲田歩夢が、スペースへ走りこんだ井上綾香へ決定的なパスを通した。
高いポジションをとっていたN相模原のGK久野は「戻っても間に合わない。前に出て、身体にあてるしかない」と井上へのチャレンジを選択したが、ワンテンポ先に井上がシュートを放つ。そこがペナルティエリア外であることを忘れたわけではなかったが、頭上を抜こうとするボールへ、久野は反射的に手を伸ばしてしまった。
キルスティ・ダウル主審は、ファールの笛を吹いた。筆者には決定的な得点機会阻止に見えたが、イングランドの女子スーパーリーグで笛を吹き、審判交流プログラムで来日しているレフェリーが提示したカードは、赤ではなく、黄色だった。
その後も、攻め合った両チームだが、雨中の敢闘むなしく、無得点に終わった。N相模原は18本のシュートを放ち、2度もバーに嫌われた。NACK5スタジアム大宮では、昨季も3倍近いシュートを放って、スコアレスドローに終わっている。
「攻守にわたって目ざすところは出せていた。ただ、ゴールがなかった。こういうゲームで、良い結果に結びつけていかないと。勝点3を得るゲームにしなければいけない」(菅野監督)
決定的な場面を、やや理不尽な形で阻止された大宮Vにとっても、残念なドローに見えた。有吉は「(レッドカードでは?)そう思った人が多いかもしれませんが、VAR(WEリーグでは導入されていない)もないなかで、審判もミスはある。一緒に成長できれば」。囲んだメディアから、ジャッジについての問いかけが飛ぶと、そう答えていた。
そして、さらなる前進に向けては「短い時間のなかでもコミュニケーションし、集中できる力が、選手一人ひとりについてくれば、もうちょっと変わる」(有吉)。
他会場の結果によって、大宮Vは4位をキープし、N相模原はマイナビ仙台レディースをかわし、6位に浮上した。次節、大宮Vは、トップ3の一角、日テレ・東京ヴェルディベレーザとのアウェー戦に臨み、N相模原は、AC長野パルセイロ・レディースを迎撃する。
取材・文●西森彰(フリーライター)
