東京では今日も、男女の間にあらゆるトラブルが発生している。なかには解決が難しい、不可解な事件も…。

そんな事件を鮮やかに解決してSNSを賑わせている、ある1人の男がいた―。

彼の名は光城タツヤ。職業は、探偵。

今日彼のもとにやってきたのは「彼女に、映画デートをドタキャンされてしまった」という男性だ。

あなたも、この事件の謎を一緒に考えてくれないだろうか…?

▶前回:映画デートの予定だったのに、彼女が来てくれなかった…。女が予定をすっぽかした、驚きの理由は




「高尾さん。あなた、嘘をついていませんか?」

電話越しの僕の言葉に、依頼主の高尾さんは「へっ?」と素っ頓狂な声をあげた。

「何のことです…?」

「高尾さんは、恋人であるルミさんと映画に行く約束をしていたんですよね?」

「そうですよ。明日の18時の回です」

一切取り乱すことなく淡々と回答してくる彼に、僕はもう少し切り込んだ質問を投げかけてみる。

「では高尾さんは、いつもどのへんで映画を観られるのですか?」

「僕は後ろの席が好きですが、それが何か」

「今回の座席でいうと、I列でしょうか」

「…なんですか、急に。今回は僕の勘違いでお手間をおかけしました。では」

「ちょっと待ってください。今、僕があなたにDMで送った画像を見てもらえますか?」




「これは、ルミさんが観に行く予定だとTwitterで言っていた映画の予約状況です。いつも高尾さんとルミさんは、六本木の映画館に行っているとおっしゃっていましたよね?

六本木の映画館では1日1回、18時にのみ上映している作品でした」

「何が言いたいんですか?」

「空席が多いですね」

「…だから何ですか!」

穏やかだった高尾さんが、初めて声を荒らげる。僕は彼の焦りを感じ取りながら、言葉を続けた。

「奇妙ですよね、デートなのに。なぜ席が離れているのでしょう」

彼が明らかに動揺しているのが、電話口からでも伝わってくる。

「高尾さん。あなた、本当にルミさんと付き合っているのですか?」


奇妙な偶然に遭遇した女・ルミ(28歳)


「また、会いましたね」

マッシュヘアの痩せた男に声を掛けられたのは、映画を観終わり、エスカレーターに向かって歩いていたときのことだった。

振り返ると、細身のレザージャケットを羽織った男が微笑んでいる。しかし顔に見覚えはなかった。

「すみません…。どこかでお会いしましたっけ」

「先週の18時も、この映画館に来ていましたよね?」

「あぁ、あのマイナーな映画!劇場には5人くらいしかいませんでしたけど…」

「僕も、あの回を観てたんですよ。ルミさんの姿を見かけて、今日も偶然」

サラリと「ルミさん」と呼ばれ、おそらく私のファンなのだろうと感じ取る。すると目の前の彼が、いきなり名刺を差し出してきた。

「僕、ルミさんのコラムを読んでいまして…!こういうものです。ぜひいつか、ルミさんにコラムを書いてほしいなあって」

名刺には大手出版社の名前が記載されている。彼は鉄道ファン向けの専門誌を担当する、編集部員らしかった。

「すごい!私、この雑誌知ってます」

「そうですか、ありがとうございます。ぜひ今後とも、お付き合いのほどよろしくお願いいたします」

そう言って、男は深々と頭を下げた。

「こちらこそ。ぜひ」

このとき、鉄道の専門誌になぜ私のコラムを掲載するのか疑問に思ったが…。当時は、それほど気に留めていなかった。

「…付き合ってくれるんですね」

男がそう、ボソッとつぶやいたことも。その後私たちは少しの間、映画の感想を言い合いながら談笑した。

そして、その日からだった。奇妙な出来事が続くようになったのは。




「また、会えましたね」

「あぁ、高尾さん…。これで6回目ですよね?すみません、声を掛けてくるのはちょっとやめてもらえますか」

「えっ、なんでです!?」

それから私が映画を観に行くと、3回に1回は高尾さんに遭遇するようになったのだ。また最近気づいたのだが、私が「観に行く」とTwitterでつぶやいた作品にだけ、必ず彼が現れる。

どうやら私の行動パターンもわかっているらしい。私が映画を観るのはいつも18時以降。そして1日に1回しか上映しないような、マイナーな作品を好むことも。

「先日のルミさんのコラム、素敵でした。いやコラムというより、ルミさんが素敵です」

そう言って微笑む彼に狂気を感じ始めたのは、先週のことだ。

そこで私は、Twitterにこう書き込んでみた。

ルミ:明日は、先日観られなかった映画『幸せな恋の終わらせ方』を見ます♪楽しみ!

もし明日、高尾さんが現れたら。そのときは映画館を変えよう。そう決意したとき、奇妙なDMが届いた。

光城タツヤ:突然すみません。私、恋愛探偵の光城タツヤと申します。明日、六本木の映画館に行ってはいけません。あなたの身に危険が迫っています。

▶前回:映画デートの予定だったのに、彼女が来てくれなかった…。女が予定をすっぽかした、驚きの理由は

▶1話目はこちら:同棲中の彼女が、いきなり帰ってこなくなって…?男が絶句した、まさかの理由とは【Q】

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