世界のIT技術者の給与事情とは(写真はイメージ)

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総合人材サービス会社のヒューマンリソシア(東京都新宿区)が、国際労働機関(ILO)や世界各国の統計データ、公表データをベースに独自に分析し、世界98か国のIT技術者の給与を調査した。

それによると、世界で最もIT技術者の給与が高い国はスイスで、2位に米国、3位がイスラエルだったことがわかった。これは、「2022年度版 データで見る世界のITエンジニアレポートvol.6」として、2022年12月14日に発表した。

日本は第20位。日本のIT技術者の給与は昨今の円安ドル高の影響もあって、前年比15.1%減と、大幅に減少した。同社は、「世界と比べて日本のIT技術者の給与水準の低さが憂慮される結果となった」としている。

際立つヨーロッパ各国の給与の高さ

調査によると、世界のIT技術者の給与は1位がスイスの10万53USドル。2位に米国の8万9161USドル、3位はイスラエルの8万5131USドルだった【図1参照】。

4位がデンマーク、5位がパナマ、6位にノルウェー、7位がドイツ、8位に豪州、9位がフィンランド、10位にアイルランドが続いた。ヨーロッパの国々がトップ10のうち、6か国もランクインしており、ヨーロッパ各国の給与の高さが際立つ。

一方、日本は、3万8337USドルで20位。中国が25位と迫っている【図2参照】。

※PayScaleサイト(https://www.payscale.com/rccountries.aspx)の検索で、Software Engineerの年収(USドル)のデータを元に調査(検索日:2022年10月20日)。検索結果は22年1月から9月の平均為替レート。国際通貨基金(IMF)の統計データを元にUSドルに換算し算出。(「ヒューマンリソシア調査 2022年度版:データで見る世界のITエンジニアレポートvol.5」)

また、情報通信業で就業している人の給与を国別に調査したところ、1位はIT技術者と同様に、10万9985USドルでスイスだった。2位は9万5024USドルでカタール、3位は9万70USドルのルクセンブルクが入った。米国は8万5062USドルで4位、5位以降はヨーロッパの国々が続いた【図表3参照】。

情報通信業の就業者の給与をみても、日本は4万837USドルで、世界の24位にとどまった。11位以下にはヨーロッパ各国が続き、アジアではシンガポールだけが20位にランクイン。韓国が4万8527USドルで22位に入り、日本は韓国を下回る結果となった【図表4参照】。

なお、情報通信業の就業者には、情報通信業で就業しているIT技術者を含むすべての職種の人が含まれる。

※中国の平均年収は、中国統計年鑑より引用。その他は国際労働機関(ILO)のデータベースより、情報通信業就業者の平均年収データ(単位:USドル)を使用した。

日本のIT技術者の給与、円安の影響で前年比15.1%減

さらに調査では、IT技術者と情報通信業の就業者の給与額を前年のデータと比べて、増減率(増減額÷直近前年額)を算出することで、給与額の伸びを調査した。

IT技術者の給与額をみると、前回調査(2021年6月25日に検索)のデータとの比較で増減率を算出したところ、増加率の1位はアルゼンチンで、前年比で81.9%増となった。

また、トップ10にはパナマ、ブラジル、メキシコがランクイン。IT技術者が増えている南米地域でIT技術者の給与額が大幅に上がっていることがわかった【図表5参照】。

一方、日本のIT技術者の給与の増減率は15.1%減の67位で、IT技術者の給与が大幅に下がっていることがわかった。

※前回調査(検索日:2021年6月25日)のデータを2021年の年間平均為替レートでUSドルに換算し、今回調査結果と比べた(図表5)

情報通信業の就業者の給与も、前年データと比べて増減率を調査したところ、増加率の1位はスロベニア。2位にハンガリー、3位には東アフリカの島国であるセーシェル共和国が入った。アジアでは、中国が10.1%増の13位、韓国が4.7%増で30位、インドが0.7%増の41位だった。【図表6参照】

ここでも日本は59位で、増減率は5.1%減となった。中南米や欧州など、IT技術者が増えている地域で給与が上昇するなか、、USドルに対する為替レートが大きく変動していることを考慮に入れてもなお、日本のIT技術者の給与水準の低さが憂慮される結果となった。

なお、調査対象とした国・地域のうち、IT技術者給与は71か国、情報通信業の就業者の給与は98か国の取得データを元にした。ヒューマンリソシアの調査「データで見る世界のITエンジニアレポート」は、国際労働機関(ILO)や経済協力開発機構(OECD)、各国の統計データを元に、世界のIT技術者の動向を俯瞰的に把握することを目的に、2020年から結果を公開している。