国連食糧農業機関(FAO)は2022年11月11日、世界の食料輸入額が過去最高を記録する勢いだと報告しました。国連の広報機関であるUN Newsが掲載したFAOの報告書によれば、世界の食料輸入コストは今年に1兆9400億ドル(約270兆円)に到達する見込みとのこと。これは、2021年と比較しておよそ10%の増加となります。

 

食料の輸入額が上昇した原因として、ロシアによるウクライナの侵攻が挙げられています。両国はあわせて世界における全小麦輸出量の約30%を占めており、その輸出が制限されていることで、食料価格を押し上げているのです。ただし食料価格の上昇と米ドルに対する通貨安を受け、今後、増加ペースは鈍化することが予想されています。

 

深刻化する富裕国と低所得国の格差

食料価格の上昇で現在懸念されているのが、低所得国に与える影響です。世界の食料輸入の増加分の多くを富裕国が占める一方で、低所得国の食料輸入量は10%も縮小。にもかかわらず、輸入総額は横ばいとなることが予測されています。つまり、低所得国による食料の入手が難しくなっているのです。

 

FAOはこのような現象について、「これは食料安全保障の観点から憂慮すべき兆候であり、コストの上昇を補填することが困難なことを示している。低所得国は食料価格の上昇に対する抵抗力を失っている可能性がある」と分析しています。

 

低所得国への国際的な支援が必須

食料価格の上昇を受けて、国際通貨基金(IMF)は、低所得国に緊急融資を行うための「フードショック対策窓口(Food Shock Window)」を新たに承認しました。FAOはこの動きを歓迎し、食料輸入コストを低減するための重要なステップだとしています。

 

一方で食料だけでなく、燃料や肥料などのコストも上昇しています。FAOによれば今年のエネルギーと肥料の世界的なコストは4240億ドル(約59兆円)となり、前年比で50%も上昇しているのです。さらに同機関は、「世界の農業生産と食料安全保障への悪影響は2023年まで続くだろう」と分析しています。

 

食料やエネルギーなどの価格上昇が、とりわけ低所得国に与える影響は決して小さなものではありません。日本をはじめとする各国からの国際的な支援が不可欠ではありますが、農業生産性の向上や、肥料の現地生産化などは、支援だけでなくビジネスによって貢献できる分野でもあります。課題が大きいからこそビジネスニーズも高いとも言える途上国。日本企業の海外展開が期待されます。

 

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