家族手当は多くの企業で導入されている福利厚生の一つで、家族がいる従業員に対して手当が支給される制度です。法律で定められているわけではないので、支給の有無や条件、金額は企業によって異なります。今回は、家族手当とはどのような制度なのか、支給条件や相場、メリット・デメリットなどを中心に解説します。

家族手当とはどのような制度なのか

まずは家族手当がどのような制度なのかを解説します。その後に混同されやすい言葉である扶養手当との違いについてもあわせて解説するので、それぞれの制度の違いを理解しましょう。

家族手当とは
家族手当とは、配偶者や子どもなどの家族がいる従業員に対して支給される手当のことです。家族の人数が増えれば支出も増えるため、家族手当によって家計の負担を減らし、従業員が安定的に働けるようにするという目的があります。

ただし、家族手当は法律で定められたものではなく、企業が福利厚生の一環として独自に行う制度です。そのため、支給条件や金額は各企業によって異なります。また、制度の名称も家族手当や扶養手当、育児支援手当など企業によってさまざまです。

厚生労働省が公表している「令和2年就労条件総合調査」によると、68.6%の企業が家族手当、扶養手当、育児支援手当などを支給しています。

出典:令和2年就労条件総合調査(賃金制度)|厚生労働省

家族手当と扶養手当の違い
家族手当と扶養手当の違いは「家族を扶養しているかどうか」です。一般的に扶養とは、経済的な援助を行っている状態をいいます。家族手当は家族がいれば扶養していなくても支給されることがありますが、扶養手当は扶養家族がいる場合に支給される手当です。

ただし、企業によっては家族手当でも扶養の有無が支給条件になっていることがあります。たとえば、共働きで配偶者に一定以上の収入がある場合は支給されないなどです。特に配偶者の年収が103万円、もしくは130万円を超えると、家族手当の条件から外れることが多くなります。

このように、家族手当や扶養手当の支給条件は企業によって異なるため、詳しい制度の内容については勤務先に確認する必要があります。

家族手当の一般的な支給条件や相場

家族手当の一般的な支給条件や相場について、公的な調査結果をもとに解説します。支給金額は企業規模によっても変わる傾向があるため、企業規模別の相場も紹介します。

家族手当の支給条件
前述のとおり、家族手当の支給条件は企業によって異なります。また、支給対象となる家族に関しても、配偶者や子ども、親など、企業によって違いがあるようです。

「民間給与の実態(令和3年職種別民間給与実態調査の結果)」によると、家族手当がある企業のうち74.5%が配偶者に家族手当を支給しています。さらに、収入制限を設けているケースは、そのうちの86.7%となっています。

収入制限の実態は次のとおりです。

出典:民間給与の実態(令和3年職種別民間給与実態調査の結果)|人事院

このように、103万円と130万円の収入制限が全体の80%を超えていることがわかります。

家族手当の相場
厚生労働省が公表している「令和2年就労条件総合調査」によると、家族手当や扶養手当、育児支援手当などの1人あたりの平均支給額は1万7,600円となっています。企業規模別で見ると、規模が大きい企業ほど支給額が高いことがわかります。

企業規模別の支給額は次のとおりです。

出典:令和2年就労条件総合調査(賃金制度)|厚生労働省

上記の表からわかるように、規模が1,000人以上の企業と30~99人の企業では、家族手当などの支給額に約1万円の差があります。

家族手当のメリット・デメリット

家族手当の支給にはメリットだけではなく、一定のデメリットも考えられます。ここでは、どのようなメリットとデメリットがあるのかについて解説します。

家族手当のメリット
家族手当には従業員側と企業側、双方にメリットがあると考えられます。家族が多い従業員にとっては家計の負担が大きいため、基本給にプラスして家族手当が支給されれば負担を軽減できることがメリットです。

企業にとっても、福利厚生を充実させることで従業員満足度が向上し、離職防止につながるかもしれません。新規採用を行う際も、家族手当がない企業よりも選ばれやすくなるという効果が期待できます。

家族手当のデメリット
家族手当のデメリットで大きいのは従業員の不公平感です。家族構成によって給与に差が出るため、単身者が不満を抱く可能性があります。収入制限がある場合、配偶者の年収によっては、共働き家庭も不満を抱くでしょう。

また、仕事の量や質とは関係なく支給されるため、積極的に企業に貢献している従業員を中心にモチベーションが低下する懸念もあります。申請条件やチェック体制によっては、不正受給が発生する可能性があることもデメリットです。時代背景的にも、共働き世帯が増え、家族手当のメリットは薄くなってきています。

家族手当が見直されている現状

家族手当を支給する企業は年々減少してきています。前述したように共働き世帯が増えたことや、家族のあり方が変化したことなどが主な原因です。また、従業員の不公平感をなくすことも、企業が家族手当を見直す理由の一つといえるでしょう。

ただし、配偶者に対する家族手当は支給条件の変更や、段階的な廃止を検討する企業も多い一方、子どもに対する手当を手厚くしている企業もあります。時代の変化に合わせて、家族手当の条件や支給金額も変わっていく傾向があるのが実情です。

まとめ

家族がいる従業員に支給される手当が家族手当です。約70%の企業で導入されていますが、企業によって支給条件や支給額は異なります。また、支給対象者である家族の収入制限(103万円や130万円)が設けられていることも多い制度です。

従業員の家計の負担を軽減できるというメリットがあるものの、不公平感を生みやすいというデメリットもあります。また、共働き世帯の増加や家族形態の多様化により、家族手当のメリットが薄くなってきているのも実情です。そのような背景から、家族手当の見直しを検討する企業も増えています。