乗降客数が世界最多と言われるメガターミナル・新宿駅を擁する新宿区。その名の由来は江戸時代にさかのぼり、甲府と日本橋を結ぶ甲州街道に設けられた「新しい宿場」という意味で新宿と名付けられました。昭和になり、百貨店や映画館、劇場などが誕生し一大繁華街に。1990年には東京都庁舎が完成し、東京の副都心として大きく発展しました。今回は近年、都市再生の動きも活発化している新宿区の住宅事情とおすすめの街を紹介します。

かつての宿場町が副都心へ発展 浄水場跡地が東京副都心の超高層ビル群に

新宿区は東京23区のほぼ中央に位置し、千代田区・港区・文京区・豊島区・中野区・渋谷区に隣接しています。面積は、東京23区で13番目の広さです。台地と低地からなる地勢で、台地の高さは標高30メートル前後。区内の最高地点は、都立戸山公園内の箱根山の標高44.6メートル。最も低いのは飯田橋付近の4.2メートルとなっています。

新宿区都市構造図(出典:新宿区都市マスタープラン)

新宿は、高遠藩主内藤家の屋敷の一部が新しい宿場町「内藤新宿」として開拓され、宿場町として発展してきました。江戸時代、新宿区の多くは武家地および寺社地となっていて、新宿御苑はかつての武家地の跡です。明治時代に、現在の新宿駅の起こりとなる「内藤新宿駅」が開業。1923年(大正12年)の関東大震災以降、新宿駅は交通の要衝となりました。昭和に入り、新宿駅の周辺に百貨店や劇場が開業し有数の繁華街へと発展。さらに新宿駅西口にあった淀橋浄水場が移転し、副都心地区として街の整備が進みました。

西新宿の高層オフィスビル群(画像素材:PIXTA)

1966年には、新宿駅西口の駅前立体広場が完成。1971年には、副都心地区最初の高層ビルとして京王プラザホテルが完成しました。その後、副都心地区には超高層ビルが相次いで建てられ、日本屈指のビジネスエリアに。1990年には東京都庁新庁舎が竣工、1991年開庁しました。

高度成長期を経て新宿区の人口は減少トレンドにありましたが、1997年を底に都心回帰によって反転。1997年1月1日時点で28万1,238人だった人口は、2022年9月1日時点で34万5,697人と大きく伸びています。

日本有数のコリアンタウンが新大久保にあるなど、外国人の居住割合が高いのも新宿区の特徴です。2022年9月1日時点の新宿区の外国人居住者は3万8,661人。新宿区の人口の全体の11%を超え、東京23区内トップの比率となっています。

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コリアンタウンとして知られる新大久保の街並み(画像素材:PIXTA)

【新宿区のデータ】
総面積…18.23平方キロメートル
人口…34万5,697(2022年9月1日時点)
世帯数…22万2,424 (2022年9月1日時点)

世界トップクラスの利用者数を誇る新宿駅 交通利便性の高さが新宿区の魅力

JR新宿駅南口(画像素材:PIXTA)

新宿区の魅力は、鉄道やバスなどの交通網が整備された交通利便性の高さにあります。東京23区のほぼ中央に位置し、渋谷、池袋、東京、六本木といった商業・ビジネスエリアへ軽快にアクセスできます。

新宿駅西口側のビル群(筆者撮影)

その中心となる新宿駅は、JR山手線・中央線・埼京線・湘南新宿ライン・成田エクスプレス、京王線、京王新線、小田急小田原線、東京メトロ丸ノ内線、都営新宿線・大江戸線の11路線が利用可能。西武新宿線の西武新宿駅も徒歩圏となっています。

JR中央線利用で東京駅へは約14分。湘南新宿ラインで渋谷駅へは約5分です。さらに、新宿区内には東京メトロ東西線・有楽町線・副都心線、都電荒川線なども通っており、首都圏の各方面へスムーズにアクセスできます。また、2016年に新宿駅南口に開業したバスタ新宿は多くの高速バスが発着し、日本各地と結ばれています。2020年7月には、JR新宿駅構内の西口側と東口側を結ぶ東西自由通路が開通。構内の回遊性を高めるとともに来街者の利便性をアップしています。

JR新宿駅とタカシマヤタイムズスクエア(画像素材:PIXTA)

お買い物もエンタメも食事も! オフタイムを楽しめる施設が充実

多くの商業施設が集まる商業利便性の高さも新宿区の魅力です。新宿駅周辺には伊勢丹新宿店をはじめ、タカシマヤタイムズスクエア、新宿西口ハルクなど多くの商業施設が集積。Flags(フラッグス)、NEWoMan SHINJUKU(ニュウマンシンジュク)といった商業ビルも。新宿アルタは待ち合わせ場所としても有名です。また、日本有数の繁華街として知られる歌舞伎町があるなど、飲食店やレジャー、エンターテインメントのスポットも豊富です。

新宿東宝ビルと建設中の東急歌舞伎町タワー(画像素材:PIXTA)

外国人観光客にも人気があり、2015年新宿コマ劇場跡地に開業した新宿東宝ビル(ホテルグレイスリー新宿)をはじめ、多くのホテルがオープン。2023年春には、新宿ミラノ座跡地に国内最大級のホテル×エンタメ施設複合タワーとなる東急歌舞伎町タワーが開業する予定です。地上48階建て高さ約225メートルのホテル、劇場、映画館、店舗などで構成される超高層複合施設で、エンターテインメントフードホール、アミューズメントコンプレックス、次世代型アトラクション体験施設、ウェルネスエンターテインメント施設なども設けられます。

新宿駅周辺だけでなく、学生の街として知られる高田馬場や石畳の路地散策が楽しい神楽坂は、多くの飲食店がそろっています。オフタイムに気軽に出かけられる商業・レジャースポットが豊富にあるのは新宿区で暮らす魅力でしょう。

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高田馬場駅 / 神楽坂駅

自然を感じながら憩いの時間を過ごせる広大で美しい公園も

都心にありながら身近に自然があるのも新宿区の特徴です。明治期にかつての武家屋敷から新宿植物御苑となった現在の新宿御苑は、約58.3ヘクタールで東京ドーム約13個分もの広さ。中学生以下は入園無料で、桜の名所としても知られるなど、都会のオアシスとなっています。

また、戸山公園は大久保地区と箱根山地区に広がる広大な公園。箱根山地区の一帯は尾張徳川家下屋敷「戸山莊」があった場所。築山によって現在の箱根山が造られ、大名庭園となっていました。大久保地区は園内に新宿スポーツセンター、芝生広場、子供の広場などが設けられています。

また、早稲田大学(早稲田・戸山・西早稲田)や学習院女子大学(西早稲田)、東京理科大学(神楽坂)などの大学のキャンパスも区内に点在しています。早稲田大学のように社会人向けの公開講座を設けている大学もあり、自然や学びの場があるのも新宿区の魅力でしょう。

早稲田大学正門(画像素材:PIXTA)

木造密集地域の解消など四谷、富久、西新宿などで市街地再開発が進む

市街化がいち早く進んだ新宿区では、災害に弱い老朽化した建物のある木造住宅密集地域の解消が課題となっています。新宿区では、街路整備や無電柱化などを支援することで街の安全性を高めています。市街地再開発事業も活発です。丸ノ内線新宿御苑前駅と曙橋駅の間に広がる、約2.6ヘクタールの区域におよぶ「西富久地区第一種市街地再開発事業」では、55階建て約 180メートルの分譲タワーマンションをはじめとする複合再開発プロジェクト「富久クロス」が2015年に竣工。スーパーやクリニックなど多彩な施設がそろう分譲マンション「富久クロスコンフォートタワー」は、中古市場で人気があります。

また、「四谷駅前地区第一種市街地再開発事業」では、2020年に四ツ谷駅前地区の約2.4ヘクタールの区域で、オフィス・商業・住宅・教育・公益施設等の多機能施設を整備した大規模複合施設「コモレ四谷」が竣工・街開きを行いました。敷地内に豊富な緑地を設けている分譲マンション「ザ・レジデンス四谷」は、高倍率で人気になりました。

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新宿御苑前駅 / 曙橋駅 / 四ツ谷駅

コモレ四谷の開発街区(筆者撮影)

さらに、西新宿でも市街地再開発が活発化しています。「西新宿五丁目中央北地区第一種市街地再開発事業」では、分譲マンションとしては当時最高層となる60階建てとなるザ・パークハウス 西新宿タワー60が2017年に竣工。1,900平方メートルの公開空地も設けられました。

このほか、「西新宿五丁目北地区防災街区整備事業」や「西新宿五丁目中央南地区第一種市街地再開発事業」も進行中。分譲マンションや賃貸住宅、オフィスなどが整備されています。西新宿は狭小戸建てが密集するエリアでしたが、事業化によって大きな街区となり、防災性が強化。街の安全性が高まるだけでなく、人の流入で新たなコミュニティーも育まれています。

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西新宿五丁目に建つザ・パークハウス 西新宿タワー60(筆者撮影)

新宿区の住まい探しはマンションが中心 価格上昇で3LDKは1億を超える水準に

既成市街地が広がる新宿区では、新築戸建ての分譲は落合地区などに限られ、新築マンションや中古マンションが流通の中心となります。新築マンションは、富久クロスや西新宿五丁目のような大規模な再開発マンションなどの供給は限定的で、小・中規模の中高層のマンションが分譲の中心となります。

比較的供給が多いのは都営大江戸線沿線で、若松河田駅や牛込柳町駅、牛込神楽坂駅などでの分譲が目立ちます。都心エリアである新宿区は、マンション価格も大きく上昇しています。坪単価も上昇傾向にあり、3LDKタイプのマンションなら1億円を超えるものも少なくありません。

ザ・レジデンス四谷の外観(筆者撮影)

東京23区のほぼ中央に位置するため、新宿区内であれば都心のビジネスエリアへのアクセスは良好です。その中でも、飯田橋駅はJR中央線・総武線、東京メトロ東西線・有楽町線・南北線、都営大江戸線が利用できるターミナル駅。新宿区内の多くの沿線が飯田橋を通っており、乗り換えで東京、有楽町、新宿、池袋、大手町など都心のビジネスエリアへアクセスできます。

通勤利便性で選ぶなら、駅を絞らず路線で選ぶのも良いかもしれません。築浅の中古マンションは高価格帯のものが中心ですが、マンションストックの多い新宿区では、過去に分譲が多かった東京メトロ東西線早稲田駅をはじめ、一定の中古流通があります。大手町や日本橋へのアクセスなら東京メトロ東西線、東京、御茶ノ水方面ならJR中央線・総武線、東京メトロ丸ノ内線、渋谷方面なら東京メトロ副都心線などがアクセスしやすいでしょう。

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若松河田駅 / 牛込柳町駅 / 牛込神楽坂駅 / 早稲田駅

次に筆者おすすめの街を3つ紹介します。

歴史をしのばせる路地の石畳や多彩なお店がそろう、にぎわいある商店街が魅力の神楽坂

神楽坂にある赤城神社の境内(筆者撮影)

一つ目は、東京メトロ東西線神楽坂駅です。神楽坂という名の通り、江戸情緒あふれる石畳の路地と花街で有名な坂の街です。駅の開業は東京メトロ東西線が開通した1964年ですが、神楽坂駅近くにある赤城神社が日枝神社、神田明神とともに江戸の三社と称されたように江戸の頃からにぎわいがありました。明治以降、泉鏡花や尾崎紅葉などの文人が居を構えるなど居住者が増え、商店街も形成されました。

神楽坂には、江戸や明治のころをしのばせる石畳の路地が多く残っており、路地裏には料亭やレストランなどが軒を連ねます。

神楽坂通りの街並み(筆者撮影)

神楽坂の魅力は、神楽坂通りをはじめとする活気ある街並みです。神楽坂上から飯田橋方面に向かってスーパー、総菜屋など多彩なお店が並び、買い物に便利。カフェやレストランなども豊富にあるほか、和食やフレンチなどの名店も多く、食を思う存分楽しめる街です。

神楽坂の街並み(筆者撮影)

神楽坂駅からは東京メトロ東西線で、大手町へ直通アクセス。飯田橋駅も隣駅で多方面へのアクセスに便利です。坂のある街だけに徒歩や自転車での移動にはやや難がありますが、街の雰囲気を楽しみながら歩くのも心地よいエリアです。

神楽坂のタワーマンション(筆者撮影)

人気の街だけに中古マンションでも予算は必要で、3LDKタイプで1億円前後はみておきたいところです。単身向けの供給が多く、1LDKタイプの中古マンションなら5,000万円程度の予算から検討可能です。コンビニエンスストアなども多いため、単身者にも暮らしやすい住環境と言えるでしょう。通勤アクセスにこだわるなら神楽坂という選択も良いかもしれません。

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再開発でタワーマンションが続々誕生 商業利便&新宿中央公園の緑が身近な西新宿

次に紹介するのが、西新宿駅です。

西新宿駅から歩いて10分程度にある西新宿五丁目近辺は、木造住宅密集地域の解消に向けて再開発が進行中です。現在「西新宿五丁目北地区防災街区整備事業」によって、分譲マンション棟である地上35階建てのシティタワー新宿の建設と「西新宿五丁目中央南地区第一種市街地再開発事業」によって地上40階建てのパークタワー西新宿の建設が進んでいます。

西新宿の街並み(筆者撮影)

2つの街区の間には、「西新宿五丁目中央北地区第一種市街地再開発事業」で2017年に完成した「ザ・パークハウス 西新宿タワー60」が立地します。3つの街区が完成すれば、広範囲に街並みが整備され、より一層安全な街として暮らしやすくなるでしょう。

西新宿五丁目の街並み(筆者撮影)

3街区が面する十二社通りを南へ進むと十二社熊野神社の境内と新宿中央公園の緑が広がります。東京都庁の隣に広がる緑地は、新宿区立の公園では最大の広さ。新宿駅へも徒歩圏の商業利便性だけでなく、身近に自然があるのは西新宿に住まう大きな魅力でしょう。

新宿中央公園と東京都庁(画像素材:PIXTA)

西新宿エリアでは、今後販売が予定されている新築マンションのほか、中古マンションが検討の対象となります。タワーマンションが多く流通しているため中古での3LDKタイプでは1億円前後、2LDKタイプでも7,000万円程度の予算は必要になります。

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新宿御苑の自然が四季を通じて楽しめる新宿御苑前

3つ目に紹介するのが新宿御苑前駅です。

新宿御苑の入り口(筆者撮影)

新宿御苑前駅は、名前の通り新宿御苑に近い東京メトロ丸ノ内線の駅。新宿御苑の先には神宮外苑があり、山手線の内側でこれだけ豊かな自然がある場所には、そうそう出合えないでしょう。

新宿御苑から見たマンション(筆者撮影)

新宿御苑から程近い新宿駅東口界隈は、生活圏に伊勢丹新宿店などがあり、商業施設も身近。しゃれたカフェやレストランも豊富にあります。新宿御苑では、一般2,000円で年間パスポートを発行しており、春の桜や秋の紅葉など一年を通じて楽しめます。オフタイムが充実する憩いの場が身近にあるのは新宿御苑に暮らすメリットの一つでしょう。

富久クロスコンフォートタワーの外観(筆者撮影)

マンションの中には新宿御苑を一望できる眺望の良い住戸もありますが、人気があるため流通件数が限られます。富久クロスコンフォートタワーやライオンズ四谷タワーゲートなど戸数規模のあるタワーマンションは中古流通も一定数あります。過去には新宿御苑向かいのマンションも分譲されましたが、高倍率で人気に。好立地のマンションを購入できる機会は限られています。築浅マンションの中古流通価格は、2LDKタイプでも9,000万円を超えています。自然環境に恵まれた場所だけに、相応の予算は必要になります。

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10年後の街の進化が楽しみな新宿区

多彩な魅力がある新宿区ですが、留意点もあります。その一つが道路事情で、中央区や千代田区など他の都心エリアと比べ道路幅が狭いところが多く、神楽坂や四谷周辺など高低差が大きなところも。落合、高田馬場を経由して飯田橋方面に流れる神田川水域は、過去に浸水被害が発生しています。近年は、神田川・環状七号線地下調節池の建設などにより浸水被害は抑止されていますが、集中豪雨などによる増水もあり注意が必要です。新宿区のハザードマップを確認しましょう。

新宿駅の小田急百貨店新宿店本館(筆者撮影)

現在、新宿駅では、(仮称)新宿駅西口再開発事業が進行しています。小田急百貨店新宿店本館などの跡地を建て替えるプロジェクトで、計画では地上48階建ての超高層ビルに生まれ変わります。歩行者ネットワークやにぎわいある滞留空間、ビジネス創発機能などを整備するとともに防災機能の強化や環境負荷の低減をはかっています。竣工は2029年度予定で、完成すれば街の姿も一変するでしょう。

新宿駅西口地区開発計画における計画建物イメージパース(画像出典:2022年2月9日 小田急電鉄株式会社 東急不動産株式会社 リリース)

2022年9月1日時点の新宿区住民基本台帳によれば、新宿区に住民登録した外国人の国籍数は、128ヶ国にもおよびます。多彩な文化と触れ合い、オフタイムも充実する新宿区の暮らし。街の再開発で将来性も期待できそうです。新宿駅周辺の再開発など、これからの10年で街は大きく進化するでしょう。東京の中心で暮らしを大いに楽しみたいなら、新宿区での住宅購入を検討してみてはいかがでしょうか。

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