銀行口座は複数持つと目的別に使い分けられ、お金の管理がしやすくなります。また、複数の銀行口座を持つことで、リスクの分散につながる、お金を貯めやすくなるなどのメリットもあります。今回は、複数の銀行口座を持つことのメリットと便利な使い分け方を紹介します。

銀行口座を複数持つことは可能?

かつては同じ金融機関で複数の口座を持てましたが、現在は多くの金融機関で原則として1人1口座のみとなっています。別々の支店で開設することもできません。近年増えている預金口座を悪用した犯罪を防止するため、また休眠口座を増やさないためです。

ただし、特別な理由があり、金融機関が妥当と判断した場合には複数の口座が認められることもあります。しかし、基本的には1人1口座のため、複数の口座を作る場合は別々の金融機関で開設するのが一般的です。

銀行口座を複数持つメリット

では、複数の銀行口座を持つことでどのようなメリットが得られるでしょうか。ここでは、代表的な3つのメリットについて解説します。

銀行が破綻した場合に備えられる
異なる金融機関に口座を持つことにより、金融機関が破綻した際のリスクを回避できます。普段利用している金融機関が万一破綻してしまった場合、必要なお金をすぐに引き出せなくなるかもしれません。複数の金融機関に預金を分散させておけば、こうした事態にも慌てずに済みます。

なお、破綻した金融機関が預金保険制度に加盟していれば、ペイオフ方式によって預金者1人につき元本1,000万円までと、破綻した時点までの利息が保護されます。保護範囲を超える部分は金融機関の財産状況によって一部カットされてしまう可能性もあるため、預金は複数の金融機関に分散したほうが安心です。

参考元:預金保険機構「預金保険制度の概要」

お金の管理がしやすくなる
1つの口座でお金を管理していると、何にいくら使ったのかがわかりにくくなります。残高があることに安心して、つい使いすぎてしまうといったことも起こりがちです。

適切に家計を管理するためには、日常的に使う生活費と、貯蓄や緊急時に使うお金は分けて管理したほうがよいでしょう。目的別に口座を分けておけば、お金の管理がぐっとラクになります。通帳に入出金の記録が残るので、ちょっとした家計簿代わりにも使えます。

定期預金口座を利用すると貯蓄がしやすくなる
お金を貯めるには、貯蓄専用の口座を作るのがおすすめです。余ったら貯蓄するという意識では、なかなかお金は貯まりません。収入があったらまず一定額を貯蓄用の口座に入れるようにしましょう。

貯蓄用の口座は気軽に引き出せる普通預金ではなく、一定期間は引き出せない定期預金にすると貯まりやすくなります。普通預金で貯蓄する場合は、キャッシュカードを作らない、持ち歩かないなどの工夫をすることも大切です。

銀行口座は目的別に使い分けよう!

銀行口座は、ライフスタイルに合わせて複数を使い分けるのがおすすめです。ここでは、口座をどのように使い分けるのか具体例を紹介します。

収入用
収入用の口座は、給与や事業収入の振込先に使用します。給与振り込みでは会社から金融機関を指定されることもありますが、自分で決められる場合は利便性の高い金融機関を選ぶようにしましょう。

新しく口座を作る際は、自宅や会社の近くにATMがある金融機関を選ぶと便利です。専用ATMのほか、コンビニエンスストアやスーパーなどの提携ATMが利用できるかも確認することをおすすめします。時間外や土日祝日には利用手数料がかかるので、手数料の安さもチェックするようにしてください。

生活費用
生活費用の口座は食費や交通費などの現金を管理するほか、家賃や水道光熱費、クレジットカードなどの引き落としに利用します。収入用の口座をそのまま利用すれば、お金を移動させる手間が省けます。ただし、生活費の残高がわかりにくくなるため、うっかり使いすぎてしまいがちです。

あえて生活費用の口座に分けることで、限られた金額でやりくりをする意識が高まり、ムダ遣いを防げます。利用頻度が高くなるため、収入用口座と同じく利便性の高い金融機関を選ぶようにしましょう。

貯蓄用
貯蓄用の口座には、住宅・車の購入資金や老後の生活資金など、まとまったお金を貯めておきます。お金を殖やすために、なるべく金利の高い金融機関を選ぶことがポイントです。引き出しにくい定期預金にするのもよいでしょう。

着実にお金を貯めていくには「先取り貯蓄」が効果的です。収入用の口座に入金があったら、まず一定額を貯蓄用口座に移動するようにしましょう。金融機関によっては、毎月決まった日に決まった額をほかの口座から自動的に振り込めるサービスを提供しています。お金を移す手間が省けるうえ、確実に貯蓄できるのでおすすめです。また、会社に財形貯蓄制度があれば、そちらを利用することも検討してみてください。

投資用
株や債券などの投資を行う場合は、証券会社に口座を開設する必要があります。特に、投資で得た利益に対する税金が非課税になるNISA(ニーサ)口座の開設がおすすめです。一般NISAは最大5年間、つみたてNISAは最大20年間、投資で得た利益が非課税になります。

住宅ローンの返済用
マイホーム購入に住宅ローンを利用する場合は、融資を申し込む金融機関の口座が必要になります。住宅ローンの借入金は申込者本人名義の口座に振り込まれ、決済後に同じ口座から自動引き落としで返済していくのが一般的です。

住宅ローンを申し込む金融機関の口座をすでに持っている場合はそのまま利用できますが、口座がない場合は新たに開設しなくてはなりません。また、引き落とし日に残高不足にならないよう注意する必要があります。

子どもの教育費用
子どもの教育費用も、口座を分けたほうが管理しやすいでしょう。子ども名義の口座を作れば、生活費などで使ってしまうのを防げます。ただし、子ども名義の口座へ年間110万円以上の入金をした場合、贈与税が課される可能性があるので注意してください。

また、金融機関によっては親といえども勝手に引き出したり解約したりすることができない場合があります。たとえば、大学に支払う学費を子ども名義の口座から引き出す際にも、委任状が求められるケースがあるため注意が必要です。親が自分で管理したい場合は、親名義の通帳で管理したほうがよいでしょう。

緊急用
病気や失業などで想定外のお金がかかる場合に備え、緊急用の口座もつくっておくと安心です。半年から1年分の生活費を目安にキープしておけば、急にお金が必要になったときにも貯蓄を取り崩す必要がありません。貯蓄用口座は目的をもって貯めるお金、緊急用口座は予備費として、分けて考えるようにしましょう。

ただし、10年以上取引がない状態で口座を放置しておくと休眠預金になるおそれがあります。特に、引越しの後に住所変更を行っていない場合、銀行からの通知が届かないため注意が必要です。休眠口座になっても引き出しは可能ですが、口座再開や払戻しの手続きが必要になり、緊急時にすぐに引き出せない可能性があります。

まとめ

生活費用や貯蓄用など目的別に複数の口座を使い分けると、お金の管理がしやすくて便利です。ただし、同じ金融機関では1人1口座が原則となっています。複数の口座を持つにはそれぞれ異なる金融機関で開設する必要があります。利便性なども考慮しながら、目的やライフスタイルに合った金融機関を選ぶようにしましょう。