NASAは地球へと飛来する小惑星や彗星(すいせい)の軌道をずらす技術を確立するため、「小惑星に宇宙船をぶつけて軌道をずらす」という世界初のミッション「DART」を行い、実験は無事に成功しました。衝突寸前の宇宙船から捉えた小惑星の映像も公開されています。

NASA just redirected an asteroid by smashing a spacecraft into it | Live Science

https://www.livescience.com/dart-smashes-into-dimorphos-asteroid

A NASA Spacecraft Is About to Collide With an Asteroid. Watch Live Here : ScienceAlert

https://www.sciencealert.com/a-nasa-spacecraft-will-collide-with-an-asteroid-on-monday-watch-live-here

NASA Live Updates: DART Makes Contact With the Asteroid Dimorphos - The New York Times

https://www.nytimes.com/live/2022/09/26/science/nasa-dart-asteroid-mission

Watch Live as NASA Deliberately Crashes a Spacecraft Into Asteroid Dimorphos - CNET

https://www.cnet.com/science/space/watch-live-as-nasa-deliberately-crashes-a-spacecraft-into-asteroid-dimorphos/

小惑星や彗星に宇宙船をぶつけることで、これらの軌道をずらすという世界初のミッションが「DART」です。DARTはNASAがジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所と進めているミッションで、対象となるのは二重小惑星の「ディディモス」という天体です。ディディモスは直径780メートルのディディモスA(ディディモス)と、これの周りを周回する直径160メートルのディディモスB(ディモルフォス)のペアにより成り立っています。DARTは「今後起きうる地球に飛来する危険な天体の軌道をずらす」際のデモンストレーションになると考えられています。

地球に接近する小惑星に宇宙機を衝突させて地球を守る方法の検証実験をNASAが2022年に実施へ - GIGAZINE



そして現地時間の2022年9月26日(月)19時14分、ミッションの一環として打ち上げられたDARTと呼ばれる宇宙船をディモルフォスに衝突させ、予定軌道からそらすことに成功しました。打ち上げられたDARTは重量1210ポンド(約550kg)で、センサー、アンテナ、イオンスラスター、28フィート(約8.5メートル)の2つのソーラーアレイを搭載しています。衝突時のディモルフォスは、時速2万1160kmの速度で移動していたそうです。

DARTがディモルフォスに衝突する直前の映像は、以下の動画の1時間4分頃から確認できます。衝突したのは1時間16分24秒頃で、ミッションの成功に沸くNASAの管制室の様子も確認可能です。

DART's Impact with Asteroid Dimorphos (Official NASA Broadcast) - YouTube

DARTに搭載されたDidymos Reconnaissance and Asteroid Camera for Optical Navigation(DRACO)が捉えたディモルフォスの様子。NASAの研究者によると、衝突1時間前の段階ではDRACOのカメラにもディモルフォスの姿は映っていなかったそうです。なお、DRACOは映像撮影だけでなくDARTをディモルフォスとの衝突軌道へ誘導するためにも使用されています。



徐々に近づいていき……



ディモルフォスの地表がよく確認できるところまできて、画面右下に「IMPACT(衝突)」の文字が表示されます。



その後、DARTのカメラの映像は途絶えます。



NASAの惑星科学部門のディレクターを務めるロリ・グレイズ氏は、DARTミッションの成功について「DARTの目標は、ディモルフォスが周回するより大きな天体であるディディモスの軌道をそらすことでした。ディモルフォスの12時間軌道(ディモルフォスは約12時間でディディモスを周回している)が73秒遅くなれば、NASAはミッションが成功したとみなしますが、実際の変化は最大10分ほどにもなる可能性があります」と語りました。

なお、ディモルフォスに衝突したDARTは、アメリカ・カリフォルニア州にあるヴァンデンバーグ宇宙軍基地にある発射台からSpaceXのファルコン9に積載して打ち上げられました。

また、9月11日にDARTから分離した小型宇宙船・キューブサットの「LICIACube」を用いることで、DARTとディモルフォスの衝突直後の様子をより詳細に観察することも可能です。LICIACubeは衝突の余波を受けながら、天体のかけらなどの写真を撮影して地球に送信する予定となっています。

さらに、2026年には欧州宇宙機関(ESA)がディディモスの観測を行うための「Hera」というミッションを計画しており、DARTの衝突の影響をさらに詳細に調査する予定となっています。

「小惑星の軌道を変更して地球防衛の可能性を調査するミッション」に向けてESAが160億円規模の契約を締結 - GIGAZINE