胃がんの発症リスクがわかるABC検診とは!? 医師が検査方法や受ける頻度などを解説

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胃がんは日本において、罹患数、死亡数ともに上位となっているがんです。しかし、早期に見つけることができれば、治療ができる病気のため、早期発見の必要性が叫ばれています。胃がんの早期発見につながる検査として、注目を集めているのがABC検診。一体、どのような内容なのか、みらいメディカルクリニック茗荷谷院長の浜口先生に教えてもらいました。

胃がんABC検診とは?

編集部

胃がんABC検診とはなんですか?

浜口先生

内視鏡検査のように直接、目で見て胃がんそのものを発見する検査ではなく、血液検査によって胃がんのリスクを調べる検査のことを「胃がんABC検診」といいます。

編集部

もう少し詳しく検診方法について教えてください。

浜口先生

具体的には、まず一次スクリーニングとして、ピロリ菌感染の有無を調べる検査と、胃粘膜の萎縮の状態を調べる検査を行います。その結果、胃がんのリスクが高いと考えられる人には、二次の精密検査として内視鏡検査を行います。

編集部

ABCとはどういう意味ですか?

浜口先生

一次スクリーニングの結果を、胃がんのリスク別にA群からD群まで階層化します。C群とD群は区別せず、C群としてまとめられる場合もあり、A・B・(C+D)の3群による胃がんリスク層別化をすることからABC検診といわれます。B、C、D群に該当する人には、二次の精密検査を受けることが推奨されます。

編集部

「内視鏡検査と違って、胃がんのリスクを調べる」とはどういうことですか?

浜口先生

内視鏡検査の場合は、直接、医師が胃の様子をカメラで見て、胃がんができているかどうかを判断します。しかし、胃がんABC検診の場合は、あくまでも胃がんになりやすいかどうかを調べる検査であり、胃がんそのものを発見するものではありません。そのため早期発見というよりも、予防に役立てるための検査といえるでしょう。

検診はどのように行われる? どんな項目があるの?

編集部

具体的に、どのような検査が行われるのですか?

浜口先生

まず、ピロリ菌感染の有無を調べるピロリ菌抗体検査では、血液中の抗体を測定することで、ピロリ菌の感染について調べます。ピロリ菌とは胃にいる菌のことで、強酸性の胃の中でも生き続けることができます。

編集部

どれくらいの確率で、ピロリ菌が見つかるのですか?

浜口先生

ピロリ菌の感染率は出生年代によって異なり、だんだん低下してきています。最近の研究では、1950年代以前の生まれで40%以上、1960年代、1970年代生まれで20-30%、1980年代生まれで約10%と報告されています。

編集部

ピロリ菌が胃の中にいると、どうなるのですか?

浜口先生

慢性的な胃粘膜の炎症を引き起こし、胃・十二指腸潰瘍萎縮性胃炎の原因になると考えられています。また最近の研究により、ピロリ菌に感染していなければ、胃がんの発症は少ないということも確認されており、世界的にピロリ菌が胃がんを誘発すると考えられています。

編集部

続いて、胃粘膜の萎縮の状態を調べる検査とはどのようなものですか?

浜口先生

具体的には、ペプシノゲンの産生状態を調べる検査です。ペプシノゲンは、胃の細胞から分泌され、タンパク質の消化酵素「ペプシン」の基となる物質のこと。ペプシノゲンは一部が血中に流出するため、血中濃度を測定することで、胃粘膜でのペプシノゲン産生度が分かります。

編集部

産生度によって、どのようなことがわかるのですか?

浜口先生

ペプシノゲンは胃粘膜が萎縮すると低下し、また、胃粘膜の萎縮が強いほど、胃がんのリスクが高まるといわれています。

編集部

それらの結果を総合して、胃がんのリスクを考えるのですね。

浜口先生

そうです。当院では、検査でピロリ菌がいることがわかったら、1週間の除菌療法を推奨しています。さらにB以上のリスクと診断された方は、リスクに応じた間隔で胃の内視鏡検査をお勧めしています。

胃がんABC検診は一生に1度でOK! どのタイミングで受けるべき?

編集部

胃がんABC検診はどんなタイミングで受ければ良いのでしょうか?

浜口先生

胃がんABC検診に、年齢制限はありませんから、人間ドックや職場の健康診断などと同じタイミングで受ければ良いでしょう。未成年の場合、ピロリ菌が陽性でも胃粘膜の萎縮が進んでいることは少ないため、ピロリ菌の検査だけ行うのも良いでしょう。

編集部

ピロリ菌がいた場合はどうしたら良いでしょうか?

浜口先生

ピロリ菌がいた場合には除去したり、場合によっては内視鏡検査を受けたりすることをお勧めします。

編集部

どれくらいの頻度で受けたら良いのですか?

浜口先生

基本的に一生に1度の検査で大丈夫です。ただし、B~D群と診断された場合には、その後も継続してケアすることが大切です。医師の指示に従って内視鏡検査を受けたり、ピロリ菌除菌療法を行ったりする必要があります。A群の場合でも、中年以降であれば健康診断や人間ドックで、胃のバリウム検査や内視鏡検査を受けておくとより安心です。

編集部

胃がんABC検診はどこで受けられるのですか?

浜口先生

基本的に、血液検査を行っている医療機関であればどこでも受けられることが多いのですが、事前に確認しておくことをお勧めします。通常、人間ドックでもオプションで追加することができます。

編集部

胃がんABC検診を受ければ、内視鏡検査やバリウム検査を受けなくても良いということですか?

浜口先生

いいえ、胃がんABC検診はあくまでも胃がんのリスクを調べるもの。A群と診断された人でも、確実に胃がんにならないわけではありません。A群と診断されても、一度は内視鏡検査やバリウム検査を受けることをお勧めします。B群以降の方は、定期的に胃の内視鏡検査を受けましょう。特に、高齢の方は血液検査だけでは不十分な場合もあるので、胃内視鏡検査でも確認しておくことが大切です。

編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

浜口先生

もしABC検診で何も問題がなかったとしても、1年おきに胃内視鏡検査やバリウム検査を受けると良いでしょう。また、両親にピロリ菌が見つかった人は、小さい時に菌をもらっている可能性があります。その場合も念のためABC検診を受け、ピロリ菌の有無を確認しておくことをお勧めします。胃がんは早期発見がとても重要ながん。リスクを把握しておくことで、早期発見につなげやすくなります。ぜひ、積極的にABC検診を活用しましょう。

編集部まとめ

胃がんの初期は自覚症状がなく、早期がんの多くががん検診で見つかっているという報告もあります。気になる症状がないとしても、定期的に胃がんABC検診や内視鏡検査などを受け、早期発見に努めることが大切です。

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