フレームレスで細身と軽さを追うDUCATI!【ライドナレッジ072】(ピックアップ)
メインフレームを持たないため、V4エンジンにボルトオンされるフロントフォークを支えるステアリングヘッドのパーツ
スイングアームのピボット部分とステアリングヘッドとが繋がっていない大胆さは、ドゥカティとして変わらず貫いてきたイタリアンの信念を感じさせる
意外に思うかも知れないが、たとえばMotoGPのような最高峰のレースで、斬新でチャレンジングな技術は投入されにくい。勝つためには手段を選ばず……ではなく、勝つためには実績のない技術に手こずる遠回りはしたくないからだ。
そんなレース界で、ドゥカティはひときわ異彩を放ってきた。デスモセディチ(強制開閉=デスモ&セディチ=V4の16バルブ)と苦労するだろう新エンジンでの参戦、そして躊躇する様子も見せずモノコック風にメインフレームを持たない車体構成で突き進んできた。
そして日本メーカーと互角に闘い、間髪入れず製品の頂点パニガーレにV4を投入、市販車でもメインフレームは最初から存在してない。
これで車体剛性は大丈夫なのか、いわゆるフレームのしなりとか高度な感性は無視されているのか、当初はそんな憶測も飛び交ったが結局パニガーレV4のハンドリングに乗りにくさを唱える声は聞いたこともない。いわばエンジンにフロントフォークと後ろのスイングアームを直接取り付けた最もシンプルな構成だ。他のメーカーがフレームに心血を注ぐ苦労に、目もくれていないかのようだ。
フレームメーカーの多い英国が源流のパイプ(鋼管)で構成する’70年代まで典型だったダブルクレードル。ゆりかご(クレードル)のカタチからそう呼ばれ、エンジンはフレームに載せられていた
対してドゥカティは最初の大型スーパースポーツ’74年の750SSで、90°Lツイン・エンジンのカタチを強度メンバーとして活用、ほぼ単気筒の細身で鋭いハンドリングを狙いその後にF1パンタでトレリスフレームへ発展した
そのトレリスを受け継ぎ名実ともに世界のトップへ君臨した’93モデルの916と設計したタンブリーニ氏。スイングアームのピボットをエンジンケースに持つF1以来の大胆な手法が磨かれていった
2008モデルの1098R。トレリスフレームの基本は変わらず、既にエンジンへフロントフォークを取り付けるステーの発想が垣間みえる
1199でLツインはトレリスからモノコックへと思いきった変貌を遂げ、V4パニガーレへの道筋を示した
パニガーレV4でパーツと化したステアリングヘッドなど、さらに軽量で高剛性なカーボン素材に置き換えた2020モデルのスーパーレッジェーラ。アルミ鋳造からカーボンと素材の特性も異なるため、パニガーレのパーツとは形状から異なる。レッジェーラ(軽量の意味)のスーパーモデルの車重は250cc並みの159kg!
デスモ(強制開閉バルブ)で中型から世界GPまで挑戦をはじめたドゥカティは、初代大型スーパースポーツ750SSで、フレームにエンジンを載せるという発想ではなく、車体の強度メンバーとしてエンジンを考えていた。以来、フレームというよりエンジンにフロントフォークを装着するステーといった発想がベースになり、スイングアームはエンジンケースに共有するため、メインフレームが存在しない車体構成で進化。
これだけのモデル数で積み上げてきた日本メーカーにはないノウハウは、これからさらに独自性の高いバイクづくりへと繋がるポテンシャルを感じさせる。
そこには実績のない技術に手こずる遠回りなど意に介さないチャレンジャーとしての姿勢が明確だ。