全盛期の英国製オートバイは、私たちが一番理解している

1961年、多くのバイクファンがカフェに仕立てたBSA GOLD STAR

2022年、甦ったGOLD STARがまず英国からデリバリーが開始される

英国のビッグバイクメーカーといえば、現在はトライアンフが知られているが、1960年代の英国勢全盛期には、そのトライアンフも傘下にしてしまうBSAが、年間5万台を販売する世界最大のスポーツバイクメーカーだった。
1861年、銃と弾薬のメーカー、バーミンガム・スモール・アームズ、略してBSAが創業し、1881年に自転車の製造をはじめダイムラーの自動車生産を買収するなど、第一世界大戦で英国軍の装備に大きく貢献する成長ぶりを見せていた。
その後、日本メーカーの台頭で1972年に倒産、衰退した英国メーカーを再生するNVTプロジェクトなどあったが、間もなく全てが終焉を迎えていた。
しかしその絶頂期に多くから愛された500シングル、GOLD STARを復活させようと、2016年にインドのマヒンドラグループが設立したClassic Legends Ltd.がこのBSAブランドを取得、今回の新生ゴールドスター復活への道が切り開かれたのだった。
なぜBSA復活を思い立ったのか、そしてその初の製品が単気筒ゴールドスターなのか、Royal Enfieldの長く在籍し、トライアンフのインド生産計画に加わり、その中断後にマヒンドラグループへ移籍し、このプロジェクトを率いるAshish Joshi氏に聞いてみた。

Q:英国で工場を設立して生産する計画があるとか?

AJ:はい、ゴールドスターは現在インドの私たちの施設で生産されていますが、これを英国に持ち込むことについて英国政府と話し合っており、土地区画を検討しています。ウェストミッドランズ地域とその周辺のさまざまな場所で。バーミンガムはBSAの名前であるため、理想的にはそこでやりたいと考えていました。実は最初から英国で生産したかったのですが、コロナ禍の影響で様々な行動が2年間も制限されたので、注文した生産設備をインドへ転用する必要がありました。しかし可能な限り早くBSAの生産を英国に持ち込むつもりです。私たちは地域の公式事業拡大機関であるウェストミッドランズグロースカンパニーと緊密に協力しており、英国政府の国際貿易省に加えて、ウェストミッドランズ市長からも積極的な支援を提供されています。よく心配されるのですが、英国生産によって小売価格の上昇を伴うことはありません。

Q:これまでの経緯を概要で説明して欲しい。

AS:2016年11月にBSAブランドを買収した後、私たちは慎重に検討を重ねました。ブランドの購入は簡単ですが実際にこのブランドでオートバイを生産するとなると、すべてをどう進めていくかを決めるのは簡単ではありません。
それは英国のデザインであり、英国のオートバイであるため、私たちのやりたいことを理解して実現できる適切な人々を集めることに専念しました。
そして以前も私たちと一緒に働いていたNeil Wright率いる彼のチームに、私たちが望むものを詳細に伝えたのです。
スタイリングに関しては、少なくとも15の英国のデザインハウスと会いました。そしてクラシックな英国のオートバイだけでなく、幅広く素晴らしい理解を持っているRedlineStudioにたどり着きました。なぜなら、このモーターサイクルは完全なクラシックにはならないからです。ユーロ5の規制などを満たすために、多くのものをモダンにする必要があります。私たちが作りたかったのはBSAの伝統を正しく受け継ぐピュアなコンセプトとの融合だったのです。

Q:なぜ650ツインや500シングルではなく650シングルにしたのか?

AJ:過去の遺産で最大のオートバイで、BSAをリニューアルしたかった、それがゴールドスターでした。 500シングルこそ、ゴールドスターこそがBSA全盛期を築いた原動力であり、私たちはそこから始めたかったのです。しかし、Euro 5準拠の500シングルから今日得られるパワーとトルクの出力をより詳しく調べたとき、私たちが必要なパワーと既に成功している前例からも650のシングルを私たちの出発点として選んだのです。
ただバイブレーションについて、私たちには強いこだわりがあります。ロータックスから基本エンジンを導入することを決定したときも、私たちはエンジン設計チームへの要望で大きな位置を占めていました。

Q:ロータックスはBSAのためにエンジンを製造するのか?

AJ:いいえ、インドで既にはじめているようにエンジンはすべて私たちの製造です。
ロータックスがこのような取引を行ったのはおそらくこれが初めてで、開発を私たちに委託しました。ロータックスをベースに使いながら、英国で可能な生産技術を採り入れた設計としたのです。
基本はBMWがFunduroで使用するために構築したキャブレター付きのEuro 2デザインを採用し、Euro5に準拠するよう燃料噴射も独自に開発しました。 KTMのシングルで多くの経験を積んだオーストリアのグラーツ工科大学に依頼しました。
シングルで固有の振動を減らすために、バランス係数を52%に下げたのです。これは、他のほとんどの企業がこれまで管理してきた理想的な50%にはるかに近いものです。通常、非常に難しいため、60%程度のままにしておきます。それをはるかに低くするために非常に細かい公差に焦点を当てる必要がありました。
たとえば、クランクシャフトを所定の位置に押し込む前に液​​体窒素に浸す必要があります。50トンのプレスなどで押し込むのでは熱が発生し、正確な嵌合が得られないからです。
またオイル回路の穴が非常に小さいため、ドリルやミリングができません。そのため、EDM、つまり電子ビーム溶解と呼ばれるプロセスを使用しています。これは鋳造時にホットチューブを溶融アルミニウムに通します。結果としてこれらが功を奏して振動を低減しているのです。

Q:エンジンパッケージに続きゴールドスター全体の開発に着手したのはいつか?

AJ:5年前、2017年の夏の終わりに開始しました。英国でデザインおよび設計されており、先ほど説明したRedline Studiosがスタイリングを担当し、Neil WrightとVeproの彼のチームがシャーシ設計を含むエンジンなど動的開発を担当しました。

Q:なぜそれをレトロなモデルを製品にすることを選ぶのか?

AJ:Classic Legends Ltd.はライフスタイル企業であり、クラシックスタイルのモーターサイクルを使用したクラシックブランドとしてBSAを再開したいと考えていました。
これまでの経緯から、私たちインドは英国を除いて世界で唯一、英国のクラシックモーターサイクルの概念を正しく理解している国だと思います。私たち全員が彼らと一緒に成長してきたからです。
個人的にはロイヤルエンフィールドに乗って学びました。インドには私のような人が何十万人、何百万人もいます。私たちの新しいBSAモデルは、ピュアで、本物であり、BSAエンブレムへの期待に忠実でなければなりませんた。ゴールドスターは、私たちがBSAになりたい思いの縮図です。
そして500ccから750ccの間のシングルを検討したとき、市場にはパフォーマンスの点でクラシックタイプの製品とのギャップがありました。
日本のメーカーはツインまたはフォーを販売したいと考えます。ヨーロッパではほとんどがツインとトリプルです。
この状況でBSAは、クラシックな外観と優れたパフォーマンスを備えたユニークなビッグシングルを構築できます。私たちは皆、BSAの歴史の旅路に参加できることで非常に興奮しています。モーターサイクルの全盛期におけるそのユニークな位置に沿って、ブランドを育むために最善を尽くすことを約束します。

Q:ではBSAのターゲットはどのようなイメージか?

AJ:私たちのターゲットは、笑顔を取り戻すバイクを探している人です。年齢や性別は関係ありません。このマシンに乗ることで絶対的な楽しみを求めている人です。
このオートバイは、たとえば1日中80 mph (130 km / h)で走り続けることもできますが、たとえば50 mph(80 km/h)で乗るのはとても楽しいです。最高速度は104 mph(167 km / h)が可能ですが、それに挑戦するより30 mph(48 km/h)であなたの顔は笑顔になります。それは本当に用途が広く、柔軟なパワープラントですが、個性の山があります。
なぜならパワーとトルクを伸ばす方法で特に一生懸命取り組んできたからです。ほぼ平坦なトルク曲線があるため、1,800 rpmから上に向かって、回転帯域全体で40Nmを超えるトルクを利用でき、ピーク時はわずか4,000回転で55Nmになります。しかし、このデビューモデルでは、EUのA2ライセンス(出力で運転免許のクラスがある)に準拠するため、意図的に出力を6,000rpmで45bhpに抑えましたが、実際には、ユーロ5に準拠しながら、それよりもかなり多くのパワーを得ることもできます。

Q:最初に発売したロードスターモデルのゴールドスターの他に、多気筒BSAモデルシリーズの開発を考えているか?

AJ:はい。ただし、BSAの歴史という点では、より伝統的なバージョンだと考えていて、これは並列2気筒を意味します。これについてはすでに多くの作業を行っていますが、これに備えるには時間がかかります。自分たちの先を行き過ぎたくないのです。
最初のゴールドスターで流通とアフターサービスを正しくセットアップすることを望んでいます。これは最も重要なことであり、次にそこから先へ進めるのです。
顧客満足は私たちの最優先事項であるため、最初に販売する国で最初にそれを正しく行う必要があります。英国で開始し、8月に最初の50台のオートバイの出荷がすでにシッピングされました。
インドでの生産は次の需要へ応える能力があります。ヨーロッパの5か国、フランス、ドイツ、スペイン、イタリア、オーストリアで私たちを代表する1つの会社のディストリビューションと契約しました。今後3か月以内にすぐに開始されます。
その後、スイス、スカンジナビア諸国、オランダ・ベルギーで販売するパートナーを探しています。これらはすべて、ゴールドスターのようなオートバイに実り多い市場になると私たちは知っています。
しかし私たちにとって重要なこと、なぜ私たちが販売の設定に時間をかけているのかといえば、パートナーと正しく理解し合うことです。それはビジネスのサイズではなく彼らに私たちを理解させ、今日のBSAを理解させることです。

Q:ヨーロッパ以外でBSAゴールドスターの販売を開始するのはいつか?

AJ:来年は米国とカナダに参入する予定です。オーストラリア、ニュージーランド、日本、韓国、南アフリカも同様です。BSAは、2023年にこれらすべての国で利用可能になるはずです。

    Classic Legends Ltd.でBSAプロジェクトを主宰するAshish Joshi氏

SPECSpecificationsBSA GOLD STARエンジン水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒総排気量652ccボア×ストローク100×83mm圧縮比11.5対1最高出力33.56kW(45bhp)/6,500rpm最大トルク55N-m/4,000rpm変速機5速フレームダブルクレードル車両重量198kgキャスター/トレール26.5°/100サスペンションF=テレスコピックφ41mm正立
R=スイングアーム+2本ショックタイヤサイズF=100/90-18 R=150/70-17軸間距離1,425mmシート高780mm燃料タンク容量12L価格6,500~7,000英ポンド(すべて現地英国での税込み)

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