映画やマンガ、ゲームなどでは登場作品が無数にあり。

コンピューター制御により不安定でも飛べるように

 1989(平成元)年7月17日、アメリカのノースロップ社(現ノースロップ・グラマン)が開発したB-2爆撃機が初飛行しました。

 B-2の特徴は、主翼と胴体が一体化し、垂直尾翼などの補助翼を一切持たない「全翼機」と呼ばれる形状でしょう。これにより、レーダー波の反射を最小限に抑えることができ、表面に塗られたレーダー波を吸収する複合材とあいまって、レーダーに探知されにくい、いわゆる高いステルス性能を兼ね備えた大型機となっています。


飛行するB-2爆撃機。主翼と胴体が一体化し、垂直尾翼などの補助翼を一切持たない「全翼機」と呼ばれる形状(画像:アメリカ空軍)。

 このステルス性を活かせば、探知されることなく敵地へと潜入することが可能で、迎撃されることなく重要目標などを攻撃することができます。軍用機としては夢のような高性能ですが、この形状ゆえに不安定な飛行特性により操縦が難しいことに加えて爆撃精度が低いという問題も内包していました。

 それを克服できたのは、「フライ・バイ・ワイヤ」と呼ばれる飛行制御方式です。これはパイロットが操作する操縦桿やペダルと操舵面の間を機械的に結んでいた金属ロープやロッド、滑車などを、電気信号によるコンピューター制御に置き換えたものです。

 こうすることで操縦桿や操舵面の動きに細かな操作補正を加えることが可能になり、人工的に飛行安定性を高めることが可能になりました。この技術により、毎秒数十回という頻度で補正を繰り返すことで安定して飛行できる目途が立ったのです。

冷戦終結&ソ連崩壊で調達数は大幅削減

 B-2爆撃機の開発は1978(昭和53)年から始まりましたが、情報漏洩を防ぐため極秘で進められ、公になったのは完成を目前に控えた1988(昭和63)年になってからでした。その後、同年11月22日に最初の機体がロールアウトします。

 初飛行は当初、1987(昭和62)年に計画されたものの遅延し、1989(平成元)年7月15日に予定されます。しかし燃料系統のトラブルを解決するため再び後らされ、2日後の7月17日にエドワーズ空軍基地(カリフォルニア州)で成功。各種テストののち、1997年4月より運用を開始しました。


離陸寸前のB-2爆撃機。前方から見るとその形状の異様さがまた際立つ(画像:アメリカ空軍)。

 ただ、その間に冷戦が終結し、旧ソ連も消滅したことで、計画当初の132機製造の予定は大幅に縮小され、試作機を含め21機のみで生産は打ち切られました。またコストと機密の観点から、アメリカ空軍以外に導入した国はなく、全機が本土中西部のミズーリ州にあるホワイトマン空軍基地に集中配備されています。

 ちなみにB-2の愛称は「スピリット」。ただ機数が少ないため、1機ごとに「スピリットオブ〇〇」と名付けられています。