A評価でもリストラ対象に…会社に求められる50代と不要になる50代の違い

写真拡大

日本の会社が「年功序列」を維持する体力を失って久しい。
そんな中で風当たりが強まっているのが「50代以上の社員」である。デジタル・ネイティブの世代から見るとこの世代は知識や考え方が古いと感じられたり、向上心を失っているように思えたり、仕事の内容と実力以上に高い給料をもらっているように映るのかもしれない。

実際、早期退職やリストラはこの世代を対象に行われることが多い。「給料が高すぎる50代以上の社員」は確かに多いということだろう。

■50代社員の弱みと強み

ただ、あくまで問題は「年齢」それ自体ではなく、「仕事と給料が見合っていないこと」だ。給料に見合った働きをすればいいわけだし、会社に貢献していれば社内で白眼視されることはない。

確かに、加齢にはマイナス面もある。記憶力は多少衰えてくるだろうし、小さな文字が見えにくくなったりする。体力的にも20代30代にはかなわない。一方で、プラス面もあるとするのが『人事の超プロが教える 会社員 50歳からの生き残り戦略』(西尾太著、PHP研究所刊)だ。豊富な経験による判断能力や危機管理能力や社内の調整能力、専門的な知識や高度なスキルなどは、中高年社員に一日の長があることも多い。

自分の強みがどこにあるのか、その能力を今どこで発揮できるのか。逆にどこが弱みで、どの部分で若い世代の足を引っ張る可能性があるのかを常々考えておくことが、組織の中で自分の存在感を保つためには欠かせない。

■「A評価でもリストラ」はなぜ起こるのか

ただ、この年代の社員が正しく自己評価することを妨げる要因もある。

成果や行動をきちんと精査し、「あなたは給料分の仕事をしていませんね。この点を伸ばし、この点を改善してください」といった具体的なフィードバックがあれば、パフォーマンスより年収が高い人も働き方を変えることができます。
ところが、ほとんどの会社では「あなたは今のままではダメですよ」とは言ってくれません。(P 31より)

これは企業の人事評価の話である。B評価やC評価であれば、本人も自分の現状を楽観することはないのだろうが、多くの企業では年功序列や終身雇用が残っていた時代の慣習から、人間関係が悪くならないように人事評価が無難なものに落ち着く傾向があるという。つまり、実力的にはB評価やC評価であっても、なんとなく標準評価の「A」になることがあるのだ。

当然、中にはその評価が自分の正当な評価だと思い込む人も出てくる。「自分は高く評価されている」「会社に貢献している」と安心しきっていたところにリストラで声がかかり「今までA評価だったのになぜ」とショックを受けるケースが多々あるという。会社の評価とは別に、自分自身を見つめる冷静な目が必要なのだ。

■50代で枯れてしまうビジネスパーソンの口ぐせ

50代以上のビジネスパーソンにとって、会社から必要とされ続けられるかどうかを分けるのは自己研鑽への意志かもしれない。

本書によると「あなたは、仕事に役立つ情報収集のために、新聞・書籍購読やセミナー参加などの自己学習に、日頃から取り組んでいますか。」という質問を50代に向けてしたところ、「あまり取り組んでいない」が47%、「まったく取り組んでいない」が17%と、6割以上が自己研鑽に取り組んでいない結果になったという。

ただでさえ変化が早い時代。何歳になっても、どんなに地位があっても自己学習は不可欠だ。「今さらデジタルツールの使い方を覚えても」「今さら勉強してもなあ」など、年齢を重ねると「今さら〜しても」と理由をつけて変わろうとしない人が少なくない。

しかし、「今さら」は自分で自分の成長を止めてしまう言葉。何かを学ぶのに遅すぎることなどない。年齢を言い訳にするのはやめた方がいい。



50代以降のビジネスパーソンが会社から求められ、下の年代の社員から求められ、そして経営層から求められるために必要なこと。あるいは会社から離れて生きていくのに必要なことを、本書では具体例を交えて解説していく。

「定年まで逃げ切ろう」という考えが頭をよぎる年代だが、逃げきれなかった場合が悲惨だ。それなら攻めの気持ちで自分の価値を高める努力をする方が建設的だろう。本書はそのための助けになってくれるはずだ。

(新刊JP編集部)

【関連記事】

ビジネスで「陰キャ」が外向的な人と戦う方法
「単なるデジタル化」ではない DXとは結局何なのか?