「水腎症(すいじんしょう)」ってどんな病気?具体的な症状や原因も解説!

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水腎症は大人だけではなく、乳幼児や胎児に発見されることも珍しくない病気です。

症状が出ていたり、尿に異常を感じたりすると「大きな病気なのではないか」と不安に感じる方もいます。

水腎症と診断されて不安を感じている方に向けて、水腎症の症状や治療方法を解説します。

放置することで起こり得るリスクや合併症などについても紹介するため、正しい理解のために参考にしてください。

水腎症(すいじんしょう)はどんな病気?

水腎症はどんな病気ですか?

水腎症とは尿路に何らかの障害が起きて尿の流れがせきとめられ、尿管や腎臓に尿がたまってしまう病気です。

尿は通常腎臓・尿管・膀胱・尿道を通って体外へ出されますが、水腎症になると途中で尿が詰まってしまい流れにくくなります。

尿がたまった尿管・腎臓は拡張して腫れてしまいます。膨らみの程度には病態によって差があります。

正確には腎盂から尿管にかけての部分が膨張することを水腎症、尿管のみが膨らむことを水尿管症といいます。

どのくらいの確率で発症するのですか?

胎児の間に水腎症が確認できるケースは600~800人に1人の割合といわれています。また一時的に尿路が膨張しているのが確認されるのは100人に1人の割合です。

具体的な症状について教えてください。

水腎症の症状は、発症した原因によって異なります。

突発的に水腎症を発症した場合の症状は、発熱・背中痛・全身の倦怠感・脇腹や下腹部の痛み・吐き気・血尿・頻尿などです。

尿管がんが原因の場合は血尿、尿路結石の場合は脇腹から腰などにかけて激しい痛みに襲われることもあります。症状が軽く、ゆっくりのペースで水腎症になった場合には全く症状が出ない方もいます。

軽症であればそこまで気にする必要はないのでしょうか?

軽度の水腎症の場合、治療しなくても自然に治ることが多いです。

症状を感じるとすれば脇腹にうずくような痛みがあったりします。痩せ型の方や乳幼児はしこりを発見しやすいのが特徴です。

最近は胎児の超音波検査や生後早期の検診で、症状もなく偶然発見される症例がほとんどです。

水腎症の原因と診断方法

水腎症の原因はなんですか?

水腎症は尿管・膀胱・尿道の経路に何らかの通過障害が生じることで発症するといわれています。

水腎症は胎児から大人まで幅広い年齢層の方がかかり得る病気で、大人の場合は症状の背景に別の病気が隠れている場合があります。

水腎症を起こす主な病気は尿路結石・尿管がん・腎盂尿管移行部狭窄症、膀胱尿管逆流症、前立腺がん・前立腺肥大症・神経因性膀胱です。

尿路結石やがんを発症すると尿の通り道の尿管が塞がれ、前立腺肥大症や低活動膀胱を発症すると膀胱から尿をうまく出せずに膀胱や腎臓まで尿がたまってしまうのです。

また妊娠中に胎児の成長によって尿の通り道が塞がれて、尿管が狭くなるケースもあります。その場合は分娩後に自然と治っていきます。

胎児・乳幼児に発症する水腎症は、ほとんどの場合が先天性のものです。なかでも最も多いのが腎盂尿管移行部という腎臓から尿管に移る部分が狭いという状態が原因のものです。

出生前に診断される水腎症の35~40%が、腎盂尿管移行部の狭窄が原因といわれています。男児に多く、左側の腎臓に症状が出やすい傾向があります。

どのように診断を行うのですか?

診断は基本的に超音波検査で行います。水腎症を確認するとともに程度も判断できることが多いです。

重度の水腎症と診断された場合には、腎機能が低下していないかどうかを調べる検査を行うこともあります。

他の病気が疑われる場合は尿道の広がりを確認できる腎盂造影検査や、尿管が詰まっている原因を探す腹部CT・MRI検査を行います。

先天的な異常の場合にも、超音波検査にて胎児の水腎症を確認することが可能です。妊娠中に胎児の水腎症が発覚することは珍しいことではなく、妊娠25週目あたりで発見されることが多いです。また出生後に腹痛やしこりを発見することで発覚することもあります。

妊娠中でも発見できることがあるのですね。

妊娠中の超音波検査で発見できるケースが増えています。

超音波検査は妊娠の経過とともに胎児の症状を確認でき、繰り返し行えることが利点です。ただしこれは画像所見であり、産まれてから確定診断を受ける場合が多いです。

妊娠中に発見されると不安になるかもしれませんが、医師の説明をよく聞いて正しい知識を得るようにしましょう。

水腎症を放置するリスクと治療方法

水腎症を放置するとどうなりますか?

程度が軽い水腎症の場合、症状が出ないことも珍しくないため気づかないうちに治っているというケースもあります。

症状があるにもかかわらず受診をせずに放置しておくと腎臓の機能が低下し、最悪の場合急性腎不全を引き起こすリスクがあります。症状がある場合には早めに医療機関を受診しましょう。

合併症などはありますか?

合併症として腎機能障害と尿路感染症を引き起こすリスクがあります。尿路感染症とは尿路に細菌が入り込み増殖して炎症を起こすものです。

血液検査や脳検査によって炎症反応と腎機能を確認し、原因となる細菌に対して抗生物質で治療する方法が一般的です。

また水腎症の手術を受けた後に合併症を起こすリスクもあります。例えば術後に腎臓と尿管のつなぎめが再狭窄を起こしたり、膀胱から尿が逆流したりする症状です。

合併症を起こしていないかの確認をするためにも、術後は通院で状態を確認する必要があります。

治療方法について教えてください。

軽度の水腎症で症状がない場合は、定期的に尿検査と超音波検査を行いながら経過観察をします。

軽度の場合は、治療をせずに自然に治るケースも珍しくありません。重度の水腎症や腎機能の低下がみられる場合は、手術によって治療する場合もあります。

手術方法は尿管狭窄拡張術や腎盂形成術を用いて行います。尿が流れる経路の障害となっている尿管を一部切除して、腎盂と尿管をつなぎ直す方法です。小児に多くみられる腎盂尿管移行部狭窄においてもこの方法が用いられます。

尿路結石が原因の場合は、砕石術や内視鏡手術によって尿路結石を治療していきます。尿管がんの場合は、手術療法と抗がん剤治療がメインとなります。

手術後に気をつけることはありますか?

手術後に尿路感染症や尿路結石などの合併症を引き起こすことがあるため、定期的に通院して経過をみていく必要があります。

両方の腎臓の働きに異常が生じてなければ日常生活に支障をきたすことはありませんが、どちらかの腎臓の機能が低下している場合には、腎機能の管理を厳重に行う必要があります。

また日常生活において血圧の上昇が見られる場合もあるため注意が必要です。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

水腎症はその原因となった病気を判別することが大事です。原因により治療法は全く違います。

良性の病気が原因になることもあれば悪性の病気が原因となる場合もあります。

悪性の病気の場合は早期発見、早期治療が肝要ですので、健診などで指摘されたら早めの医療機関受診をお勧めいたします。

編集部まとめ


水腎症とは尿の通り道に何らかの障害が生じたために尿の流れが悪くなり、尿管や腎臓に尿がたまってしまう病気です。

その症状は全く症状が出ない軽度のものから、腰・下腹部にかけて激しい痛みを感じる重度のものまであります。

大人だけではなく乳幼児や胎児にもみられ、超音波検査によって発見される場合がほとんどです。

治療方法は原因によって異なりますが、重度のケースや腎機能の低下がみられる場合は手術が必要になる可能性もあります。

水腎症は放置しておくと腎機能障害、尿路感染症や尿路結石などの合併症を引き起こすこともあるため、症状を自覚した場合には早急に医療機関を受診しましょう。

参考文献

水腎症|東京女子医科大学病院 泌尿器科 腎臓病総合医療センター

水腎症|日本小児泌尿器科学会

小児外科で治療する病気水腎症・水尿管|一般社団法人日本小児外科学会

水腎症/水尿管症|ドクターズファイル

水腎症:どんな病気?起こりやすい人は?痛みはあるの?検査や治療は?|お医者さんオンライン

水腎症|大阪母子医療センター

胎児の泌尿器科系異常を見つけたら|日本産婦人科医会

水腎症について|Medical Note