「大腸憩室炎」ってどんな症状?治療を受けるには何科を受診したら良い?

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大腸憩室炎はお腹の痛みが特徴で、ひどくなると腸内に穴が空いてしまうこともあります。症状の悪化前に早めに見つけて治療することが重要な病気です。気になる症状があれば、内科や消化器内科を受診し、詳しい検査を受けましょう。
今回は大腸憩室炎とはどのような病気か、症状や原因、受診科目などを解説します。

大腸憩室炎とは

大腸憩室炎とはどのような病気ですか?

大腸憩室炎とは、腸の大腸憩室と呼ばれる部分に細菌が増殖して炎症を起こした状態です。炎症が起きると、腹痛のほかに発熱などの症状を引き起こします。
炎症が悪化して大腸憩室から出血した状態を「大腸憩室出血」と言い、この状態になると治療が必要です。

大腸の働き

大腸はどのような働きをしているのですか?

大腸は、小腸に続く消化器官です。小腸で消化・吸収されて運ばれてきた食べ物から、さらに水分やナトリウムなどを吸収して便を作り、体外へ排出しています。
食物が口に入り、便として排出されるまでにかかる時間は24~72時間といわれています。

大腸憩室とは

大腸憩室は腸がどのような状態になっているのですか?

大腸憩室は、大腸の壁の一部が弱くなって、腸の外側に向かって「くぼみ」ができポケット状に突き出した状態です。内視鏡で確認すると、ハチの巣のようなくぼみが見えます。
この大腸憩室を持っている人はたくさんおり、高齢者の半数以上の人に見つかります。大腸憩室があること自体は無症状のため、通常は心配する必要はありません。
大腸は形状により、上行結腸、下行結腸、横行結腸、S状結腸、直腸に分かれています。このうち、大腸憩室は上行結腸とS状結腸にできやすいのが特徴です。

大腸憩室炎の症状

大腸憩室炎ではどのような症状が現れますか?

大腸憩室炎はほとんどの人には自覚症状がありません。しかし、中には発熱や腹痛、下血などの症状が起こります。発熱や腹痛、下血が起こるものを「大腸憩室症」と呼びます。
上行結腸の大腸憩室に炎症が起こると右側の下腹部あたりが痛み、下行結腸からS状結腸の大腸憩室に炎症が起こると左側の下腹部あたりが痛むのが特徴です。

大腸憩室炎の原因

大腸憩室炎の原因を教えてください。

大腸憩室は、外に飛び出る構造をしているため便が溜まりやすくなっています。大腸憩室に便が溜まったままの状態になると、細菌が繁殖しやすくなって、炎症が起こることが原因です。
従来、大腸憩室炎は欧米ではS状結腸に好発し、日本では上行結腸に多いとされていました。食習慣の変化や生活様式の変化で、日本でも下行結腸に発生する大腸憩室炎が増加しています。
下行結腸の大腸憩室炎が増えている原因として、主に大腸内圧の上昇と加齢による腸管壁の脆弱化が挙げられます。そのほかにも、体質や遺伝、人種、生活環境なども関係していると考えられています。
大腸憩室炎の危険因子は主に以下です。

内臓脂肪型肥満

鎮痛薬の乱用

免疫抑制剤の使用

便秘症

しかし、これらの危険因子を予防したからと言って、発症しないわけではありません。あくまでも、大腸憩室炎を引き起こす可能性が高いものとして考えられています。

大腸内圧の上昇

なぜ大腸内圧が上昇するのですか?

日本人の食生活が欧米化しており、肉食メインの食事が増えて野菜不足になっていることが原因です。これにより食物繊維の摂取量が減少し、便秘や腸管のれん縮、大腸の腸管内圧の上昇が起こりやすくなっています。

加齢による腸管壁の脆弱化

加齢も関係しているのですか?

大腸に関わらず、体のすべての臓器は加齢とともに徐々に機能が低下します。
大腸も同じように、加齢とともに機能が低下するため、そのため反応が鈍くなったり、脆くなって傷つきやすくなったりします。そのため歳とともに、大腸憩室炎を起こしやすくなるのです。

大腸憩室炎の受診科目

大腸憩室炎の疑いがあれば何科を受診すればいいですか?

お腹の痛みや発熱などの症状があれば、まずは内科を受診しましょう。また、下血がある場合は早めに消化器内科や外科、胃腸科を受診してください。

大腸憩室炎の検査

大腸憩室炎ではどのような検査を行いますか?

大腸憩室炎は、問診や触診などで症状や腹部を確認することで、ある程度診断できます。検査は主に以下の通りです。

問診

検温

血圧測定

腹部の診察

血液検査

腹部CT検査

腹部診察では、大腸憩室炎が起こっている部位や重症度などを確認します。血液検査ではどの程度炎症が起きているかが分かります。血液検査の結果とあわせて、激しい腹痛や高熱などの症状があれば、入院による治療が必要です。
そのほか、虚血性腸炎、大腸がん虫垂炎などの病気がないかも確認します。

大腸憩室炎の性差・年齢差

大腸憩室炎に性差・年齢差はありますか?

大腸憩室炎はどの年齢にも発生します。これまでは、若年者には少なく高齢者に起こりやすい病気でしたが、近年では女性や若年者の罹患増加が指摘されています。
男女差は従来から男性に多く、男女比は2~3:1でした。しかし現在では、男女比は1.5:1程度とほとんど差はなくなってきています。

大腸憩室炎の治療方法

大腸憩室炎の治療をする場合、どのような治療方法がありますか?

大腸憩室炎は、発症しても常に軽症であれば食事管理や抗生物質の内服で経過観察を行います。ただし、大腸憩室炎を起こすと、腸が狭くなったり、癒着を起こしたり、穴が開いたりすることがあるため、症状が悪化しないように注意が必要です。
高熱や炎症がひどい、腹膜を刺激して痛みがある場合には、絶食と抗生物質の点滴のための入院が必要です。入院期間は1週間~10日程度で、穴が開いたり腫瘍ができたりして、手術が必要になった場合は、2週間~1か月程度の期間、入院が必要になる場合もあります。
また、腫瘍ができていたり、穴が開いていたりする場合には、内視鏡治療、血管塞栓術などの手術を行う場合があります。憩室が破れており、ひどい腹膜炎を起こしている場合には、一時的に人工肛門を作ることもあります。

控えるべき食べものや習慣

食べ物や習慣で気を付けることはありますか?

大腸憩室は欧米食が一般化したことで、若い人にも増加傾向にあります。動物性タンパクや脂肪の摂り過ぎに気をつけましょう。
また、食物繊維の摂取が大切なため、野菜の多いバランスの良い食事を心がけましょう。すでに大腸憩室がある場合は、便秘をしないように、医師の指示の元下剤を飲むことも大切です。
そのほかにも、腸に負担をかける暴飲暴食、ストレス、過度な疲労を避けることも大切です。大腸憩室を指摘されたことがある場合は、普段から生活習慣の乱れに注意し、症状が現れたら、早めに医療機関を受診しましょう。

編集部まとめ

大腸憩室炎はお腹の痛みが特徴で、ひどくなると腸内に穴が空いたり出血したりしてしまうこともあります。大腸憩室自体は無症状で、誰にでもできるものです。しかし、便が詰まって細菌が増殖すると、炎症が起こり痛みや発熱などを伴います。
経過観察で様子を伺うこともあれば、入院が必要になることもあるため、気になる症状があれば医療機関を受診し、詳しい検査を受けましょう。

参考文献

にしむら内科クリニック【大腸憩室炎】

SBC湘南メディカル記念病院【大腸憩室炎】

岡外科胃腸肛門科【おなかの病気】

医学出版【大腸憩室疾患】

中外製薬【大腸】

宇都宮セントラルクリニック【便秘大腸憩室炎】

巣鴨駅前胃腸内科クリニック【大腸憩室症・憩室炎】