オイルに浸らず外部で露出するレーシングパーツ

YAMAHA YZR-M1 2020

SUZUKI GSX-RR 2020

MotoGPマシンのようにレース専用エンジンでは、クラッチが外に露出した乾式(ドライ)クラッチとするのが圧倒的。
一般向け市販車ではミッション(変速機)が収まる部分にオイルへ浸った状態(湿式クラッチとも呼ぶ)となっているのに対し、レース専用エンジンでは回転してオイルを攪拌する抵抗でパワーロスが生じないよう、さらにクラッチワークがレスポンスや半クラッチでクイック且つデリケートに操作できるため、仕切りを設けオイルに浸らず冷却を兼ねて露出した乾式クラッチ仕様としている。
このレースを前提とした効率最優先の仕様が、一般の使用ではほぼメリットにはならないにもかかわらず、「乾式」の言葉に惹きつけられるファンがいるため、スーパースポーツの上位モデルに乾式クラッチを採用したり、カスタムパーツとしても少なからず需要があるというワケだ。

見た目もだが乾式ならではの音で存在感が伝わる

クラッチの構造はフリクションプレートとクラッチプレートが交互に重なりスプリングで押し付けた状態をレリーズして断続する(実際は7枚などもっと多い)

DUCATI PANIGALE V4S クラッチはカバー内側でオイルに浸る

DUCATI PANIGALE V4 SP2 外部に露出してクラッチ裏のオイルシールで分離される

この乾式クラッチ、エンジンの外に露出して回転するため。見た目のメカニカルなルックスも魅力的だが、ファンがこだわるのはそのサウンド。オイルに浸らす外部にあるため、クラッチを切るとフリクションプレートとクラッチプレートが圧着された状態から解放され、お互いが離れることで軽く擦り合う「シャラシャラ」といった音が発生するのと、アイドリングのように低回転域だとエンジン回転が燃焼爆発毎に震えるような脈動するバックラッシュ音が「ジャラジャラ」と聞こえてくるからだ。
レプリカブーム全盛では2スト250にも装着されていたが、いまは超豪華なスーパーバイクの特別仕様か凝ったカスタムパーツに換装する一部のマニア向け。遭遇するチャンスも少なくなったが、この「ジャラジャラ」と「シャラシャラ」が聞こえたら、あたりを見回してみよう。

‘89モデルからNSR250Rには乾式クラッチ仕様モデルが加わる

ノーマルのNSR250Rは一般的な湿式クラッチ仕様

かつてホンダNSR250Rは、乾式クラッチ仕様モデルまで揃えた

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