「左腰が痛む」原因をご存知ですか?医師が徹底解説!

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左腰が痛む時、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?Medical DOC監修医が考えられる病気や何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

監修医師:
塚原 聡 医師

北里大学医学部卒業。弘前大学医学部整形外科で臨床研修し、東京大学医科学研究所でゲノム医科学の研究に従事。その後、東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター助手、准講師を歴任。2009年から湘南第一病院整形外科部長。2013年、同副院長に昇格。2019年、地域サービス部門担当役員に就任。日本専門医機構認定整形外科専門医、日本リウマチ学会専門医、プライマリケア連合学会認定医・指導医。医学博士。

「左腰の痛み」で考えられる病気と対処法

腰の痛みを感じたことがある方は多いのではないでしょうか。腰痛は、筋肉や背骨が原因となる軽症のものが多いといわれます。一方で、脊椎や股関節の疾患、心因性、炎症性、血管が原因となる重症な病態(病状)も存在します。
特に、左側の腰が痛くなる場合には、炎症性、筋肉性、脊椎、神経、内臓疾患が関わっていることも考えられます。どんな場合に病院を受診する必要があるのか解説していきます。

左腰の痛みで考えられる原因と治し方

疲れたあと、重いものを持ったあと、起きてすぐに、深いソファから立ち上がった時、草むしりをしたあとなど、腰の負担が大きいときに、腰に鈍痛を感じたり、動かすとズキズキと痛く感じたりすることがあります。
このような場合、頻度が高い原因として、筋膜性腰痛や腰椎分離すべり症、変形性腰椎症などが考えられます。

左腰が痛いときの対処法・応急処置

左腰の痛みを自覚したら、まずは焦らず、平らな場所に横になりましょう。リラックスすると楽になることが多いです。次に、胸痛や腹痛がないか、熱がないか、息苦しくないか確認しましょう。
痛いところに湿布を貼り、もし手持ちにあったら腰にコルセットを巻きましょう。前かがみになったり、体をねじったり、重いものをもったりすることは避けてください。
胸痛も腹痛もなく、息苦しさや熱もなければ、平らな場所に横になる時間を長くして、痛みが少しずつ軽減するか様子を見ましょう。

左腰が痛い症状別の病院受診の目安

発熱、嘔吐、腹痛、下血のいずれか伴う場合には炎症性の病気、内臓の病気が疑われます。数日様子を見ることはせず、1~2日以内に内科、整形外科を受診しましょう。
下肢まで痛みが拡がり、力が入らない場合は脊椎の病気が疑われます。数日様子を見ることはせず、1~2日以内に整形外科を受診しましょう。
なお、健康診断で関連して指摘されていることはないか、最近体重が減っていないか、別な病気で検査中か、新しい薬を飲み始めて間もないかも確認しましょう。
健康診断で関連して指摘されていることがあり、最近体重が減っていれば、1週間以内に内科受診しましょう。
別な病気で検査中、もしくは新しい薬を飲み始めて間もない場合には、次の受診日を待たずにいつも相談している担当医に相談しましょう。

左腰からおしりにかけて痛む、しびれる症状で考えられる原因と治し方

座っていても動いても痛みが持続する、しゃがむと痛みが強くなる、重くなったり鈍痛が続いたり焼けるような痛みを感じたりするなど痛みの感覚が変わることがあります。また、痛みの場所が移動することもあります。
このような場合、頻度が高い原因として、腰椎椎間板ヘルニアや腰椎変性すべり症、腰部脊柱管狭窄症などが考えられます。
対処法や受診の目安については、前述と同様ですのでご参考にしてください。

突然左腰が痛む症状で考えられる原因と治し方

痛みのきっかけは思い当たらないけれども、突然左腰が痛むことがあります。また、動いたり、転んでぶつけたりはしていないのに、急に鋭い痛みがあって動けなることもあります。痛みの感覚が周期的にくることや、重く鈍い痛みが同じ感覚で続くこともあるかもしれません。
このような場合、頻度が高い原因として、尿管結石(尿路結石)や腹部大動脈瘤、女性の場合には子宮内膜症などが考えられます。
対処法や受診の目安については、前述と同様ですのでご参考にしてください。
ただし、普段血圧を測定している場合には、血圧測定も忘れずに行いましょう。
発熱、嘔吐、腹痛、胸痛、下血のいずれかを伴う場合には炎症性の病気、内臓の病気が疑われます。数日様子を見ることはせず、1~2日以内に内科、泌尿器科、外科、整形外科、婦人科を受診しましょう。
下肢まで痛みが拡がり、力が入らない場合は脊椎の病気が疑われます。数日様子を見ることはせず、1~2日以内に整形外科を受診しましょう。

すぐに病院へ行くべき「左腰の痛み」に関する症状

ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

左腰が痛み足が動かしにくい症状の場合は、整形外科へ

腰痛だけではなく、足が動かしにくい症状を伴う場合は要注意です。腰椎の中の神経を圧迫しているために、足の麻痺が出現していることが疑われますので、なるべく早く整形外科を受診しましょう。痛みがなくなったと感じても、実は神経麻痺しているので感じていないだけかも知れません。楽観視はしないようにしましょう。

「左腰の痛み」症状が特徴的な病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「左腰の痛み」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

脊椎腫瘍

骨の誤作動した細胞(良性と悪性があります)が増殖して、骨が構造上弱くなる病気を原発性脊椎腫瘍といいます。
また、もともと他に腫瘍(がん)があり、血流を通して細胞が背骨に運ばれてしまい(転移)、異常な細胞が増殖して、骨が構造上弱くなる病気を転移性脊椎腫瘍といいます。
他の腰痛とは違い、夜間寝ているときにズキズキ腰が痛くなったり、安静にしていても、動作しているときでも痛くなったりすることが特徴的な症状といわれています。
痛みを感じたら、まずは、前かがみになったり、腰を捻ったりせずにゆっくりとした動作を意識しましょう。薬で治ることは期待できず手術を要する場合があります。
激しい腰痛がある場合には、ためらわずに救急病院を受診しましょう。発熱、嘔吐、腹痛を伴う場合には、原発性の腫瘍だけでなく、転移性の腫瘍の存在も疑われます。数日様子を見ることはせず、1~2日以内に内科、整形外科、外科、泌尿器科、婦人科を受診しましょう。
下肢まで痛みが拡がり、力が入らない場合は神経の圧迫、つまり麻痺が疑われますので1~2日以内に整形外科、脳神経外科を受診しましょう。

脊髄腫瘍

腰の奥にある脊髄内に発生した腫瘍や、クモ膜、硬膜、神経鞘(神経を保護する膜)、さらに脊柱管内の軟部組織や椎体に発生した腫瘍によって、脊髄や神経根が圧迫される病気です。
神経が障害されるため、下肢がしびれ、痛くなることが多いです。重症化すると下肢に力が入りにくく、痛みの感覚が鈍くなり、足の傷に気づかないことがあります。さらに小便、大便をしたいという感覚が鈍くなることがあります。
腰の痛みのある場合には、歩くときに段差にひっかかって転ばないように、焦らずにゆっくりと注意して歩きましょう。傷があるときには、化膿しないように、きれいに洗い、きれいなガーゼや絆創膏で覆いましょう。薬で治ることは期待できず、手術治療を要する場合があります。
下肢まで痛みが拡がり、力が入らない場合は急激に増悪(悪化)していることが疑われますので、1~2日以内に整形外科、脳神経外科を受診しましょう。

化膿性脊椎炎

体内のどこからか(肺、体表の傷、口腔内、消化管内など)細菌がうつり、増殖して正常な背骨を蝕む病気です。特に過去に重度の感染症の既往症(病歴)がある方、糖尿病の方、免疫抑制薬を服用している方、手術で背骨にインプラントが挿入されている方、など免疫が正常に作動しないことがある場合は感染に弱くなり病気になります。
腰の痛みのある場合には、前かがみになったり、腰を捻ったりせずにゆっくりとした動作を意識しましょう。抗菌薬を持続的に投与する必要があります。薬で治ることは期待できず手術治療を要する場合があります。
多くは発熱、嘔吐、腹痛を伴います。数日様子を見ることはせず、1~2日以内に内科、泌尿器科、外科、整形外科、脳神経外科を受診しましょう。
下肢まで痛みが拡がり、力が入らない場合は急激に増悪(悪化)していることが疑われます。数日様子を見ることはせず、1~2日以内に整形外科、脳神経外科を受診しましょう。

「左腰が痛い」ときに市販薬は使える?

市販薬や痛み止めの使用は良いでしょう。受診した際に、担当医に「何をどのタイミングで内服した」のかを説明できるように準備しておいていただければと思います。
具体的には、アセトアミノフェンが含有されているバファリンやナロンなど、ロキソプロフェンが含有されているロキソニンなどが挙げられます。アセトアミノフェンは胃に負担が少なく、抗炎症効果がなく、量が多いほうが効くことが知られています。
腎臓病や胃十二指腸障害を指摘されている場合にはロキソプロフェンの内服を続けていくことは控えた方が良いでしょう。また、肝臓の異常を指摘されている場合には、アセトアミノフェンの内服を続けていくことも控えた方が良いでしょう。
また、バンテリンなどの塗り薬や、貼り薬、冷却スプレーを痛い部分に使うことも良いでしょう。ただし1週間以上経過して、効果があまり感じられない場合には受診を検討しましょう。

「左腰が痛む」ときの正しい対処法・予防法は?

左側の腰痛におすすめのストレッチ・マッサージ

ストレッチやマッサージを行うことは良いでしょう。腰が痛い場合には、ふとももにあるハムストリングスや大腿筋膜張筋、おしりのまわりの殿筋群、お腹の横の外腹斜筋などの緊張が高い場合が多いです。筋肉性の痛みの場合、筋膜の緊張をほぐすと痛みが和らぐことが知られています。
腰痛や股関節に大きな負担がかからないように、仰向けになってゆっくり膝をかかえて30~45秒静止しましょう。そのあとは膝をたて、目線は天井をみながら膝だけを床にゆっくり倒し、お腹周りが捻れるような姿勢でゆっくり30~45秒静止しましょう。仰向けのまま、あぐらをかくように脛を反対のふとももに乗せ、その反対の膝を抱えて(脚を胸に寄せるような姿勢になって)お尻の裏をのばしましょう。
マッサージは、自分がコントロールできない力が加わることになります。ストレッチができない方は、経験のある方にやってもらうのも選択肢のひとつです。

左側の腰痛は冷やす?温める?

骨折や捻挫など急性期の痛みは炎症が強いため、多くの場合は冷やした方が良いでしょう。ただし、慢性的な痛みの多くは温めると緩和します。病態によっては一概に言えませんので症状が緩和しない、あるいは、悪くなる場合には冷却や加温をやめましょう。

左腰が痛むときの日常生活と応急処置

日常生活では、床のものを取るときや靴を履くときなど、前かがみになったり、腰を捻ったりせずに、片膝をついたり椅子に座って、ゆっくりとした動作を意識しましょう。日常的に重いものを持ち上げることは、なるべく避けましょう。最も重要なことは予防です。体幹筋力トレーニングを習慣化しましょう。
早く治したい場合には、鎮痛剤を服用し、コルセットを装着してリラックスしましょう。前述の日常で気をつけるべき姿勢を継続しましょう。応急処置を行なっても改善しない場合には、なるべく早めに医療機関を受診し、重症な病気が隠れていないことを確認しましょう。

「左腰の痛み」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「左腰の痛み」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

腰から背中にかけて左側がピリピリ痛むとき何科を受診すべきですか?

塚原 聡 医師

痛みの部位に皮疹(発疹)があったら皮膚科。それ以外は、迷ったらまず整形外科を受診しましょう。

左腰の痛みが腎臓など内臓の疾患が原因ということは考えられますか?

塚原 聡 医師

あります。腎結石、尿管結石、腎盂腎炎の診断に至ることも少なくありません。

左腰の痛みが運動後に発症した場合の原因と対処法を教えてください。

塚原 聡 医師

鎮痛剤を服用し、コルセットを装着してリラックスしましょう。前述の日常で気をつけるべき姿勢を継続しましょう。すぐに冷やしたり、温めたりしても効果的ではないことが多いです。

突然、腰の左側に激痛が走る症状はぎっくり腰でしょうか?

塚原 聡 医師

「ぎっくり腰」という呼び名は、急に腰が痛くなる症状に対し一般的に使われる呼称です。筋肉性あるいは軽度の背骨に起因する腰痛が多いのですが、内臓疾患由来のもの、軽症なものから重症なものまで含まれます。

左側がズキズキする腰痛にはどのような治療方法がありますか?

塚原 聡 医師

筋肉性の痛みではない可能性があります。なるべく早めに医療機関を受診することをお勧めします。

まとめ

腰痛は、ズキズキ、ピリピリ、焼けるよう、移動する、動きで誘発される、夜間にとくに感じる、周期性にくるなど多彩な症状を呈します。腰は、内臓、脊椎、皮膚の表面に位置するため多くの疾患の症状として現れる場所でもあります。そのため腰の痛みには、軽症ではない脊椎の疾患、股関節疾患、心因性、炎症性、血管が原因となる病気もたくさん存在します。日常的に健診を受け、自分の健康管理をし、腰痛予防のための運動を意識し、自分の体に投資しましょう。

「左腰の痛み」で考えられる病気と特徴

「左腰の痛み」から医師が考えられる病気は31個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

整形外科の病気

筋膜性腰痛

腰椎分離症

変形性腰椎症

腰椎変性側弯症

腰椎椎間板ヘルニア

化膿性椎間板炎

硬膜外膿瘍

化膿性脊椎炎

脊椎カリエス

腰椎椎体骨折

腰椎横突起骨折

腰椎骨腫瘍

腰髄腫瘍

腰椎変性すべり症

腰椎分離すべり症

梨状筋症候群

変形性股関節症

骨盤骨腫瘍

腸腰筋内血腫

腸腰筋膿瘍

内科の病気

腎盂腎炎

急性腎盂腎炎慢性腎盂腎炎

腎結石

尿管結石

産婦人科の病気

子宮内膜症

妊娠

循環器科の病気

大動脈解離

腹部大動脈瘤

解離性大動脈瘤

精神科の病気

うつ病

腰痛には、軽症ではない脊椎の疾患、股関節疾患、心因性、炎症性、血管が原因となって腰が痛くなる病気も存在します。

「左腰の痛み」と関連のある症状

「左腰の痛み」と関連している、似ている症状は9個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

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「左腰の痛み」の他に、これらの症状が見られる際は、「化膿性脊椎炎」「急性大動脈解離」「尿路結石」「筋膜性腰痛」などの病気と「妊娠」の存在が疑われます。
痛みがひどい場合やなかなか治らない場合は、早めに医療機関への受診を検討しましょう。

【参考文献】
・腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版)(日本整形外科学会・日本腰痛学会)