SGLT2阻害薬 循環器疾患へのクラスエフェクトを確認

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東京大学らの研究グループは、糖尿病治療薬として開発されたSGLT2阻害薬6剤の循環器疾患に対する効果の差を解析した結果、6剤の効果がクラスエフェクト(薬剤全般に共通する効果)であることが示唆されたと発表しました。このニュースについて武井先生にお話を伺います。

監修医師:
武井 智昭(医師)

平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。
日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属

研究グループが報告した内容とは?

今回、東京大学らの研究グループが報告した内容について教えてください。

武井先生

今回の研究は、糖尿病治療薬として開発されたSGLT2阻害薬6剤の循環器疾患に対する効果の差を解析したもので、東京大学と佐賀大学らのグループによっておこなわれました。対象になったのは2万5315例で、SGLT2阻害薬の内訳は、エンパグリフロジンを投与したグループ5302例、ダパグリフロジンを投与したグループ4681例、カナグリフロジンを投与したグループ4411例のほか、イプラグリフロジン、トホグリフロジン、ルセオグリフロジンの3つの薬剤を投与した対象については、そのほかのSGLT2阻害薬群と分類されました。

主要評価項目は心不全、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、心房細動の個別の発症です。平均814日間の追跡期間中に心不全を起こしたのは855例、心筋梗塞は143例、狭心症は815例、脳卒中は340例、心房細動は139例でした。エンパグリフロジンを投与したグループに対する4つの主要評価項目の発症のハザード比を算出したところ、いずれも有意な群間差は認められなかったということです。この結果から、研究グループは「循環器疾患におけるSGLT2阻害薬の効果が薬剤間で共通しているクラスエフェクトであることを示唆している」と結論づけています。

SGLT2阻害薬とは?

今回の研究対象になったSGLT2阻害薬について教えてください。

武井先生

SGLT2阻害薬は尿に糖を出すことで血糖を下げる飲み薬です。日本では、2014年から使われるようになりました。服用によって起きる体の変化としては、体重の減少があります。また、ほかの薬と併用しなければ、低血糖を起こす危険性が低いことも特徴です。糖尿病の治療薬として開発されましたが、慢性心不全や慢性腎臓病の治療にも適応が拡大しています。国内では、SGLT2阻害薬の選択性や作用時間が異なる6種類の薬剤が保険適用されていますが、薬剤の間で効果に差があるのかについては明らかにされていませんでした。

報告内容への受け止めは?

東京大学らの研究グループが報告した内容が持つ社会的な意義など、受け止めを教えてください。

武井先生

同じ糖尿病薬であるSGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬を比較した場合、SGLT2阻害薬は心不全または心筋梗塞の新規発症、循環器疾患の死亡がDPP4-阻害薬群と比べて低かった事はすでに報告されています。SGLT2の薬剤の中でも慢性心不全への適応を取得している薬剤もありますが、同等の効果があると判明したことから、今後のSGLT2の循環器疾患に対しての1つの選択肢となるため、有用な報告であると考えます。

まとめ

東京大学らの研究グループは、糖尿病治療薬として開発されたSGLT2阻害薬6剤の循環器疾患に対する効果が、クラスエフェクトであることが示唆されたと発表したことがわかりました。クラスエフェクトを示したことは臨床現場にとっては価値ある情報と言えそうです。

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