捨てられない思い出の品。写真や服を気持ちよく手放す3つの方法<おふみの暮らし絵日記・第5回>
ミニマリストで整理収納アドバイザーのおふみさんが、シンプルに心地よく暮らすコツをご提案。今回は、なかなか捨てられない「思い出の品」について。「本当は手放したいと思っているもの」の見分け方、思い出を残すための3つの方法について伺いました。
思い出の品を「残したいもの」と「本当は手放したいもの」に仕分けてみる
片づけをある程度進めてきてぶつかる高い壁、それは思い出の品。手放せなくて悩んだことがある方も多いのではないでしょうか。
私も汚部屋状態から片づけを進めて、今では家財道具をハイエース1台分の物量まで減らしましたが、その過程で手放すのに最も難儀したのが「思い出の品」でした。
なぜ手放せないのか? どうやって手放したのか? 自分の経験からお話していきたいと思います。
●思い出の品はなぜ手放す踏んぎりがつかないのか?
そもそも、なぜ思い出の品は手放すのが難しいのでしょうか。いちばんの理由は、代えがきかないからではないでしょうか。
本を手放しても絶版にならない限りは買い直すことができますし、国会図書館にはあるでしょう。ソファを手放してみて、やっぱりソファのある暮らしがいいと思えば、近しいものを買い直すことはできます。
世の中の大半のものは買い戻すことができますが、思い出の品は違います。世界にそのひとつしかなく、それでなければ意味がない代物です。
だからこそ、もう使っていなくても手放すことを躊躇してしまうもの。
しかし、思い出の品をすべて持ち続けられるかというと難しく、たとえば思い出の品が家の収納の8割を占めていて、普段の生活で使う実用品をしまう場所が設けられず部屋の表にあふれ出して足の踏み場もなくなっているとすれば、それは比率が偏っていると言えます。
人は思い出だけを食べて生きてはいけません。実用品なしに生活はできないのです。
思い出の品をひとつ残らず手放す必要は全然ありませんが、それでも所持量は意識してコントロールしていくべきだと考えます。
では、どのようにしてコントロールしていけばいいのでしょうか。
●「本当は残したいと思っているもの」は手放さなくていい
まずは思い出の品を一度床に並べてみましょう。
そしてそれらは「本当は残したいと思っているもの」と「本当は手放したいもの」のどちらなのか、自分に問いかけながら分類してみましょう。
手放すべきだと思われるけれど残したいもの、つまり本心では「残したいと思っているもの」とはどんなものでしょうか。
たとえば、「1年使っていないものは手放すべき。“今”にフォーカスして片づけよう」という片づけ方法を見てその通りだと思ったものの、いざ手に取った思い出の品を目の前にして、「これに関しては捨てられないな」と感じたとします。
人に手放した方がいいと言われたものでも、自分がそれを持ち続けたいなら無理に手放す必要はありません。
それをたまに取り出して眺めると思い出が蘇るというのであれば、それは観賞用という用途を持っていることになります。それなら、「思い出の品」枠として保管スペースを一定量確保し、そこに収まる分は持ち続けることにすればいいのです。
もう戻らない日々を思い出させてくれるもの、たまに取り出して見ると懐かしくさせてくれるもの。道具としての用は成していなくてもこれからも持ち続けたいもの。
そういうものを無理にひとつ残らず手放す必要はありません。
生活の妨げにならない程度に所持して、愛でていくのがいいと思っています。
実際私も「思い出ボックス」と名づけて、靴が入っていた箱を用意し、1箱分に思い出の品をしまっています。
●意外とある「本当は手放したいもの」
とはいえ手放せない思い出の品の中には、手放したいけれど踏んぎりのつかないもの、つまり「本当は手放したいもの」が案外紛れているものです。これを見つけていきましょう。
たとえば、人からいただいたけれどまったく使わずに箱にしまったままの贈りもの。自分を想って選んでくれたものなので手放せないと考えてしまうかもしれません。
しかし、視界に入るたびに「使ってないから手放したいな。でも頂きものを手放すのは気持ちごと手放すみたいで気が引けるな」と思うなら、それは視界に入るたびにストレスを感じているということ。
使わないものを持ち続けて死蔵品にしてしまうよりも、ものの人生を考えたら次の使ってくれる人のもとへ譲れた方がものの有効活用ができていると言えます。
贈りものは受け取った時点で9割方の役目は果たしたと考えてみてはいかがでしょうか。もの自体がたまたま自分の生活に合わなかっただけで、気持ちの授受は完了しているので、贈り主の想いに感謝してものは手放してもよいのでは。
あるいは、以前は残したいものだったけれど、自分の中で気持ちの折り合いがついていくということもあります。時間の経過で、
「もうこれは物体としては残さなくてもいいかな」
「写真に撮って思い出を残せればそれでいいかな」
そう思えるように気持ちが変化していくということもあります。
自分の心に問いかけながら、分類を進めていきましょう。
思い出を残してものを手放すための3つの方法
心の中では「手放したい気持ちの方が大きいもの」に分類されたものをどう手放していくか。これは、物体は手元になくても、思い出が残せれば踏んぎりがつくことも多いです。
そこで、思い出の残し方についていくつかの方法をお伝えします。
●1.写真に撮って思い出スイッチにする
これがいちばん簡単かつメジャーな方法ではないかと思います。思い出の品を撮影し、スマホに思い出フォルダをつくってそこに保存します。
そもそも、物理的なものを取り出して蘇る思い出は、自分の記憶の中にあり、ものはそれを再生させるスイッチみたいなものではないでしょうか。であるならば、物理的なものではなく写真でも、その思い出再生スイッチを押せるかもしれません。
それに、世の中には持ち帰れない思い出の方が多いとも言えます。たとえば旅行先で見た美しい景色は持ち帰れません。だから写真におさめるのだと思います。
スマホのおすすめ表示で過去のアルバムから写真が表示される機能がついており、その写真が懐かしくてついついタップしてしまいます。写真をきっかけにいろんな思い出が蘇ります。
写真の持つパワーは大きいので、思い出の品の整理においても写真のパワーを借りてみてはいかがでしょうか。
●2.当時の出来事や思いを書いて残す
使っていないのに何年も持ち続けてしまった思い出の品がありました。大学時代に自作した服が思い出深くて手放せなかったのです。
当時は森ガール的な服装が流行っていて、リネンなどでつくったナチュラルなワンピースやスカートがたくさんありました。友人5〜6人でそれぞれが自作した服を着て集まって、植物園で撮影会をしたのを思い出します。
「噴水の前で、なぜかエアギターをしながら撮影したな…」
「そうだ、生地選びにものすごく迷って、当時の自分にしてはかなり高いメーター単価の布を買ったのだった」
など、構想から生地購入、制作、完成、撮影会、日々の着用の思い出まで、ありとあらゆる思い出が蘇ってくるのです。
もう自分の好みのテイストでもないし、このまま持ち続けもこの先着ないことはたしかなのです。結構な数があって場所を取るので、片づけの対象としていつも浮上する存在。
視界に入るたびに「手放したいな。でも思い出深いしな…」と、捨てようとしては諦めるものでした。
既製品に比べて、自分でつくったものは思い入れが倍増してしまってかなり捨てるのが難しいものですね。しかし、片づけ当時は引っ越しを控えたタイミングでした。一軒家から1LDKへ移ることが決まっていたので、現実的に物量を減らさないと新しい家にものが収まりきらないことは火を見るよりも明らか。
では、思い出の服を残すために、普段着ている服を手放すそうか? とも一瞬考えたものの、それでは本末転倒です。
そこで、思い出だけ残して物理的なものは手放せたらよいなと思いました。
まずは写真に収めようとしたのですが、写真自体は完成したときに散々撮っているわけです。制作や撮影会の日の植物園の空気など、もっと詳細な思い出を残したいのだと気づきました。
そこで、絵日記を描いてみることにしました。噴水の前でエアギターをしたことなどを交えつつ日記をつけたら、不思議と心がすっきりしました。
そして、服そのものは手放すことができました。それは、「思い出はちゃんと残せた」と思えたから。
写真に撮るだけでは納得がいかない場合は、手に入れた思い出から実際に使った日のことなど、思い出深いエピソードを日記にしるしてみるのがおすすめです。
●3.データ化すると災害時にも安心
卒業アルバム、家族がつくってくれたアルバム…。紙の写真も手放すのが難しいものではないでしょうか。
学生時代にフィルムカメラを愛用していたため、4年間で膨大なネガとサービス版プリントが溜まっていました。押入れの何割かを占める写真をどうにかデジタル化できないかと思い、スキャンサービスを利用しました。
ネガを預けると、スキャンしてデータ化してDVDなどに焼いて送り返してくれるサービスです。
ネガのない卒業アルバムなどにも、スキャンサービスは存在しているので、アルバムの整理で悩む方にもおすすめです。
データ化したものをクラウド上にアップロードしておくことは、災害時に思い出を守るために有効かもしれません。
以前台風に見舞われた際に避難を検討したことがありましたが、リュックひとつに最低限の荷物をまとめた時に、持ち出せるものの少なさを痛感しました。思い出ボックスの中身を丸々持っていくことはできません。
もしこの部屋が水浸しになったら、思い出の品も物理的に残していたアルバムも、復元が難しいだろうなと思いました。そのときに、いっそデータ化しておいた方が思い出を失わないですむのかもしれないと思いました。家が浸水してもデータは残ります。
とはいえ、なにもかも一気にデータ化するというのは難しいですよね。心が追いつかないかもしれません。思い出の品は、心のスピードに合わせることが必要なのではないかと思っています。
冒頭でも書きましたが、いちど手放したら買い戻せないのが思い出の品です。ある程度の空間が確保できるなら、納得できるまで持ち続けて、じっくり判断していくのがいちばんだと思います。