いま新車にはABSが義務化されていますが、そんなに頻繁に作動するのですか?

A. 万一の場合で日常的な作動はありません。でもリカバーできる範囲はさらに拡がっています!

ホイールの中心部に見えるスリットのある円盤が車輪の回転を検知、実際の速度より遅くなるとスリップしたと判断してABSを作動させる

ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)とは、急なハードブレーキングで起きるホイールロックをコンピューターが前後のホイールの回転差から検知、自動的にブレーキ圧を抜いたり加えたりを高速で繰り返して、安全な制動距離で停止してくれる装置です。
二輪車では2018年10月からの新型車、継続生産車も2021年10月から標準装備を義務付けられています。しかし装備されているABSが作動する状況は”起こり得る可能性”はあるものの限定的な状況が多く、恩恵を今まで感じたことがない、もしくはどれぐらいの強さでブレーキをかければABSが作動するのかわからない方がほとんどだと思います。

ABSが作動する状況として、まず思い浮かぶ場面といえば雨の日で路面が濡れていたり、道路に砂が浮いている滑りやすい路面状態でしょう。また乾いていた路面だったのが、木立に覆われたコーナーに差し掛かったら路面が濡れていることもよくあります。
そんな突然の変化に慌ててブレーキをかけたとき、ホイールがロックするかしないかでは雲泥の差があります。特にビッグバイクにとって前輪ロックは命を失う大事故にもなりかねません。
こんな状況で、急ブレーキをロックさせずにコントロールできるのは、プロライダーでしかも余裕のある場合という条件もつきます。パニックに陥れば、プロもアマもありません。

この二輪車のABS先駆者はBMW。速度無制限のアウトバーンを持つドイツで、200km/h以上でクルージングするビッグバイクが転倒する事故が増えたことで将来への危機感から取り組み、何と1987年にK100シリーズで初の実用化を果たしました。それだけに他をリードする当初は不可能といわれたバンクした状態でも稼働させる開発など、バイク界への貢献度は並々ならぬものがあります。

BMWは早くからバンクしたまま作動するABS PROを開発。各メーカーもIMU(6軸センサー)の実用化で次々に同様な装備をするようになった

いまやバンクした状態でもABSが助けてくれます!

以前は、コーナリング中だと減圧より先にスリップダウンしてしまうため効果を発揮できなかったABSですが、IMU(6軸センサー)の登場によって、最新のスポーツバイクに搭載されたABSは車体の傾きや加減速などを加味した上で、コーナリング中のフルバンク状態でもブレーキ操作が可能となっています。そのため従来の安全装置としての枠組みを超えたスポーツ装備としてのABSも誕生しているほどです。

もしABSの作動を経験したいと思うなら、一般公道ではない広い敷地であれば、リヤブレーキを思いっきり踏めば再現できます。一定でなくなるブレーキ圧で揺すられるため、ちょっと驚くかも知れませんが、リヤブレーキであれば極端に不安定にならないので、むしろ経験していたほうがイザというとき役立つかも知れません。
ただABSが付いているからといって、雨の日も普段のドライな路面と同じ様走れるわけではありませんし、普通に走っている分にはABSのお世話になることはまずないと思ってよいでしょう。四輪に例えるとエアバックやシートベルトのようなものです。万一を考えて常に身を守るライディングを心がけましょう。

前後の車間を管理するACCとABSが一体化され、1/10にコンパクトで軽量化されている

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