多くのプロが認めるパーフェクトハンドリング
それでもよりコントローラブルへと進化は続く

MV AGUSTA F3 ROSSO & RR 比較試乗インプレ Vol.1|RIDE IMPRESSION|RIDE HI

MVアグスタといえば世界GPを日本メーカーが席巻した’60年代に、唯一王座を守り抜いた孤高のメーカー。一度は幕を閉じたそのスピリットを復興させようと、受け継いだエンスージャストと天才エンジニアが目指したのは、緻密な設計で正確なハンドリングと、モーターサイクルアートと謳われる美しいデザイン。
多くのファン垂涎のブランドはこうして見事復活し、完璧を目指す緊張感あるマシンが輩出されてきた。
そのMVが3気筒800ccのF3シリーズに2022年モデルとしてF3RRをラインナップ。もちろん従来からのF3ROSSOも完璧と評価された傑作マシン。果たして進化するだけのまだスキがあったのか?
そんな思いは、2021年モデルのROSSOと2022年モデルRRの2台を袖ケ浦フォレストレースウェイで比較試乗するという途方もないチャンスに恵まれることとなった。そうとなれば、自ら惚れ込んで初代F4Serio Oroのオーナーでもあった宮城光さんもお誘いし、再興MVの誕生期から深く知る身としては徹底検証するしかない。

重心位置とアライメントが理想の設定である証しとして
マシン自らがニュートラルステアに収まる秀逸さ

F3 ROSSOは、大袈裟でなく400ccクラスよりコンパクトに感じる。実際そのスリムさは400どころか250に近いほどで、これが走り出すといっそう強調されるこの差に相変わらず圧倒される。
前輪の接地点がどこなのか、後輪が路面の継ぎ目をうまく吸収しながらわかりやすい振動だけを伝えてくるリアリティ豊かな操縦感覚……ハンドリングはこうした表現に尽きる完璧さだ。
ちょっとやそっとでは崩れないニュートラル追従する特性は、良い加減な身体のあずけ方をしていてもマシンがバランスの良いハンドリングへ導くほど。
磨きがかかったのはリーンアングル30°あたりの、前輪側も旋回方向へニュートラルに追随していくレスポンスだろう。コーナーのイン側へ上半身を少し入れていくだけで、後輪が支配しているとはいえ回頭性が一段と鋭くなった。
エンジンは13,000rpmで上機嫌にしてくれるシャープな伸びが楽しめる。それと中速域のトラクションも、3気筒ならではのゴリゴリした路面の蹴り方と相まって、右手のスロットルコントロールが存分に楽しめる。

そして緊張感を伴うペースになると、クランクが逆回転するフロントリフトが抑えられたメリットと、高回転域でシフトダウンした際に後輪が路面へグイッと押し付けられる有り難みを味わえた。なるほどMotoGPマシンがこぞって採用するワケだ。

僅かな剛性バランスの調整とサス特性でRRがみせた後輪と前輪の関係を変える進化

そして乗り換えたRR。まず暫くはその差には気づけない。わかりやすかったのは100km/hレベルでも、両サイドのダクトによる整流効果で車体がジワッと動きにくくなる点だろう。
しかしスロットル開度が大きくなると、途端にトラクションの質が異なるのが伝わってきた。まずリヤサスが忙しくよく動く。これはピボットまわりの剛性バランスの見直し効果のひとつで、可動部分がたわまなくなるほど、サスペンションは動きを入力側へ変換しやすくなる典型的な効果からきている。
この違いは、中速域でスロットルをより大きく開けて、グイグイ路面を蹴る領域をライダー側で増やす乗り方へと誘うのだ。
相対的に前輪側は、以前より沈み込んでROSSOではスッとリフト側にも素早くレスポンスしていた動きが抑えられ、前後輪共によりグリップ感を得た、言葉を変えるとよりタイヤを潰すフィーリングを楽しませる。

鋭かった軽快感に落ち着きが加わり
ライダーを落ち着かせる余裕を与えてくれる進化ぶり

考えてみれば675ccでスタートしたF3は、既に10年以上の歳月が流れている。しかし基本設計の次元の高さから、ここまでの進化で他をリードする特性に溢れ、追いかけるような位置にあったことはなかった。
その素性の良さは今回も実感させられたが、あらためて熟成させていくことの大切さを思い知った。エンジニアにとっては、我々が完璧と評価してもまだまだ伸びシロがあるということだろう。
その結果、奥深い乗り込んでいくほどの感銘するハンドリングやエンジン特性とのコンビネーションに身を委ねることができるのだ。
そして今回、F3RRの同梱キットに含まれるアクラポビッチのマフラーと、サーキット仕様のECUで試走するチャンスに恵まれた。それは次回、YouTubeの続編とセットでご覧いただきたい。

SPECSpecificationsMV AGUSTA F3 RRエンジン水冷4ストロークDOHC4バルブ並列3気筒総排気量798ccボア×ストローク79.0×54.3mm圧縮比13.3対1最高出力108kW(147hp)/13,000rpm (Racing Kit装着時:114kW・155hp/13,250rpm)最大トルク88Nm(8.98kg-m)/10,100rpm変速機6速フレームトレリス車両重量173kg (Racing Kit装着時:165kg)キャスター/トレール26°30’/108mmサスペンションF=テレスコピック
R=スイングアーム+モノショックタイヤサイズF=120/70R17 R=180/55R17全長/全幅/全高2,030/730/NAmm軸間距離1,380mmシート高830mm燃料タンク容量830mm燃料タンク容量16.5L価格324万5,000円(税込み)

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