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国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長らを招いた歓迎会が7月18日、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会主催のもと、東京・迎賓館赤坂離宮で開かれました。

歓迎会の開催に批判的な声や会場前で反対デモがおこなわれたことなどが報じられていますが、それとは別に、「一民間団体の組織委員会が、なぜ国の施設である迎賓館を使えるのか」という声がツイッターであがり、話題となっています。

この点、「組織委員会が迎賓館を無償で利用できるよう、いつの間にか法律を変えちゃってますね」とのツイートもありました。

特定の民間団体が国の施設を無償利用するという形で優遇されれば問題かもしれませんが、法律に基づいた利用ならば、その是非はともかく、少なくとも違法ではないということになります。組織委員会の迎賓館利用について、実際にはどのようなルールになっているのでしょうか。

●組織委員会による迎賓館利用は法的に問題なし

東京オリンピック・パラリンピック開催にあたって、2015年6月、「東京オリンピック・パラリンピック特別措置法」が制定されました。

特措法には、大会推進本部の設置や基本方針の策定のほか、国が政令によって、組織委員会に対して、大会の準備・運営のために使用する国有財産を無償使用させることができると規定されています(14条)。この規定は、法律が制定された2015年当初から存在します。

そして、特措法施行令(政令)では、組織委員会が無償使用できる国有財産として、「競技施設」「競技練習施設」「駐車施設」「事務所」「それら以外で財務大臣が定めるもの」の5つが定められています。

「それら以外で財務大臣が定めるもの」については、「財務省告示第54号」(2020年3月10日付)で、「式典・催事施設」「航空機の離着陸及び停留施設」「接遇施設」「宿泊施設」と定められています。

財務省の担当者は、弁護士ドットコムニュースの取材に対し、今回の歓迎会で使われた迎賓館は「『接遇施設』に当たる」と説明しました。

来日した世界各国の元首の歓迎行事などがおこなわれてた迎賓館は、かつて皇室財産だった建物・敷地を改修して利用されている国有財産です。組織委員会による大会の準備・運営のために迎賓館を利用したのであれば、たとえ無償であったとしても、法律上問題なさそうです。

●他の民間団体も要件満たせば利用できる

なお、民間企業・団体なども、一定の要件を満たす行事については、原則有償ですが、「特別開館」という仕組みで迎賓館を利用することができます。

迎賓館のホームページには、次のような要件が掲げられています。

【利用者の要件(すべて満たす者、政治団体、宗教団体、反社会的勢力等を除く)】
(1)迎賓館赤坂離宮が有する文化財としての価値及び歴史並びに国の迎賓施設としての価値及び性格について十分理解していること
(2)法人格を有する団体又はそれに準ずる団体であると認められること
(3)利用者及びその委託事業者が特別開館の利用に必要な資力及び信用を有すること

【行事等の内容に関する要件(いずれかに該当すること)】
(a)経済、社会、学術、文化、スポーツ等の分野において我が国を代表するような国際交流活動としての行事等であること
(b)対日理解の一層の増進や海外への情報発信に資する行事等であること
(c)観光立国の推進その他我が国の重要施策の推進に資する行事等であること

経済的な資力だけでなく、文化財としての価値や迎賓施設としての品格を損なわないことが強く求められており、利用実績として「2017年プリツカー建築賞授賞式典」「第二期叡王戦 決勝三番勝負」「自動車の最先端安全技術に関する国際交流会」などが挙げられています。

民間利用にも開かれているとはいえ、「気軽に同窓会利用」というような使い方は残念ながらできなさそうです。